抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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歌よどこまでも「母に捧げる僕たちのアリア」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回も試写で鑑賞した作品になります。6月公開作品は試写が当たった数が多くて大変助かります。こちらはカンヌ国際映画祭である視点部門にノミネートされていた作品。

映画チラシ『母へ捧げる僕たちのアリア』5枚セット+おまけ最新映画チラシ3枚 

WATCHA4.0点

Filmarks3.8点

(以下ネタバレ有)

1.コーダにかけるスパイス「フランスの団地」

 本作は、家庭に問題を抱える少年が「歌う」ことに出会って、自立・未来を切り開いていく、というめっちゃ本年度アカデミー賞作品賞受賞作の『コーダ あいのうた』に近いどころか、そのままですか?な作品。コーダは聴覚障害の家族の中で一人だけ健聴者がいて、っていう世界の狭さでしたが、本作はもうちょっと地獄風味にセッティング。それが魔法の言葉「フランスの団地」です。

 『パリ13区』『レ・ミゼラブル』『GAGARINE/ガガーリン』『スティルウォーター』。近年だけでも街は違えど、フランスの団地を舞台にした作品で、『パリ13区』以外は移民たちが暮らす、どちらかと言えばフランスの危険なだったり、貧困が露出する場所として団地が描かれていました。ということで、今回もどこにいるのか分からない父、昏睡状態でいわゆる植物人間状態の母、そして長兄3人と暮らす少年ヌールという状態。よくよく見れば、決してそんなことはなかったとはいえ、兄たちも決して母の看病をしているようには見えない導入で、ヤングケアラーの話ですか?っていう感じ。最終的に言えば、長男アベルは「家族」という存在で全員を縛ってくるし、エディは明らかに犯罪に手を染めているし、後にヌールが借りた『椿姫』のページを勝手に破って紙たばこにしちゃうっていう。あともう一人の兄は結構いいやつなんだけど、結構事勿れ感があって、冷笑気味な感じ。いやー困った困った。

 こういう状況の中、ヌールは夏休みなのに生活の為にバイト(奉仕って言ってたけど多分給料も出てたっぽいし、まあバイトでしょう)で夏休みの学校で壁塗ったりしてるっていう。夏季授業をやってるよ、なんてところで歌声が聞こえてきたら、そこが歌との出会いとなって、ヌールと先生サラの関係が始まっていくっていう。なんで音楽にヌールが吸い寄せられたかといえば、ヌールのお父さんが歌でお母さんを落としたってことで、植物状態の母に聞かせてあげてたんですよねぇ。涙ぐましい。このサラが抜群に歌が上手いし、癖強いし、遅刻に厳密に注意するしで、これもやっぱりコーダぽかったり。

 でまあ、結局のところ、凄く難しいのが、ヌールは歌うことが好きになれたし、サラ先生の授業も受けたいんだけど、それ以上にお兄ちゃんたちが大好きだし、お母さんのことも大好きだし、っていうのがつらい。お兄ちゃんがお母さんの薬代を奪い取っても、そのことは話さないし、お母さんが叔父さんの通報で病院に収容された時の奪還にも協力する。お金を奪い取った兄とも2回も劇中そのあと出かけているし、本当に家族が大好き。だからこそ、サラ先生の招待でちゃんとしたオペラを初めて鑑賞して、そして夏休みの終わりと共におそらくはサラ先生の教えを受けに、街を出る決断ができたことが凄く自分事のように嬉しく思える。勿論、そのためにはお兄ちゃんが踏ん切りをつけるために、お母さんが死ぬ必要があったので、なんとなくそのために殺されちゃった感はありますけど、病院の方が長生きできるのに、「家族といたい」と思うに決まってる、という意見で奪還してきた話があるんで仕方ない。病院に入れたくない、っていうところはもうちょっと理由が欲しかったというか、金銭面のせいなのか、精神論なのか良く分からなかったかな…。コーダと比較しても、こっちの方が好きだったわけですが、それにしても貧困っていうのを押し出せる声楽家、という先生のポジションとかも含めてもっとうまく出来たかも??