抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

2023年9月に見た過去作の記録

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は9月に見た旧作記録。9月は何と言ってもストレンヂアパーフェクトブルーを劇場まで足を運んだこと。芳醇な日本アニメに酔いしれました。その他、14作品を鑑賞しています。

 

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

 左ど真ん中の全共闘と右一直線の三島由紀夫による公開討論会とでもいうのだろうか、そこのやりとりがこんなに映像がしっかり残っているとは。

 現在の日本の分断と比較すれば、どう考えても健全でまさに議論ができているように見受けられる。相手が言ってることを飲み込んで正当に反論し、しかし目的は革命だったり暴力の正当化が入ってたり。

 確かに議論自体はよく分からんが、そこよりもこの議論に寄り添う緊迫感と、敵地に乗り込んで行ったのに相手を笑わせる三島由紀夫の話術、そしてタバコ描写。

悦楽交差点

悦楽交差点

WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

 城定秀夫最高傑作と聞いていたので。

 交通調査での1000人目を運命の人と決めていた男が、その1000人目だった人妻をストーキングしている話…かとは思いきや。

 見る見られる関係の逆転は映画を劇的にする基本ではあるが、実にうまく作用しており70分のランタイムとうまく合致した。この世で愛と呼べるものはあるのかもしれないが、基本的には結婚なんて妥協だし依存でもある。問題はそれに自覚的でいるか、自覚していてそれ以上を望まないかだ。

3D彼女 リアルガール

3D彼女 リアルガール

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

 オタクでコミュ障が学年1の美女に告白されて付き合うようになるという電車男的なラブコメ。難病設定までついてきたり、味の濃い演出の多さは決して好みではないし、結婚式辞めるendは本当に嫌い。

 なのだが、やはりアニオタであることからキャラクターが現実を侵食して心内表現を進めていく手法が興味深くないと言えば嘘になる。そりゃ映像研は英勉にいくわ。
中条あやみは美しくいれば良いので圧倒的ではあるのだが、とにかく脇が良かった。嫌な人っぽい大人をやらすともう間違えない三浦貴大、学生チームの上白石萌歌清水尋也恒松祐里と主演級が完璧にサポートしていた。演出のくどさになれるまでは清水尋也が、飽き始めてからは上白石萌歌が映画を持続させた。

小さき勇者たち〜ガメラ

小さき勇者たち ~ガメラ~

WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

 大傑作すぎた平成ガメラ3部作が「カメ」という概念すらも廃してガメラの神聖さを保証したのに対して、本作は昭和ガメラの持っていたガメラは子どもの味方、と言いつつ必ず出血してグロテスクになる、みたいな点をしっかり考え直して構成した見事な作品。突如訪れる中華包丁対子ガメラは、完全にギロンをオマージュしており、昭和ガメラ、即ちガメラを生み出した時の本質に立ち返り、ゴジラに出来ないことを考え尽くしている。結果、とても良くできたジュブナイルに。

 ガメラが子どもの見方をするのは決まりではなく、亀を拾って育てたから、という単純だけど納得度の強い理由を持ってきた。その上で、ソー:ラブ&サンダーに感じた子どもを戦いの場に引っ張り出すことの嫌味を全く感じさせないのに子どもが話の邪魔をする昭和ガメラ感もなく介入させている。

 平成ガメラしか見ていないとどうしてもテイストが違いすぎて気に入らないかもしれないが、これは平均スコア以上に面白いぞ!

劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ

劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>

WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

 もともとのシティーハンターを知らないのでなんとも言い難いが確かに古き良き味をそのまま出した感じはする。

 話としては狙われるゲストヒロイン、ロボコップのような武器商人の暗躍と対決、結局揺るがぬヒロインの座という安定した話ではある。

 ただ、協賛と思われる企業の商品の登場を含めて、あまりにも現実の新宿に立脚しすぎていた。新宿で騒乱を起こすことで新たな武器を売り込む手法自体は分かるのだが、2019年の映画で無かったことにできるレベルを超えた映画級のドンパチをやっておいて防いだ、とは言いづらい。パトレイバー が東京と戦争については語り尽くした感もある中では物足りない。また、ヘッドギアを装着することで思ったままの攻撃をするという今回のメインとなる武器も新規性やその商品自体の魅力を感じなかった。

さよなら、私のロンリー

さよなら、私のロンリー (字幕版)

