どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。
なんか60分程度の中編作品がこのタイミングでどどどんとやってきたのでまとめて紹介してみましょう。
ルックバック
WATCHA5.0点
Filmarks5.0点
これを凄くないというのは流石に無理がある。ストーリー面で刺さるかどうかとは全く別問題にシンプルに画面が極上。いちいち上手で、不確実性がある。人間の動き方の不条理さが画面にしっかり溢れでていて、ヌルヌル動くとは全く異なる、しかし明確にこれこそアニメーションであり、これこそ漫画でもあるという映像化を達成している。動いているのも凄ければ、止まったショットの連続で時間経過を示すところも眼福で、ああ今年の1位をこれにしない、というのはアニメを日頃見ている人間には不可能なのかもしれない、という主語の大きい感想迄浮かんでしまった。ほぼ一人で描いたという押山さんも凄いが、小西賢一、小島崇史といった流石に私でも聞いたことあるレベルの凄腕アニメーターを中心に少数精鋭でサポートしきったクレジットに見えるスタッフ陣は激賞だろう。このクレジットに出てくる人は多分今後も名前を覚えておくべきなのだろう(もうみんな覚えている人ばかりとか言わないで)。おそらくは『THE FIRST SLAM DUNK』と並んで現代日本アニメーションの極北、もっかい作れ、とも言えないレベル。
話としてもまあ当然ある程度の強力さを持っている。流石に漫画読みじゃなくても『チェンソーマン』の藤本タツキが京アニ事件を描いたものであることは把握しているが、変にそれを消費しているというよりもしっかりと鎮魂の物語になると同時に、漫画という媒体の持つ魅力、創作というものの力を心から信じていることが伝わってくる。あの時「出てくるな」のメッセージだけを届けた「可能性の未来」で京本を助けた藤野は、その可能性の連鎖で明日からまた生きていく。今度は自分が背中を見せて引っ張るのではなく、かけがえのない親友の背中を追って。こんなもん良くできているとしか言いようがない。
大室家 dear sisters
WATCHA3.5点
Filmarks3.5点
ゆるゆりのスピンオフ。生徒会の犬猿の仲、もとい仲良しコンビの片方、大室櫻子が主役に。スピンオフなので当たり前ではあるが、いよいよあっかりーんは影が薄いどころの騒ぎではない。でもそれ故にスピンオフになっても全然問題ないというネタにもなる。
中学生の主人公に小学生の妹、高校生の姉とそれぞれの友人を軸に描く日常なんだけど、適度に面白く、話の切り替わりに必ずまず場面の遠景から入るのでショートアニメの連続でありながら満足感がある。背景美術のレベルが一定以上あるのが大きいかも。
しかし令和に加藤英美里主演で姉斎藤千和、妹日高里菜とは。高校生チームは上坂すみれ東山奈央悠木碧と主役級というか豪華すぎるな。
大室家 dear friends
WATCHA3.5点
Filmarks3.5点
ぱやぱやぱ、ぱやっぱしすたー。ゆるゆりスピンオフ第2弾。今度はdear friendsと題してはいるが、全然引き続いて3姉妹にカメラの焦点は当たっている。
今回は前編の終わりに投げておいた長女撫子の恋人が誰でしょう?というのを一応引っ張る要素にはしている。露骨に高校生チームの誰が相手でもありそうでしょ??というタイプのミスリードを繰り返すのでそこが気になるかどうか。とはいえ、そこの軸もうっすい状態でいつもの楽しいケンカが繰り返される。印象的なのは、基本的に撫子のデレコミュニケーションとして電話が多用されること。相手が誰かを隠すツールとして有効なのは分かりますが、それでもLINEのようなSNSツールやメールよりも多用されていました。
ま、引っ張った恋人が結局誰なのか明言しないのはダメでしょ!とは思いますが、正直そこが気に入らない良き日常でした。主題はそこよりも、喧嘩した時に謝れるか、だったし、本編がゆるゆりなんだから櫻子と向日葵の喧嘩がベースにあると思えばそれでええのです。と思ったら、原作のなもり先生、普通に製作陣にも教えてないらしい。それは教えてあげてよ…
数分間のエールを
WATCHA3.5点
Filmarks3.3点
MV制作を題材にしたクリエイター讃歌。製作陣も今回は映像製作チームHurray!に脚本花田十輝が花を添える形。今回扱う中では一番異色というか、『サマーゴースト』に近い感じのする中編。こういう規模の中編を気鋭のクリエイターにどんどん作らせていくこと自体は賛成でございます。
MVを趣味とする高校生が偶然出会った歌姫が学校の先生として赴任してくる。彼女の歌に映像を付けさせてくれと頼むが。というストーリーで、作る楽しみに満ち満ちている若きクリエイターと呼んですらいいのか分からない卵のような状態の主人公。一方で、教師の方は音楽に挫折し、もうクリエイターとしての終わりを迎えかけている。才能という言葉の重さ。成長するにしたがって選択肢が減っていってしまう大人という立場と夢を追うことの両立できなさ。とにかく青くて青くて、自分の作りたいが優先していく主人公にはっきり傲慢さを覚えつつ、それを若さの特権として許すべきだとも思う絶妙な感情を持ちました。シンプルに2人の対比だとそれで収まるんだけど、隣に立っていた親友を羨むだけで早くから選択肢を失ったことに気づけずに無邪気にMVMV騒いでいるのが、またどうも…。よりにもよって『ルックバック』と同時期公開なのがなぁ。どちらも創作の加害性を描いているが、こっちは本当に青い。
そもそも、自分にとって非常にMVというものの扱いが難しいことに気づきました。毎年アニならでその年のアニメーションのベストを決めるときにはMVをアニメーションで表現したものも対象に入っていて、選定時はアニメーションの出来を見ていたつもりでした。でも、本作においては歌という絶対的な表現があるところに横から出てきて人の伝えたいことを頼んでも無いのに代弁し、挙句それが間違っているようでもある、という存在だと思ってしまい。歌と不可分の芸術でありながら、じゃあ主体はどっちと問われるとやっぱり歌に思える。これはそう思えてしまう自分の問題。結果的に、見事にMVが完成して披露されるシーンはミュージカルパートのように退屈極まりないものに感じられてしまった。編集するだけでポンポさんは面白かったのに。
まあこの作品はどちらかと言えば、教師の方を救い出す作品だったと受け取ってはいるので、それはそれで問題ないかもしれない。音楽を諦めきれなかった彼女が教員を辞める決断に至れた外部要因としての主人公であり、あれ?そう思うとやっぱりMVは触媒にすぎないという自分の感覚とも一致していく。
Blenderで作中と同じような条件で作られたと聞いているが、各キャラの名前の出し方と言い、視認性は良くなかった。やっぱ60分あるMVっぽいんだよな。