抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

5月に見た過去作の記録

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は5月にみた旧作の感想です。

 

鳥 (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

ヒッチコックのモンスターパニック映画。鳥が襲ってきて怖い。1羽だけ、というモンスター映画というよりも群として襲ってくる恐怖が描かれる。
確かに鳥は怖いが、合成などはどうしても時代的に現代視点では粗く、ノイズにはなる。あと前半の変に回りくどいお届けが怠い。
鳥が本当に鳥なら怖いね、で済むのだが人種や主義主張などのメタファーにも思えるし、群集心理的にミストの先達にも見える

14歳の栞

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

ある中学校2年6組の35名にインタビューするだけで学校の日常を映しているだけ、に見えるドキュメンタリー。
だが、それぞれが14歳として多角的に人間関係を築きながら大人への脱皮を図っているわけで。それを35名それぞれの視点で描くので35通り×幾許という恐ろしい手数が襲ってくるドキュメンタリーになっている。加えてそれを更に炙り出すようにこれでもかと編集にも手数をかけていてエンタメに仕上がっている。
自分の中の14歳の記憶を引き出しながら眩しく、恥ずかしく、誇らしいのだが、翻って20歳や10年後をめっちゃ大人だと思っている彼らに対して自分は責任ある大人になれているだろうかと立ち返ることにもなる。
さあ、自分の14歳に挟んだ栞をキーに本を開こう

The Memory Lane

WATCHA3.0点

Filmarks3.0点

閉鎖してしまった大学キャンパス。お別れも言ってないのに。ならば我らで読み替えよう、という具合に大学キャンパスをスケートボードで遊ぶことでさまざまな文脈から引き剥がす様子を撮っている。
テーマ自体は大好きなタイプなのだが、いかんせんVlogとかの類を出ない映像だったように思える。

人に非ず

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

小笠原諸島のホテルに働きにやってきた青年。最初は小さなことから仕事を覚えていくが、島にはやたら猟銃の音が鳴り響く。
面白くなりそう、という雰囲気を漂わせながらいざ期待していたような決壊が起きてから面白くならずに終わったというか。余韻を残していると言えば聞こえはいいが肝心なことを何も映さず説明せずは流石に投げすぎか

民族の祭典

民族の祭典【淀川長治解説映像付き】 [DVD]

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

一言で言えば、アガる映画だ。
1936年ナチス政権下におけるベルリンオリンピックはオリンピックやスポーツが政治に利用された典型例として有名だが、その記録映画である本作もまたその点において利用されたものの一つであるのは間違いない。
何せ見ていてこんなにも高揚するのだ。30年代の記録映画とは思えぬスポーツの躍動感と音楽による昂ぶりはヒトラーワーグナーを愛したことを思い出させつつ、人類が現在のように高度に科学化される前のスポーツの祭典がどのようなものだったかを見せてくれる。記録映画でありながら暗闇の棒高跳びやマラソンなど、意図的に後で撮り直した再現なども含まれていることがドキュメンタリーの嘘つき具合を示す教材でもある
日本人選手も活躍しているが、ラジオでしかベルリンオリンピックは情報が入らなかったというから映画の果たした役割は大きい。こんなもん戦時下に見せられたらナショナリズムがバンバン刺激されるはず。
三段跳びの金メダルをとった田島選手がしれっと走り幅跳びで銅メダルを取ってんのに1番びっくりした。フェルプスみたいなことしてんのね。

美の祭典

美の祭典【淀川長治解説映像付き】 [DVD]

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

リーフェンシュタールによるベルリンオリンピックの記録映画第2部はより人間にフォーカスしたように思える。選手村でのサウナの裸体に始まり、陸上十種競技という高度に専門化が進む現代では厳しそうでしかないスポーツや、ホッケーやサッカーといった道具を用いる競技で身体の拡張を示し、オリンピックに参加できるヒト以外の唯一の動物である馬を用いる馬術やポロ(ポロの映像初めて見たかも)といった映像でスポーツの概念をどんどん拡大し人間の美しさに迫る。ヨット競技の時は戦争映画のような緊迫感だったし。
1部目である民族の祭典に踊らずアガる音響、演出は継続している。
DVDについてた淀川先生の前説が同時期公開の「駅馬車」の担当だったのにみんなこっち見てて辛かったと作品のことを全く解説してなくて笑ってしまった

愛と哀しみの果て

愛と哀しみの果て (字幕版)

WATCHA3.0点

Filmarks3.2点

メリル・ストリープが結婚してアフリカ・ケニアの地に向かうんですけども現地はいろいろ大変だし、夫も浮気するしハンターにかっこいいロバート・レッドフォードが出てくるし、という感じ。話は普通というか、だから何?でしかない
まあとにかく雄大な大地、松島トモ子ハリウッド版かというライオンとのショット、アフリカの自然をこれでもかと当時の技術を打ち込んで撮ったんだようなという撮影は凄いと思う。

