抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

桃雲の片想い「ピンク・クラウド」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はブラジル映画!バクラウ以来かしら?次のW杯の時のブログのネタになる…

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WATCHA3.0点

Filmarks3.1点

(以下ネタバレ有)

1.予言的ロックダウン映画

 超シンプル!ルールは簡単、ピンク色の雲に10秒触れると死にます!というそれだけの話。雲とか言いつつ、最初にぶっ倒れる人は湖畔の船着き場っていうんですか?あそこで犬の散歩させてたら死ぬんで、その高度のものを雲と呼んでいいのでしょうか。定義的には非常に疑問なのですが、でも地上でも飽和水蒸気量を越えてないで固体になっていれば雲なのか?いかんせん文系なんで、理解が浅くてすいません。

 で、たまたまワンナイトになっていた2人が、そのピンクの雲の発生を受けて2人きりのロックダウン生活を送らざるを得なくなる訳です。一応、自己言及的に窓の隙間から入ってこないかしら?なんてセリフがあったんで、厳密に言えば真空でない室内にいて死なない理由はなんなのか、空気中の濃度で何パーを超えたら致死量なのかとか、そういう定量的な話は出てきません。ジャンル的にはSFなんだけど、その辺がサイエンスとしてどうなの??とか思っちゃったり。

 結果的にこの話はコロナウイルスが猛威を振るった当初の外出自粛生活を思い出させることしか考えていないようにすら見える作品に仕上がりました。ところが面白いのは、この作品はクローズドな空間での人間関係に焦点を当てる為に作った設定であって、2017年に構想、コロナ禍前の2019年には撮影をしていた作品ということ。現実がフィクションを超えていくにもほどがあるだろ。最近はコロナ禍を踏まえたり、ポストコロナで撮影された作品がもう映画館でかかったりするので、誤解を生むところではあります。

 っていうことでですね、まあはっきり言えばロックダウン設定としては甘いです。割と序盤に窓をくりぬいて物資を搬入できる状態になることで、食料の不安は解消され、味は悪いが中盤にはそれになれてしまう。新しい生活様式ってやつですね。Wi-Fiにかんする描写があったり、終盤にも停電して怖いっていう話があるのですがそれも復旧するので、ライフラインを維持したりする人たちは真面目に仕事している訳で、まあその辺はほら、デスゲームものでゲームマスターが血と汗を流して努力して準備しているのは気にしないでしょ、っていう塩梅の感じ。

 ポストパンデミックの視点をやはり考えると、たまたま同じ時間を過ごすことになった二人が仕方なく夫婦に、そして家族になっていく描写はともかくとして、そうした中でのリモートでの診察やリモートでの出産、在宅勤務にマッチングアプリVRといった様々に定着したコロナ禍の生活様式を予言的に扱っているのは凄いと言わざるを得ない。一方で、それを乗り越えて生きているのが現在の我々だし、買い占めとか、ここにはない出来事でもっとひどい出来事も起こったことを考えるとフィクションの脆弱性、というか人間が想像できることの限界、現実の強度っていうのを思い知らされます。

 まあ後は関心を持てるのはやはり子どもの存在。あっさりと劇中で出産したかと思えば成長して算数のテストを受けたりする年齢にまで到達するわけですが、彼の発する「雲は好き?」という問いがジョヴァンナとヤーゴの考え方の違いを強調したうえで、この世界しか知らない子どもにとって、出られないことは絶望なのか?っていう問いですよね。こればっかりは本当に当事者にならないと分からないことだし、でも当事者なら分からないことでもある、凄く難しい問題。マスクを付けるのが当たり前の子どもたちが会話をなせるまで、この日々は続くのでしょうか。

 ちなみに、日本人はこのコロナを予言した物語に対して、もう一個別の方向からヒントになったのでは?という出来事を想起出来ると思います。まあ言ってしまえば福島の原発事故。見えないけど一定時間触れることで死ぬ、予期せず死ぬ、そしてそれを避けて生活しなくてはならない、という点で鑑賞中、放射能のことを考えて作ったのではなかろうか、とずっと思っていました。まあ、それゆえに防護服を室内で着て移動してまた室内へ、っていう移動の仕方が発案されないことが不思議になってしまったのですが。

 

 長々書いてみましたが、結論的には長すぎ!というのが正直なところで、そういう意味では『イット・カムズ・アット・ナイト』の時と近い感想でしょうか。30分の短編としてなら凄く良かった気がします。本当は、特徴的な色彩と家から出られないという設定から『ビバリウム』的なハウジングスリラー、あとはどんどんおかしくなってく感じで『テイク・シェルター』みたいな要素を期待したんですが、ずっと性欲の話でしたね。ヤレないVRやヤレないリモート、ヤレない隣人よりヤレるちょい嫌な人みたいなバランスの性欲ばっかの話に。まあしゃーないけども。ゲスなことを思えば、息子も将来母親を襲うことだってあると思う。実際、ジョヴァンナの妹のお家ではパパが娘の友人とヤッちゃった訳だし。年齢差はそこでは理由にならないだろうな。

 ただ、上映後のトークイベントで少し納得がいったのが、国民性の違いはあるのでは?という観点。監督はネトフリのラブ・イズ・ブラインドin Japanを見て国民性の違いにびっくりしたらしい。ラブ・イズ・ブラインドは外見を見ないでカップルを成立させたその後を見るリアリティショーらしい。同時に思い出す。あー、ザ・ジレンマのブラジル編は凄いと聞いたわそういえば、と。ザ・ジレンマは美男美女を島に集めてヤッたら罰金のリアリティショー。日本では成立しない…な。