WATCHA4.5点

Filmarks4.4点

 生まれてこの方、父と母はオールド・ドリオに盗みや詐欺ばかり教えてきた。胡散臭いことしか言わないこの家族は、娘のことを娘として扱わず、共犯者として見ている。分け前は平等に3等分。

 そんな中、出会った女性をなんか場当たり的に犯罪行為の仲間として向かい入れてしまったことにオールド・ドリオは違和感を覚え始める。家族という枠組みっていうのはここにあったのか、自分ってなんなのか。

 最終的には、ピンクの泡が溢れ出し、もう家としての体をなしていない場所から逃げ出し、地震の揺れで旧来的な自分が崩壊していく解呪の物語なのだけれど、それをとても口が悪くてポップで明るくてコメディに仕立て上げていて非常に上質だった。

パーフェクトブルー

パーフェクトブルー【通常版】 [Blu-ray]

WATCHA4.5点

Filmarks4.4点

 アマプラにもネトフリにも来なかったから見れていませんでしたが、ついに劇場で!早稲田松竹に並んでも見れなかったあの日から数年!

 アイドルを辞めて女優へと転身を図るタイミングで未麻の回りにおかしいことと殺しが起こり始める。歌手になりたくて上京した彼女にとって女優はベストな選択なのか、それとも。アイデンティティが揺らいだことに起因したニューロティックスリラーで、ストーカーの存在が夢か幻か、現実と創作の間を行き来する。その説得力の増強が鏡を使った演出で達成され、それは「見られる」というこの映画内で頻出する構図とも共通する。

 インターネット時代の萌芽を描いた作品なのに、ここで描かれた問題は今も根深く、芸能界の良くない部分はむしろこの数週間で白日に晒されてるようにも。

ストレンヂア 無皇刃譚

ストレンヂア -無皇刃譚-

WATCHA5.0点

Filmarks5.0点

 15周年舞台挨拶付き初DCP記念上映会にて。DCPというのはようはデジタルで、これまではフィルム上映だけだったのをデジタルで出来るようにしたと。これを機に色々なところで復刻上映あるかもですね。

 チャンバラアクションがすごい時代劇アニメと聞いていたが、思っていた5倍ぐらい好きだった。
 何故か追われる少年と犬のコンビに居合わせた流浪人が助ける羽目になっていく流れは王道ではあるが、ここの掛け合いのセリフをきちんと反転させて後半に生かしてきたり、敵となる明の連中も魅力的に描きつつ、彼らを受け入れた日本側の傲慢さも綺麗に見せていて文句ナシ。朴訥とした長瀬智也は実に合っていた。

 よく知らないモノに対して異形扱いしてしまうこと、という点で不老不死の仙薬を求めた明の皇帝と名無しを避けてきた日本人たちも同質だ。

 圧倒的な剣戟はボス戦だけでなく流麗かつ残酷でどんどん人が死んでいくのが美しかった。それにしても、鬼平の2ndシーズンを強く望み、気付けばサムライチャンプルーを口ずさみ、2023の上半期にHIDARIをベストに選出した私、どうやら日本時代劇アニメが好きらしい。実写の時代劇が減っている今、エキストラへ予算をかける必要もないし、是非忠臣蔵とかアニメでやりませんか?????と声を大にしてもう何年でしょうか

君の名前で僕を呼んで

君の名前で僕を呼んで(字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

 果汁も滴る良い男シャラメのシャラメ力が炸裂していた。

 サマーバケーション期間のひと夏の思い出、大人になる通過儀礼的な恋愛。それがこの映画では同性同士だった。あまりに大きすぎた出会いと喪失にお父さんの諭し方が非常に理知的で、彼らの及ぶ知の領域、文献や歴史への敬意とそこから積み立ててきたことがベースに人を尊重することを象徴しているように思える。

 だからこそ、逆に抑制できない思いが瑞々しく、眩しく見える。そしてそれを大きく後押しするイタリアの夏の風景。あの庭先の飯食うテーブルのところ、どうしてあんなに明るくて魅力的に見えるのか。日本には全く感じない地中海の良さだなって。いや行きたいとは思わんが。

スティーブ・ジョブズ(2015)

スティーブ・ジョブズ (字幕版)

