抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

無垢「イノセンツ」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は北欧スリラー。日本の漫画「童夢」やらをインスパイア元にもしているらしいんですが、当然のように読んでいない。っていうかオンライン試写で拝見したんですが、この時点で38度近い高熱を出しながら見て、死ぬ気でメモだけ出力。1週間ぐらいの療養を経て文章に仕立て直しているので。まあ何かって言うと、文章としては甘く見ろよ?

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WATCHA4.0点

FIlmarks3.9点

(以下ネタバレ有)

1.不可逆

 結構印象に残っているのは不可逆を感じる色んな演出、撮影技法。例示すると、イーダが唾を吐く上からのショット、ミミズを上から踏みつける。引越し、パチンコ、プチプチ。怪我するはずの姉を見ている視線だって一方向性。ベンジャミンはバネのチェーンを身につけていて、これは放り投げても戻ってくる。彼はまだ不可逆なことに気づいてない。で、究極的にこの作品で続くのは命の不可逆さだ。ミミズを踏んづけて死んじゃうだけならまだしも、猫を落とし、踏みつけ、そして裁断。そんなこと猫にしないよね?をことごとくしてしまう嫌な映画です。人が攻撃したら怪我する、怪我は戻らないし、命が耐えたら戻らない。それが1番大事。この映画、何度かそれが無かったこと(幻覚だったり、転移させたり)になるのがまた悪辣。そんなことは現実じゃあ起きないんだよ。

 ベンジャミンのお母さんの額がぱっくりいったのがアイシャのお母さんに転移したようでやっぱりしてません、ベンジャミンのお母さんに熱湯も追加しときますね!の地獄絵図、じゃあアイシャは感覚共有されて面倒なんでお母さんにころさせますね!の本当に嫌な気分になる連続、ボールじゃなくて骨動かしちゃうぞ!邪悪!

2.成長

 不可逆であることと関連するんですけど、要は子どもの判断基準って難しいですよね、って話です。よく青春映画を見て、成長するって言うのは可能性の選択肢を消していくことですよ、って言ったりしてるんですが、これをもっと子どもに当てはめて行った時はそりゃもう選択肢は無限な訳ですよ。無限すぎて、いわゆる社会通念上不適切な選択肢だって、ダメだと分かってないから保持してしまう。それをダメな選択肢だと言われても飲み込めなかった成れの果てがベンジャミンであり、イーダだってベンジャミンが悪いとはいえ彼を物理的に落として殺そうとする訳で、やはりそれも大人にはなかなか出来ない選択です。ラストで直接対決となると、明らかに団地の中の他の子どもたちが幾人か加勢してるじゃないですか。能力を持たない人間と持つ人間では、選択肢の数は全く変わってきます。加勢した子どもたちにとっては、おそらくあのタイミングで能力が覚醒し、選択肢が倍増とかになっていく。男子3日会わざれば云々です。

 あと印象的だったのは子役芝居ですねー。ベンジャミンの表情っていうのは基本的に常に素晴らしく、「僕は人を動かせるんだ」に対してイーダの「やってみて嘘つき」に対する顔、本当に乗っ取った時の顔。判断基準が違うだけで、ダメだっていうのが分かった時はちゃんと悲しくなれるのがまたつらい。

 もう1人、イーダの最後に向けて覚悟を決めていくのも良い表情管理でしたね。ベンジャミンを呼び出し、決着の時。でも失敗。最後はアナがけつを持った。おそらくここでようやくイーダはアナの靴にガラス入れてた件とかを悪く思ったのではないだろうか。自分もベンジャミンと同じことをしていたのでは?と。それこそが、選択肢を減らすというよりも、社会の規範と自分の価値観を一致させていく作業かな?