抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

あの夏「アフターサン/aftersun」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は5月公開ですが、昨日オンライン試写で見た作品。それもこれも昨日の『ザ・ホエール』の感想の序盤にも記しましたが、アカデミー賞に関連する、というアレです。

Aftersun: Screenplay (English Edition)

WATCHA3.5点

Filmarks3.4点

(以下ネタバレ有)

1.振り返る、夏

 この作品はほぼほぼホームムービー。11歳の少女と31歳の父親。おそらくは既に離婚していて、あるいは事実婚を解消したのか(エンゲージの件がよく呑み込めてない)、長期のバカンスを共に過ごすのは非常に久々っていう感じ。とはいえ、この両者がぎくしゃくしているような感じではなく、ソフィちゃんはちゃんとお父さんに懐いている。一方で、お父さんはなんか怪我してるし、ちょっとイライラするシーンも見えるし、すっごい不穏な感じで、娘の前で無理している感じがビンビン。そして途中でやけに不穏なサブリミナルっちゅうか、フラッシュバックというかが挿入される。結論から言ってしまえば、これはおそらくはソフィが父と過ごした最後の記憶であり、それを20年後からビデオテープを再生する形で回想しているっていうことですね。途中までポール・メスカルの主演男優賞にクローズアップして見ているので、ブレンダン・フレイザーの『ザ・ホーエル』的な悩める父親像としてチェックしていましたが、どっちかっていうとすっごいミニマムな『フェイブルマンズ』の方が近いかもしれない。映像に撮ることによって親を見る、っていう感じ。最後にかかったのがクイーンだったことで、お父さんはもしかしたら性的指向の問題で悩みを抱えていたのかもしれないし、本当に突然事故でこの世を去ったのかもしれない。でも、ラストシーンで彼は扉の向こうに消えることから死んでいることはおそらくは確定している。ちっともこの映画は教えてくれない。

 絶妙だなぁ、と思うのはやはり娘ソフィを演じたフランキー・コリオの演技とそのキャラクター。11歳でトルコにバカンスに来たっていう年ごろで、自分より年下か同じぐらいのレースゲームを一緒にやる男の子に対してはむしろ冷淡で、年上のバカンスに来ていた青年たちの方に心を開いている感じだったり、ちょっと大人びている。一方で、それを20年後に自分が見ている、という映画の構成から大人びている自分は幼かったな、なーんて見える、見えるんですよね。この演技は素晴らしいと思います。お父さんのこと、分かってるよ、なんて感じに本人は思ってるけど、でも今から思えば全く何にも分かってない。いやー良い。私の心のカメラに残しておくね。

 ただ、個人的には『フェイブルマンズ』の良さが却って際立つような感じがしてしまったというのも正直なところで。ビデオテープを見返す構成ではあるものの、一体どこまでを当時撮影していて、どこまでが現在時制での彼女の空想、想像なのか。基本的に知らんがな、と言える他人のホームビデオ鑑賞の時間がどうしても長い上に、それがどうしてもパワーとしては少し劣る以上、ギミックでもうちょっと魅せてもらいたいというか、徹底して欲しかったというか。VHSホームビデオの画質の映像を使うんだったらもっとはっきりするか、本当の記録した映像だけでやっていく、ぐらいの気概を求めてしまいました。どうなんだろう、答え合わせが欲しかったわけでもないんだが、どうすればいいと言われると難しいな…。