抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

やさしい気持ちで「マイ・エレメント」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はFilmakrsの試写会で当選したので、上映日前の感想公開になります。恐怖!8/4のアニメ三昧渋滞を先に1本見れたのは非常に良かったです。書くところが無かったのでここで文句を言っておきますが、水はelement=元素ではなくchemical compoud=化合物だし、土は混合物だし、全然エレメントではない。バトル漫画的な四性質だ。

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

(以下ネタバレ有)

1.カールじいさんとデート

 始まる前の最初の短編は『カールじいさんの空飛ぶ家』の続編。フォーマット的にはその後にDisney+で公開された「ダグの日常」っていう短編集のフォーマットだった。うん、これは結構問題作だと思う。映画では死別した妻との思い出を捨てられずに空に飛び立つカールじいさんなのだが、この短編ではデートのお誘いに舞い上がって思春期中学生のような慌てふためきを見せてくれる。切り替えが凄い。高齢者の性風俗を扱った『茶飲友達』という素晴らしい作品があったわけだが、その存在を思い出さずにはいられない。

2.マイ・エレメント

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 話としてはすっごくシンプルですよね。火・水・風・土かな?4つのエレメントたちが暮らす世界で火のエンバーと水のウェイド、相反するエレメントである両者の恋の物語っていう点で、まあいろいろキャラクターチックに整理してはいますが、ロミオとジュリエット的な、障壁が凄い恋ってことですよ。火として生まれたからには、同じエレメントと結婚するのが普通だし、水に近づけば水は沸点に近づいちゃうし、火は昇華されてしまう。触れ合えないよー、と思っている。この2人が素直になるまでの物語的なあれやこれやがある。

 んで、そこに昨今のディズニー的なとでも申しましょうか、ありのーままでー的なムーブというか、私ときどきレッサーパンダ的な親子対立的な話を混ぜてくる。エンバーは半ば呪いのようにお父さんから言われ続けてきた店を継ぐことを夢として自縄自縛。ガラス細工の方に関心を持ったとしても、それを受け入れられない。バランスとして凄く上手なのが、お父さんもお母さんもエンバーに対して支配的だったり、呪ってはいないってところ。小さい頃から期待はしていたけど、でもそれは普通の範疇、どころか自分の経験からむしろ反省して接していて、それをエンバーが内在化させすぎて勝手に期待を背負いこみすぎたっていうバランスにしているところ。だからお父さんとの和解みたいなプロセスは必要なくて、エンバーが自分に素直になるっていうことがゴールになる。夢と恋、両輪で自分に素直になれればいいです、家族はみんな愛し合っていますねっていう流れは、本当にレッサーパンダに続く作品だなと思います(バズライトイヤーを思い出さないようにしている)。

 一方で、すごく惜しいというか、優等生的に作りすぎているところで物足りなさを感じるっていうのは言わなくてはならない。エンバーの両親がエレメンタル・シティに到着して街の全容を見せるシークエンスは本当に素晴らしい。あと火のエレメントのちょっと平面的なデザインも凄く好き。それなのに、町自体は全然ストーリーに絡んでこないし、水と火の関係性は描けても他の2要素との相補関係が殆ど見えてこない。ロミジュリするための背景と化している。エンバーさん家にやってくる土のエレメントの大谷育江キャラとか、本当に何のために出てきたのか分からない。後からエレメンタル・シティのはずれに移住してきて火のエレメントたちの街を作った感じ、もろ移民の話のはずなんだけど、どうにもこういう街を作ってその中で多様性を描いていくには『ズートピア』に勝っているところが無い。うーん、住んでいるところの階級差、ウェイドの家は芸術一家で家族全体としてどうも持っている文化的レベルが違いすぎるぞ?みたいなとっかかりとかはあったんだけど、ただの就職あっせんで終わってしまったし。

 そして非常に引っかかったのは、物語の全体の進め方というか、エンバーの「お父さんの夢である店を潰すわけには」というところ。いや、その気持ち自体は非常に尊重したいのだが、勝手に改造して見事な違法建築を作り上げて店を開いてしまったなら、行政に介入されても文句は言えないって。普通にお客さん入れるんだからさ。SING2のバスター・ムーンほどではないにしても、全力でエンバーのあれやこれやを応援できず、ウェイドはむしろ肩入れしてくれる異常な官吏に見えてくる。その上で、チャイナタウンみたいになるのかと思われる治水事業の不備に対しては、ウェイドが工事業者の半分をセメントで固めて気まずいから依頼できませんでした、とかいうクソみたいなギャグが呈示される。色んなエレメントが共存する街のワンダーを売りの一つにして、モノレールだっけ?公共交通機関が通るたびに下に水が滝のように流れる面白設計までしておいて、治水が雑っていう公的機関っていうのが、これまた飲み込めない。エンバーの私的な問題と同じフェーズとして公的な問題がまかり通っているのはどうにも納得できなかった。エンバーの当初の目的が癇癪を起さない、だったのも事の発端で消えたし、脚本的に前半と後半で結構話が代わってしまった印象だ。いや、楽しかったんですけどね。