抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

五輪の前に「バティモン5 望まれざる者」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はラ・ジリ監督最新作。どうでもいいけど、フランス語のカウントダウン初めて聞いた。アンドゥトロワのイメージしか無かった。冒頭でやってました。

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WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

(以下ネタバレ有)

1.ラ・ジリ

 フランス団地映画界のスーパースターに躍り出たラ・ジリ監督。その年のカンヌが『パラサイト 半地下の家族』だったこともあって豊作のカンヌとして記憶が強い年。もっかい確認したら『アトランティックス』『鵞鳥湖の夜』『バクラウ 地図から消された村』『燃ゆる女の肖像』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、グザヴィエ・ドランケン・ローチダルデンヌ兄弟ジム・ジャームッシュペドロ・アルモドバル。ジュスティーヌ・トリエやマルコ・ベロッキオもいるのに可愛く見えるレベルの巨匠揃いでここでカンヌを代表させたのがラ・ジリとポン・ジュノって凄いわ、と改めて思います。

 そんな彼の最新作はやはりフランス団地映画。前回は警官と団地の話にサッカーを添えてましたが、今回は市長と団地の話にサッカーを添えてました。焼き直し感もあるというのが正直なところではあります。

 市の政策として老朽化した団地を取り壊して建て直す、としてるんだけど、実はそこに住んでるのは移民を中心とした世帯であり、建て直した先には大家族用の間取りはないなど、半ば強制的にこの地区から移民を追い出す、というのが本当の狙いの施策って感じ。その遂行にあたるのが3年前から市議会議員になってた小児科医で、こいつが頑張る無能というか、力を振り翳したがる真面目バカというか。裏で操ろうとする仲間が途中から引くレベルで弾圧するようになって最終的には5分後に出ていけ、と団地から退去を要求するクリスマスイブをお届けする始末。倒壊の危険に伴う緊急避難という体を取ったとはいえ、じゃあ避難場所は公が用意しないと、みたいな発想もカケラもないやり口でした。

 これに対して団地側の住人としてカップルが登場。男側はちょっとデモに対して冷笑思考で、怒りに任せて動いちゃう感じ。女側はそれを非難し、自ら市長選に立候補して公の手続きで団地を守ろう、というアプローチ。こうした手法の違いを見せながら、それでじゃあどうやってこの団地を追い詰めていく、居場所を奪ってくる公に相対するか、っていう転がり方なんだけど煮え切らん。市長の家に火をかけたらダメよ、帰りましょで終わるけどいやいや結局居場所回復してないしなぁっていう。ある程度投げた終わり、っていうのはこの映画で描かれていることは現実と同じですよ、皆さんはどうしますか?という投げ方だと思うんだけど、だとしたら空撮とかドローン映像はいらない(『レ・ミゼラブル』の時はドローン映像がキーだったからアリだったと思うが)し、団地を爆破したり火事にする時のエフェクトがショボい。現実とリンクさせたいならそこはハリボテレベルからはつきあげてくれないと困る。

2.5年前の日本だよね

 じゃあなぜ現実とリンクさせてくるんだってことでこっからは勝手な推定。パリオリンピックでしょう。オリンピックに伴って街の再生とかそういう文句で色んなことが動いてる。聞き覚えありませんか?まんま東京オリンピックの時の日本だと思うのです。この市長、どっかで見たような応答の仕方するなぁとずっと思ってたんですがアレです、官房長官時代の菅さん。凡庸な悪としか形容できない市長が公の力で市民を襲い、法を読み替え、公共空間を破壊していき、デモは冷笑される(そしてこれもまた凡庸な男に襲撃される)。うーんどこの日本ですか。移民なのに市長に気に入られて、みたいな親子もいますけど、まあ既得権益に気に入られれば属性が直接的な差別にはならない、って感じもさもありなん。そう思うと、公共が仕事をしてなさすぎる、という批判は今も自民党政権の日本に跳ね返ってくるだけかもです。いやー世界はどこも同じですなぁ。