抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

VAR「フェイブルマンズ」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 アカデミー賞がっぷりよつ。3/3はエブエブvsスピルバーグ!どっちも試写で見れたぜラッキー!!!

 まさかの、この2本がベーグルで被るとは思わなかった…。

 さて、3/13(月)アカデミー賞授賞式同時視聴をツイキャスにてモンキーさんが行いますが、私もここに参戦します。WOWOWは映せないと思うので、我々のリアクションなんかを楽しんでいただけるのではないでしょうか。宜しければどうぞ。

The Fabelmans (Original Motion Picture Soundtrack)

WATCHA3.5

Filmarks3.7点

(以下ネタバレ有)

1.スピルバーグさん改め、フェイブルマン家の物語

 えーシンプルに自伝的映画なので、知らん人の知らん話です。成功者の幼少期の話って、四畳半的に言えば一番面白くない話。例えそれが史上最も成功した映画監督の一人であるスピルバーグであっても。

 とはいえですね、これがある程度以上は面白いんだから悔しい。まず彼が映像というものに興味を覚える最大のきっかけ、冒頭での映画館初体験。『地上最大のショウ』を見に行って釘付けになった汽車衝突シーン。映画館を出た後の車内のスピルバーグ少年改め、サミーの顔が非常に雄弁でした。いい顔。クリスマスプレゼントに汽車模型を要求し、なんか高価(たか)そう(という戸田奈津子仕事)なのを貰っておいて、それを衝突させるのを撮影して遊ぶ原初体験。お母さんの言葉が言い得て妙で、コントロールしたいんだと。映像を撮るってそういうことよねぇ。で、このころからスピルバーグと言えば、といえる醍醐味、人を怖がらせる、びっくりさせるエンターテイメントの根源だったんですね。

 で、こっからはニュージャージーアリゾナ、カリフォルニアと転々としながら家族の物語を描いていく中で彼はたくさんの自主製作映画を作っていき、そのたびにお父さんに「趣味」と呼ばれてムッとしていくし、大叔父さんに出会って自分の宿命を知っていく。んで、自主映画のクオリティがいちいち高い。西部劇でフィルムの方にピンを空けて銃撃をリアルにしたり、戦争映画で爆発を起こす火薬の仕掛けをしていたりで、それ自体が普通に面白い。その上で、そういうのを撮影している様子とかが、ジョーズっぽい海辺だったり、ETみたいな自転車こぐところだったり、インディジョーンズみたいなのがあったり、ユダヤ差別を食らうあたりはシンドラーのリスト、戦争映画はプライベートライアン、もうね、フィルモグラフィが無限に浮かぶ。これらが本当に過去の経験をもとに撮影されたのか、映画を作るにあたって今回用意したファンサービスなのか、おそらくは後者だが、いやしかしスピルバーグのなせる技というか、キャリアの暴力というか。まあ、一番のキャリアの暴力は最後にデヴィッド・リンチ演じるジョン・フォードに助言をもらうっていうキャスティングの説得力なんですけどね。ジョン・フォードに地平線は下にあっても、上にあっても面白い。真ん中がつまんねぇ、と言われて外に出て走り出すと同時に少しカメラが上にパンして地平線が下にくるの、お洒落すぎる。

2.スピルバーグとお父さん

 さて、スピルバーグの映画と言えば、お父さんっていうものの不在です。未知との遭遇でお父さんが子どもほっぽり出してUFOに夢中になっちゃうやつですよね。全体を通してお父さんに対して辛辣なスピルバーグ。今までも評論家の人たちとかからご両親の離婚がダメージだった、みたいなものを見ていた訳ですが、その辺も今回描かれる。というか、ご両親が亡くなられてこれを描けるタイミングになったからやる、という順序らしい。

 正直ですね、お母さんとお父さんを比較していくと、どう考えてもお父さんの方がいい人っぽいんですよね。当初からコンピュータの有用性を見抜いてバンバン開発を成功させて引き抜きで転居していき、カリフォルニアに家を建てて、すっごい頑張っている。無論、彼にも悪いところはあるんだけど、お母さんはもうエキセントリック。家族の中でもサミーと近い芸術家肌、と評されているし、お父さんがちゃんとしているようなお堅い感じでそこの反対をやっているんでちょいズルい。で、サミーは家族のキャンプ動画を映画として編集していく過程でお母さんとお父さんの助手の不倫に気づいちゃう。もうここのやり方がしつこいぐらい再生!逆再生!って感じで繰り返す。見つけたショッキングの表現なんだけど、いやーでもほら、VARでもコマ送り、スロー再生っていうのを繰り返してみていくとファウルに見えちゃう、退場に見えちゃう、ってJリーグジャッジリプレイで家本さんも言ってるじゃないですか。あ、サッカーの話してますよ?

 ということで、まあ見つけちゃって、でもそれがお母さんとの秘密の共有、みたいな方向に感情がちょっと行ってるっていうか。いやー不倫しといて、人間は後ろめたさを感じなくていいのよ、とか言ってんなよ、みたいな。お前のせいで息子は気に病んでいるのに同じ土俵に立とうとしてね?っていう。ごめんね、お父さんはお母さんを笑わせてくれないって子供4人も産んで育ててからそこ言う?お互いあるっしょ?とスピルバーグさんのマザコン具合を感じつつも、これを織り込み済みで分かっているからこの撮り方なんだし、うーむ、ズルいね。でも、この一連でのポール・ダノは本当に良かった。最近のポール・ダノ、外したのを見たことがないかもしれない。

 あと、ミシェル・ウィリアムズは絶対に助演だったわ。