WATCHA2.5点

Filmarks2.6点

 ヘンテコな映画だと思ったら脚本アーロン・ソーキンだった。ソーシャルネットワークもやってスティーブ・ジョブズもやってんのかあんた。

 ジョブズが何を成し遂げたか、ということを示すでもなく3つの発表会の前で入れ替わり立ち替わりやってくる人々との会話で魅せていくだけの強烈な作品。そこで示されるのは、会社と、世間と、パートナーと、娘と。あらゆる対人関係で常に最悪解を叩き出し続けるダメ人間。ついに最後には親子の和解を見たかのような感じの空気は出してるけど、強烈すぎるダメ人間に周囲がほだされたというか、端から対話する気のないジョブズ相手の対話を諦めただけの話に。この対話する気のなさはApple製品というか、ジョブズ製品の互換性の無さに象徴される。Lightningとかいうクソケーブルが無くなるのに一体何年かかったのか。

 単なるヨイショで終わる伝記映画にしたくない気持ちは伝わってきたが、このスティーブ・ジョブズという人物は、果たして映画で主人公を張っていて正解なのか、この映画は何のために作られたのだ?という疑問符が拭い去られることはなかった。どうしてもずっと不快だった。

運命の回り道

Limbo [Blu-ray]

WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

 スコットランド。難民申請の結果が出るのを待っている施設。様々なルーツでやってきてちっとも結果の出ない難民申請が通った時を想定した英会話や職業訓練を受けながら過ごしている。

 『マイスモールランド』のようなドキュメンタリックな感じではなく、待機の日々がオフビートなコメディとして描かれる。そこには正直そんなに乗れなかったのだが、いやいや、そうやって描かないとやってられないんだよっていうのがどんどん切実に感じられる。そんな施設があるのに店にはハラルフードがないし、違法に働かせる水産工場もある。でもそれがなんか可笑しい。

 主人公はシリアから亡命してきており、繰り返される故郷の両親との電話、演奏の名手らしいのだがケースから取り出せない楽器、その中でどう折り合いをつけていくんだっていう盛り上がりになっていく。

 どうでもいいけど、ネトフリでこれを見た時は『運命の回り道』だったのがU-NEXTで新たに配信されるにあたって『リンボー』になってた。

サムライ

サムライ(字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

 アラン・ドロンが殺し屋をやるんだけど一体いつまで喋んないのさっていう。

 殺し屋としての美しさというよりは、去り行く男の消え方というか。まずは黙って一連をシークエンスで見せておいて、闇の似合う殺し屋っぽいなと思ったら、むしろ陸橋でのシーンの方が絵になってるし、この映画で最善手を選び続けているように見えるのは捜査している警察サイドでもある。そこまで完璧にやっているからこそ彼にとっての撤退戦は美しいのだ

ギャラクシー・クエスト

ギャラクシー・クエスト (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

 なんだかこう、スタートレック的なるドラマをやっていた面々は、いつまでもその遺産を食い潰し営業しながら生活をしている。

 やってくるオタクたちの方が詳しく、本人たちに作品への熱意はもうないが、それが仕事だから。ところが、彼らのフィクションをドキュメンタリーと信じた異星人によって、彼らは本当の星間戦争に巻き込まれてしまう、というコメディ。
全体には楽しく、フリもしっかり聞いているし、虚構を愛する人間が世界を救う話でもあるのはとても好きなはず。

 やはり気になるのはクロエ?だっけ、2番手女性の扱いであり、ドラマという媒体においては船長命令を繰り返すだけの存在としてあてがわれていたことを揶揄しておきながら、この映画でも先進的な役割を担うことなく終わってしまったことが残念でならない。

累 かさね

累

WATCHA3.5点

Filmarks3.4点

 魔法の口紅をつけてキスすれば、2人の顔は入れ替わる。結構なトンデモ設定を開始10分ぐらいでぶちこんでおく事によって、そのからくりの正当性とかはどうでも良くなる非常に剛腕だけど上手いつくり。そうして入れ替わってやることが演劇であり、外側は土屋太鳳だけど中身は芳根京子でないと認められないことに両者が葛藤を抱えるわけだ。『無職転生』の一期に見られたような自己が解体されてあるアイデンティティに取り込まれていくような感覚を期待できる展開にワクワクした。ところが繰り広げられたのは、あまりにも演技的にも魅力のない演出家関ジャニ横山を巡る恋の鞘当てであり、どんどんと興味を削がれていく。土屋太鳳と芳根京子は素晴らしいだけに本当にここはどうにかして欲しかった。

 結局この入れ替わり劇を通して土屋太鳳も芳根京子も何某かに魅入られるというよりも浅野忠信に言いくるめられてる感にしか見えず、そこに反旗を翻すような姿勢すら見えないのも正直くだらないし、親子論や演劇を通した自己についてなど、雑に触れて扱う気もない感じ。