抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

清原果耶、優勝「線は、僕を描く」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はFilmarks試写で当選した作品。Filmarks試写会は感想を2日以内にあげてくれ、といってくるので公開前ですがご容赦を。

 挿入歌がyamaでこの人の声好きだよねぇ、と思っていたらエンディングに流れる主題歌はもっと好きっていうか、今年イチ好きでした。yama produced by Vaundyって出てきました。この人たち天才です。

くびったけ

くびったけ

  • yama
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

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WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

(以下ネタバレ有)

 

1.その魅力を切り取る男・小泉徳宏

 さて、本作の監督小泉徳宏さんはとにかくその題材の魅力を切り取ることに長けている印象が非常に強い方です。やはりどうしても代表作といえるのは、『ちはやふる』3部作。圧倒的な魅力を放つ広瀬すずの代表作になったと同時に、真剣佑がフックアップされ、『君の名は』前夜の上白石萌音を発見し、清水尋也矢本悠馬坂口涼太郎みたいな欠かせないバイプレーヤーとなった若手俳優陣も輝いていました。松岡茉優だけは勝手に凄かった気もしますが。そしてそこに完結編で登場していいスパイスとなっていた清原果耶が今回W主演に据えられたわけです。と、同時にかるた、という題材を映像的に描くにあたってかつての時代の一瞬を切り取った百人一首と若手青春映画という題材を合わせて捉え、一瞬を捕まえて永遠にできるんだ!っていう瞬間なのに無限っていう題材の良さを完璧に真芯でホームランしていました。そして本作の予習として『タイヨウのうた』も見たんですが、これも切り取りと歌っていう題材とYUIのアイドル性を完璧に切り取っていました。

 翻って本作、これもまた極上の切り取り力を見せておりましたよ。冒頭の湖山先生の神社でのパフォーマンスでしっかりライブドローイングっていうエンタメとして掴んでおいて、水墨画という題材を自然と人間、生と死、みたいな対比に上手いこと落とし込んでいる。ここは後述しましょう。『ちはやふる』でも見せた、その瞬間を綺麗に音楽と合わせて床下カメラとかやってましたね。

 何といっても切り取り力として素晴らしいのは、俳優陣。清原果耶はもう優勝です。優勝しました。何に、とか言わないでください。ただ、本年の何かしらには優勝しました。好きです。やばいです。彼女の最初の登場シーンは青山君が湖山先生の家にお邪魔した時に描いているとこを盗み見する訳ですよ。この時清原果耶は片方だけ触覚的に前髪を垂らしていて真剣そのもの、そしてそこにですよ、女性の好きなしぐさランキング9位(ゼクシィのサイトに書いてあった)!髪を耳にかける(すっげー好きだったからもしかしたら髪をかき上げただけかもしれん、もう好きって目をそらした)!見られていることを意識していないで製作に集中しているが故の魅力!カッコよさと美しさ、そして険しさの同居!横浜流星と本当は6歳差なのに、ちゃんと差がもっと狭く見える大人っぽさ。『ちはやふる』でいうと松岡茉優的な主人公の先達天才ポジ、でも悩める存在、っていう孤高さを見せつつ、大学で水墨画を教えて行ったときは背伸びした感じも見せて、湖山先生が倒れて心配したと思いきや反目する時は孫だし、最後は可愛さと凛々しさが同居するし、いやこれ本当に凄いですよ。よく考えたら時間と場所の飛ばし方とかおかしくね?みたいなのも全部彼女の説得力で負けました。朝ドラやって、満を持して映画界に帰ってきた作品でこのレベル出されたらもう降参するしかありません。あんまり凄すぎて、邦画の安心印・河合優実が横浜流星の友人役だったことにエンドロール迄気づかない始末。これは10月期ドラマの城塚翡翠も楽しみで仕方がない。彼女なら出来る筈…。

 清原果耶に文字数を使いすぎましたが、三浦友和もすっごい良かったですね。こっちは『ちはやふる』でいうところの國村隼ポジだと思いますが、文化勲章受章の癖に突然主人公を弟子に取りたいとか言い出すし、教えるのへたくそだし、クソジジイだし、でフワフワしていていい感じでした。三浦友和としては『葛城事件』ぐらいぶりに個人的ヒットですね。あとは江口洋介ですけど、まあ彼は非常にいい見せ場を貰ったんで彼の実力からしたら輝いて当たり前。とはいえ、小泉監督は若手俳優でなくても輝きを切り取ることが出来る、と言えたと思います。

 最後になってしまいましたが、主演の横浜流星さんは本当に飛躍の年になったと思いますね。『いなくなれ、群青』の時は飯豊まりえの思い出しかなかったんですが、2022年だけで『嘘喰い』『アキラとあきら』『流浪の月』(前2本は見ていなくて申し訳ない)と主演作に良き映画に恵まれました。『流浪の月』の時に激賞した記憶がありましたが、本作でもそれに足るところを見せてくれていたと思います。『流浪の月』はイメージを逆手に取った特殊な役だったと思いますが、本作もちょっと前見たり後ろ見たりで受動的な感じのする、決して簡単ではない役を見事にやっていたのではでは。

2.生きるとか死ぬとか

 なんか清原果耶が好きでした、っていうのだけで文字数を使いすぎて中身の話を全くしていないのにいつも終わらせるぐらいの文字数になってしまっていてびっくりしているんですが、えーどうする?まだやる?

 冗談はさておいて、本作におけるテーマは結構重くて「生と死」だと思います。前半キャラ掴ませるためにコメディにしておいて、後半にこの重いテーマを持ってくる。いくつか印象的なテーマを感じていて、そのうちの一つが真っ白なところに何かを加える、っていう行為、です。なんにもないところに、なにかを生む。0と1。白と黒だけですべてを表現する水墨画が題材なので当然です。ところが、勿論白と黒っていうのはそれだけじゃない。水墨画の基本講座で3つの色を一つの筆でつくる、なんてことも言ってましたが、白黒って2色じゃない訳です。白黒映画、ドルビーシネマ、何でもよろしい。映画好きなら白と黒の間に果てしなく介在する何かは、察するところがあるでしょう。んで、その白と黒に生と死を置いて、その狭間で動けなくなってしまった青山くん、2回倒れた湖山先生、みたいなところもそうだし、青山君の妹の死に対する責任の有無っていうのも白でも黒でもない、みたいな。で、そういう題材だからちゃんと食べ物に対して「いただきます」をする、食材に対して生死をちゃんと考えて寄り添う、っていう撮り方にもなっている。

 そのうえで、自分の線を見つける、っていうのが大事。頭に浮かんだのは大好きな黒木渚の『骨』という曲。2番の歌詞に「様々な枠組みが私を作っている」なんてのがありまして。この枠組み=線と言い換えて、自分を構成する要素は種々あって、そのうえでそれは変えられない。でもそれが自分を構成していることを自覚することで自分らしさを見つけられる、だから自分を見つめ直さなきゃだめなんよっていう。死んだ後でも楽しめるように墓石に点数を彫ろう、ですよ。世界は線で出来ているんです。だから、僕は線を描くんじゃなくて、線は僕を描くんです。

 

骨

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