抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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四畳半は縦にも広がる「四畳半タイムマシンブルース」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は3週間限定劇場公開の作品。Disney+では5話+オリジナルエピソードの6話構成らしいので、これは映画なのか非常に怪しい、というか個人的な定義だと『地球外少年少女』は映画じゃない!って豪語したからこれも映画じゃないんですが、映画館で見ちゃったから…。6話目はDisney+に入っていないので未見!年末ぐらいに加入したら書き足す!

四畳半タイムマシンブルース【電子特典付き】 四畳半シリーズ (角川文庫)

WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

(以下ネタバレ有)

 

1.サマータイムマシン・ブルースなんだが

 湯浅政明監督がアニメ化した森見登美彦原作の『四畳半神話大系』。これが同じチームで、同じ森見原作『夜は短し歩けよ乙女』が劇場映画化され、出町柳ユニバースなるパラレルワールドが誕生した。

 一方その頃、四畳半・夜は短しで脚本・シリーズ構成を担当した上田誠が主宰する劇団ヨーロッパ企画は『サマータイムマシン・ブルース』を演劇から映画に昇華し、そして『サマータイムマシン・ワンスモア』という続編の舞台まで完成させた。

 その二つが今宵、悪魔的融合を果たしたのだ!うわ!凄い!森見やりやがった!と本屋でハードカバーの発売当時に思った訳です。浅沼さん主演でのアニメ化をすぐに考えたわけですが、案の定も案の定。しかーし!今回は映画!と思ったらDisney+独占の全5話+オリジナルエピソードで5話分は劇場で!これは映画なのかは、知る由もなく、我々は下鴨幽水荘にまた一歩、足を踏み入れるのである、

 とまあ、なんだかのんべんだらりとクソ長い前置きをしてしまったが、なんかほら、四畳半ってこうやって益体もなく言葉を繰り出して指示語を消滅させてく訳で、見ている方もそこにどんどん飲み込まれて行って浅沼さんの早口に追随したくなっちゃう訳じゃあありませんか。だから許してください。文章能力の伴わない駄文ほど語ってはいけないものも無いとは思いますが。

 本作は、悪魔的融合!と言いながらも、ほとんどサマータイムマシン・ブルースなんですよね。部室を下鴨幽水荘の2階廊下に移し、登場人物をそれぞれ四畳半ユニバースのキャラに置き換えただけで、時間移動の中身、キーになるアイテムとその顛末、オチの裸踊りまでなーんにも変えてない。にもかかわらず、どうしてこんなに心地よいのだろう?と思ってしまうぐらいフィットしているんです、これが。本来的には舞台でヨーロッパ企画の役者が演じるために書かれたものであり、それが映画で実写キャストによって息を吹き込まれたのだから、現存している四畳半の連中には会わなくて当然。それなのに、突然タイムマシンが出てくる、という突飛さ以外は本当にこの連中のための物語として上梓されたのではなかろうか?という万全さ。ビダルサスーンを要求する師匠も、勇んでタイムマシーンを試す小津も、ポンコツ映画監督の明石さんも、弄られたおす城ケ崎先輩も、みーんな説得力しかない。まあ、城ケ崎先輩は四畳半の後に見たら弄られキャラにするしかないけど。「私」含めて、全員すこーしずつチューニングされているような気はするんですが、気にならない、というか明石さんの魅力度がちょい上がったぐらいで羽貫さんなんて変わったかどうかも怪しい。あと、浅沼さんがSpotifyのラジオ番組Anizoneで言っていたのですが、今回はちゃんとSFを分からせるために早口を少し抑えていると、確かにその通りで「私」も世黄斑より意固地ではなくなったようにも思えるんだが、しかし全然理解の範疇。

 そういったキャラの魅力のお陰で、前半のタネをまくシーンですよね、タイムマシーンが出てくるまでのほぼほぼ1話分ぐらいの20分程度がちっとも気にならない。本家『サマータイムマシーン・ブルース』では、エンジンかかるまではちょっと辛かった印象だったんですけども、そこを完全に突破してきている。ちょっとしたキャラブレは、四畳半ユニバースでまた違う未来に進んだぐらいで起こる範囲に収束しているように思えて、それでいて変わらずキャラに愛着を持っているというこの悪魔的合体の良さを完全に生かした、と言えるでしょう。

 頭の名調子、そしてお尻の成就した恋…の締めで、ああいい四畳半を見たな、となるのでこの作品は大成功。その間のことは、サマータイムマシン・ブルースと構造は全く同じなのでそちらに譲りましょうか。

 ちなみに本当に余談ですが、タイムマシンがあったらポイントカードを作るというかまいたちの漫才がこの映画よりもしょうもないタイムマシンの使い方で好きです。