抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

国を穿つ「金の国 水の国」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 さてさて、このマンガが凄い!オンナ編で2年連続1位になった作家さんの1本目の方の映画化、この作家さん初の映像化です!っていう推し方のようなんですが、悪い、マンガは読まないんでね、なんて顔でいる訳ですよ。なんでそういう漫画どうこうの話はですね、しないと思っただろ!!!…試写会のお土産で原作を貰ったので、一通り書いてから読んでみて付け足すことがあれば書きたいと思います。

 などと書き残してから4か月が経過しました。漫画を読むのを後回しにしていたつけが回ってきました。なんだったらもっかい見に行って加筆するかも…。

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WATCHA4.0点

Filmarks3.8点

(以下ネタバレ有)

1.ロミジュリ2.0

 なーんか難しげな国際情勢の話から始まるんですが、ようはAとBの国が仲が悪く、講和条件としてそれぞれから一番の美女と一番賢い男を人質に出して政略結婚させましょうね、ってこと。決して難しい導入ではない。ところが、互いに猫と犬を送るという舐めたプレイをしたうえで、受け入れた人が黙っていたあーんどその二人が奇跡の出会いをしたので、恋人のふりをしていくことで…っていう、よく考えたらロマコメの典型じゃないんですかね?っていう恋人のフリをしていたら…系ラブストーリー。

 ってことはですね、最終的に二人がくっつくのは前提の上でどうやってすれ違わせたりするんですかね、っていうことが肝要です。そこで本作は政治と分断、というモチーフを使ってくる訳ですね。互いの人物が国を象徴している訳で、この両者が水路で繋がれたならば、二人の恋愛も成就する、っていう方向に大局的には見せる感じ。んで、このサーラ王女の方の国が国王派と王女派で割れているっていうことで、秘密裡に水路の建設計画を進めていきますよーっていう感じで、婿であるナランバヤルと神谷浩史左大臣が結託する。サーラ王女の国には水以外があり、ナランバヤルの国には水しかない。資源の奪い合い、両国を分断する壁、うーん、実に現代的なテーマですね。ちょっと弱いな、って思うのはナランバヤルさんはソッコーで惚れて、すれ違っていても頑張れる原動力は完全にサーラのためなので、恋愛としての面白さっていう面はないことでしょうか。とはいえ、政治として面白い。あとは、サーラ王女の国の描写ばっかりが強くて、ナランバヤルの国の方の描写が少なすぎますかねぇ。

 とはいえ、まあこのように分断のある社会背景を背負った二人の恋っていうことで言えば、完全にロミオとジュリエットから続く古典恋愛劇の流れを組んでいるのは間違いないと感じます。劇中、おそらくかなりの大見せ場である宮殿内を逃げるナランバヤルが下、通りかかったサーラが上、という構図で対面することになるのは完全に「おおロミオ、どうしてあなたはロミオなの」の構図。但し、悲恋に向かわないようにサーラ王女は自分の足で走り出してナランバヤルの命を助けに向かっていくことで、しっかりアップデートっていう感じに仕上がっている。その辺はあれですね、よくできている!と言わざるを得ない。

2.漫画を読んで

 さてさて、アニメ映画としては長尺かもしれないほぼ2時間の本作。試写の段階ではちょっと長いんじゃねぇのぐらいの感覚だったと記憶していますが、原作漫画を読むといやいや実によくぞ収めましたな!!っていう感心しきりでございます。

 エピソード的には全く端折らずちゃんと話が成立しているうえで、ちょっと正直漫画の段階だと分かりづらそうなところをしっかり見せてくれていてわかりやすい!上で印象的として挙げたサーラとナランバヤルが外で見合わせたロミジュリってる構図とか、映画の方が抜群にいいですよ、絶対。ピリパッパ配下の裏切ってくれる人とかも結構深みが出ている感じがしました。あとライララね、ライララの沢城力の強さを思い知りました。ひとりだけキャラの空気感が違ってて、リアリティラインもおかしい人物なのにそれが許される上でコメディリリーフも担ってて、いやはや大したものです。

 というわけで、見事に安心安全な作品でした。よくできている。