抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

御伽話「古の王子と3つの花」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はフランスアニメ映画。短編集に近いですね。

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WATCHA3.5点

Filmarks3.4点

(以下ネタバレ有)

1.ファラオ

 民の求める話をするコンシェルジュ。色んな要望が出ていたので1個の話ではなく、3つの話をしますよーっていう体での短編集でした。1話目と2話目の終わりには幕間がちゃんとあったので、3編終わった上で物語の力とか、物語を求めることについてとか、そういう全体を串刺す何かが欲しかったですね。

 改めて各話を各項で。

 まずはミシェル・オスロ監督の作品を見たことが無かった(なんでディリリとパリの時間旅行を見逃しているのか)もんですから、彼の作ったアニメーションの世界っていうものを驚きを持って受容しました。すっごくカラフルでいて、動きは滑らか、でもすっごい平面的で、建築物に関しては結構幾何学的ともいえるつくり方。このファラオのテーマが古代エジプトなのもあって、壁画がそのまま動いているような平面性を感じました。

 さて、話の中身としてはうちの娘と結婚したかったらファラオになってこい!とタヌエカマニさんが言われて頑張る話。竹取物語みたいな無理難題を結婚条件にしているけども、この条件を吹っ掛けてきた王妃が、娘であるナサルサに対して文字を覚えるな、魚を獲るなと制限してくる感じも高畑勲かぐや姫の物語』的な要素を感じつつ。まあタヌエカマニさんは行く先々でインフラ整備とか鎮護国家みたいなことをしていたら神にも現地民にも認められてファラオになって会いに来ました、スカッとジャパンです、みたいな感じで、あたかも無犠牲でファラオになった空気感が出ていて労役とか大変だったろうなムーブはゼロでした。

2.美しき野生児

 次の物語はオーベルニュが舞台。中世フランスですね。

 ある城の中で子どもが育てられている中で、彼は壁越しに囚人と交流。結果的に囚人を逃がしてしまって彼は城を追放。王子は野生児として義賊・レジスタンス化し、囚人だった公爵の攻め込みを手伝い、彼の娘と結ばれました、っていうわっかりやすい貴種流離譚です。1話目同様に、このお父さんが結構ずっとがみがみ怒ってて嫌な父親であり、かつ民からは搾り取れるだけとっちまえ的な悪王でもあるので、またもやスカッとジャパン的な文脈で語りやすい古典的な物語。人物を完全に黒抜きにした影絵的な手法が興味深かったですが、これ過去作の予告編を見た感じ前もやっているんですね。

3.バラの王女と揚げ菓子の王子

 さーて、18世紀モロッコ→トルコに舞台が映ります。謀反により国を追われた王子はかつて肖像を貰った縁を頼ってバラの王女の国へ。王女に会いたいけど無職だしなぁ、ということで取り敢えず揚げ菓子職人の弟子になる。とんとん拍子で揚げ菓子を王宮に納入することになり、独立し、そして逢瀬を重ね、最終的には城を抜けだし2人は幸せに暮らしました、って感じ。これまた典型的ではある。スピーディすぎて、弟子入り直後には王宮に納入する分を弟子が作っているし、独立したら即王宮がそっちにオーダーしているし、びっくりするぐらい主人公だからです、以外の理由はない感じです。できちゃったんだからしょうがないね。

4.まとめ

 3編通して、親世代のいうことに従って結婚してたまるか!な「わきまえない」子世代の物語にも、女性の物語にも見える(ちょっと真ん中のは怪しいが)。1作目、2作目では親が子の行動を制限してくるし、3作目では揚げ菓子の師匠が弟子の創意工夫を勝手に考えるな、教えを守れ!と保守的に怒ってくる。親世代と子世代の対立、こういう古典的な寓話とか童話的な世界における女性の解放っていう側面は確かにある。とはいえ、この女性たちは結婚とか、貴族性に結構囚われているまんまで、改めてこれを再生産することはどうなんだろうとも。ヨーロッパアニメーションだけでいってもウルフウォーカーがすっごい上手にそれを表現していたり、冒険を男性性から取り返す試みをレミ・シャイエが続けていたりする。そこと比較すると、もうちょっと進んだところを見たかったかな、っていう風には思いました。