抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

何でも揃う「北極百貨店のコンシェルジュさん」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 これが掲載されるころ、私はWi-Fiのない田舎にいます。予約投稿って便利ですね

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WATCHA4.5点

Filmarks4.6点

(以下ネタバレ有)

 

1.是非ご家族で

 いやぁ、シンプルに家族連れにヒットして欲しい、そういう作品でした。ここまで全年齢向けでしっかり出来ているのは『映画かいけつゾロリ ラララ スター誕生』以来じゃないですかね。うん、半年しか経ってなかった。

 基本的には秋乃さんが北極百貨店のコンシェルジュとして研修期間を過ごして本採用になるんですか?ならないんですか?っていうのが本筋。その過程でいろんなお客様とのエピソードを重ねていく感じ。シンプルにコンシェルジュになるきっかけとなるアバンの2分ぐらいの段階でああ、この映画は信頼できるぞっていう印象を貰えます。機敏に動く映像、どこかファンタジックな背景は動物のお客さんたちとそれをもてなす人間という不思議な労働構造に魔法をかけてくれるし、その結果いたるところから現れる東堂さんも面白キャラとして受容できる。エンドクレジットで油断してたんで間違いかもしれませんが、本田雄井上俊之といったいわゆる『君たちはどう生きるか』を機にジブリ所属になったレジェンドアニメーターが参加していて驚き桃の木山椒の木。

 加えて、やってくるお客さんたちも非常にユニークで、プロポーズしたいニホンオオカミカップルは花澤香菜入野自由で狙ってるし、ワライフクロウの夫婦は立川談春島本須美。なんだその強い夫婦。後はもう抜群だったのは皆さん口をそろえるでしょう、津田健次郎さん。今回演じた彫刻家のウーリーさんは非常に穏やかで優しい語り口、怖い役の印象が強くなってきたというか、そういう声が似合いまくりだったとはいえですよ、この優しい津田さんの声の包容力がこの映画をしっかり包んで締めてくれる。ウーリーさんのエピソードで〆た上で、アバンと対になる終わり方で70分とは思えない満足感を得てスクリーンを後にすることが出来るでしょう。

2.何でも揃う

 さて、話の上では決して絶滅してしまった動物である必要は一見無さそうに思えてエピソードを過ごしていくことになります。だが、エルルさんの言葉でそれは一転する。

 この作品においては、人間が絶滅させた動物への代償行為的に、動物の願いを全て叶える場所として北極百貨店が開業したことが語られ、欲望の象徴としての百貨店が語られる。そしてそういった場所としての百貨店を受け継いできたエルルさんは、秋乃さんの姿を見て欲望と対照的な場所としての百貨店を作り上げていくべきではないかと決意を固める。人間が非常に多くの動物を自らの欲望で絶滅にまで追い込んだのと引き換えに動物の欲望を発散させるのではなく、他者に対しての思いやりに溢れる場所にしていこうではないか、と。まさにその欲望そのものとして現れるカリブモンクアザラシのような生き方ではなく、村瀬歩ライオンが撮影してきた百貨店の好きなところのように。「なーんでも揃う北極百貨店♪」という文句の意味がまるで変化して聞こえるようになるのだ。

 無論、こうした百貨店への捉え方はジョージ・A・ロメロによるショッピングモールを用いた資本主義批判と同じような方法を使っていると言えるだろう。百貨店という産業構造自体が人件費等の問題もあって斜陽産業であることは間違いないだろう。だからこそ、例えば北極百貨店がウーリーさんの彫刻を展示したように、ただの商品販売から場の提供に形態を移したりしている。