抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

嫉妬が生む諍い即ち人類史「ユニコーン・ウォーズ」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は2023年のうちに公開すると聞いていたけどここまで延びた作品。なんといってもリスキットさんが絡んでいるので、個人的には間違いのない配給さんですので楽しみ。

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WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

(以下ネタバレ有)

 


 いきなりのユニコーン。お母さんを探していたらお母さん食われてるし、なんか怪物が蠢いてるし、猿怖いし、という入り。どうなるかと思ったらタイトル。そう言えばテディベアの新兵ものだったはずでは?ユニコーンとのウォーなのかしら。ちなみに、ユニコーンと言えば実は非常に凶暴な性格であることは『シャザム!〜神々の怒り〜』なんかでも描かれていることではあります。今回のユニコーンたちは凶暴というより被害者でしたが、それでも応戦する際には躊躇なく角で腹をぶっ裂いたりしてたんで攻撃性がないわけでは無いというか、やられてダンマリとはいかんのでしょう

 そして映画はようやくテディベアの新兵ものに。訓練の段階でそれぞれのキャラを確立させるのが非常に上手く、双子、つえーやつ、兄弟、パンダみたいな見た目と中身で個体識別をうまくさせておいて、森に入って行った時にガンガン死んでいく時の切なさがちゃんとでるようになっていた。やはり印象的になるのは神父と軍曹で、この映画が引用しまくってるベトナム戦争映画的には軍曹というのは常に鬼軍曹であり続ける印象なのだが、あっさりと彼の心が折れて神父、そして聖典が力を握るのが面白い。やぶれかぶれの軍曹がちゃんと後ろの方に並ぶようになる隊列もまた描けているし。終盤のアスリンによる反乱と一斉蜂起的な焼き討ちからしても、実戦経験を重視する、地獄が何かを知っていることが重要なんですな。

 でも所詮熊とユニコーンの戦争でしょ、それをグロでやってるだけじゃんと思ったら未回収だった冒頭の怪物が数多の死骸を飲み込んでホモ・サピエンスとして二本足で立って猿たちが後をついていく終わり方はちょっと驚きというか。熊を人類のメタファーにしたスペイン内戦とかそういうのを描いてる作品かと思いきや、2001年宇宙の旅とか火の鳥とかみたいな文明論、人類論、そしてそれを通しての反戦論だったのだというレンジの深さにびっくりする。そうなると、憎しみから生まれたモンスターである人間、それを生み出したクマちゃんたちはカインとアベル?そういえばユニコーンのお母さんはマリアだったし、なんかキリスト教面からの読み解きは無限に出来そうである。スペイン内戦どころか、スペインの宗教事情もよく知らないので簡単には言えないが、日本にやってくるスペイン映画は大概酷い目に登場人物たちが遭っている気がするのだが。サッカー見てても人種差別がまだまだ酷い国という認識だし、いろいろ思うところが中にいてもある国なのだろうか。そんな地に移住しての仕事を決断したサッカージャーナリスト小澤一郎さん頑張れ。

 話が大きく脱線したが、テディベアとユニコーンの種族間戦争という大きな枠組みからすごく大きな話に持って行ってはいるが、アスリンからしてみたら自分と同時に胎内にいたのに先に生まれた兄ゴルディへの嫉妬的な感情や情けなく見えてしまった父親への視線からなる俺はこうあるべきという理想の自己との乖離など、すごく小さな視点、単純な感情で大きく動いていく物語であった。