アクト・オブ・キリング〈オリジナル全長版〉

アクト・オブ・キリング《オリジナル全長版》

WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

インドネシアにおける虐殺を扱ったドキュメンタリー。だが特筆すべきは単に被害を示すものではなくカメラは加害者に密着し、その再演映画を撮影するというものだ。
嬉々として手柄を語る彼らなのだが、果たして完成した映像を見ていくとそのリアクションが。あの瞬間に彼は全て背負うものを理解した訳だ。映像というメディアによって客体化された事実、演じたことによって再確認された自意識。
関心領域と合わせて鑑賞してみてはいかがだろう

ルック・オブ・サイレンス

ルック・オブ・サイレンス

WATCHA4.5点

Filmarks4.3点

アクト・オブ・キリング』の監督が引き続きインドネシアでの虐殺を撮るドキュメンタリーなのだが、今回はシンプルに加害者やその家族たちに話を聞いていく。
前作は映画として再演することで客体化させて蓋をしていた残酷さを思い出させることである種映画としてのクライマックスが生まれたが、今回はもっと残酷かもしれない。
基本的に話を聞きにいく対象は常に私は悪くない、周りにいた私はそんな人だなんて、そんなことをしていたなんて知らなかった、共産主義者イスラム教を信仰しないから殺していい、そんなようなことばかり。
ここでこの映画の特殊さを申し述べる。この映画の聞き手は監督ではなく、実際に兄を彼らに殺されたアディだ。そして、彼らが言い訳に使う昔のこと、今は病気だから体に悪い話はするな、といった言い訳はこの聞き手の家族にも起きていることであり、そんな言い訳が通用しないことを示す。示すのだが、それでもアディは話を聞き続け、相手が目線を逸らしても目線を合わせ続ける。
事実を客観的に捉えた過去の取材映像からも逃げる証言者、ここまでは前作でも観られる構造だが、ここに聞き手が入って彼が今直面する現実に打ちのめされていくのをこれもまた客観的に捉えていく、人がやられていくのを記録する、そっちが主体のドキュメンタリーなのかもしれない。だとしたら、本当に残酷だ。

ガール・イン・ザ・ピクチャー:写真はその闇を語る

WATCHA4.0点

Filmarks3.8点

女性のひき逃げ死体、そして時が経っての息子の誘拐。2つの事件と夫と言い張る人物の正体に身震いを隠せない。
1人の女性が尊厳も自由も存在も奪われて、それが回復されるまでを切り取りきった。その意味で間違いなく意味のある作品に仕上がっている。リアルタイム形式に語らせることでこの人はいったい誰なのかというサスペンスと、終わってみれば凡庸でしかない犯罪の顛末よりも深い加害性が際立つ

演劇1

演劇1

WATCHA4.0点

Filmarks4.1点

想田和弘観察映画第3弾。
演出家平田オリザと彼の率いる青年座を撮る。
想田さんなので勿論ナレーションやテロップは無いのだが、無音演出を入れたり少し見せ場にしようとしているところもある。
平田オリザによる秒単位の修正と演出の精緻さに驚くが、彼がティーンエイジャーに対して行うワークショップでの説明は明快で彼の中の「演劇」というものがなんなのかを汲み取ろうというとこちらも必死になる。岡山公演で捌ける古舘寛治にその先のほぼ舞台裏にすら見えるところに演出したり、志賀廣太郎のサプライズバースデーにもしっかり演出する平田オリザはどこまで自己でどこまで自分を演出しているのか。新卒採用、経費精算、色んな顔を見せるが、3時間見てもいやいやまだ底が知れない。
濱口竜介が行う演出とも比較してみたくなる。

ソフィーの選択

ソフィーの選択 (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

関心領域の舞台であるルドルフ・ヘス一家の邸宅も登場する。
大戦後のアメリカでメリル・ストリープとその恋人、そして隣人の3人の関係を描く2時間半だが、彼女はナチスサバイバー(でもユダヤ人じゃない)という立場で語り始める、というもの。いかんせん回想が多いのでリズムは失われるが、メリル・ストリープが見事に演技力を発揮している。
彼女が選択するのは、あるいはしたのは何だったのか。英語が得意でない設定ゆえの訛りも見事。

ブルーベルベット

ブルーベルベット

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

倒錯。拾った耳から事件を調べていくうちにクローゼットから情事といっていいのかも分からん行為を眺めてどんどん面倒ごとに巻き込まれる。
話の作り方は古きノワール、ハードボイルドな筈なのだがどこかその印象はない。あの刑事さんが主役ならそうなったかもしれないが、どこか湿っていて厄介な人間の二面性を誰もが抱えていると投げてくる。

少林寺三十六房

少林寺三十六房 4Kリマスター版 [Blu-ray]

WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

少林寺ですごい特訓する映画。その導入に30分ぐらいかけた割に終わり方もあっさりで修行がメインすぎる。メインすぎるんだけど、そこが面白いので物足りないぐらいである。5年分の修行を一つの房につき20分とかで全部連ドラで見せてくれたってええ。
三節棍という実に強くなさそうな武器を強く見せる説得力も確かなものである。