抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

その2人は特別だった「あの娘は知らない」「秘密の森の、その向こう」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今日は同日公開の作品がたまたまオンライン試写で見れていて、どっちも70分台、そして少しクィアな目線が入っていたり、みたいな共通点があるんでどっちもまとめて出しちゃえ、っていう感じの感想回になります。

 

 

1.あの娘は知らない

 

WATCHA3.0点

Filmarks3.1点

 若くして旅館を切り盛りする福地桃子の元を、ここに泊まった恋人が死んだと岡山天音が訪ねてくる。失った彼女の足跡を追ううちに、福地桃子もそこに寄り添っていく。それだけの凄いミニマムな話でした。

 要素的に言うと、岡山天音的には、死因が自分たちに子どもを宿す可能性が低かった、という引っかかりがあり、福地桃子的には性的指向の問題で、結局普通の輪の中に中々入れない。そういう二人が恋愛とは違う、でも緩やかな繋がりのようなものを得たことで岡山天音福地桃子も死を乗り越えていっているよ、っていう話。で、それを情緒的ですらあるような海辺、炎、波、みたいな映像を入れながら見せていく感じ。

 いい話だなぁ、とは思いましたが、それぞれの秘密の開示がかなり序盤で済まされたり、出会ってそのまま寝ましたみたいなぐらいのメンタリティなんだけどやってることは純愛とかそっちに近い、みたいな違和感が拭えず、そのうえで感情を全部喋ってくれる感じも好みではないな、っていう感じでした。画面いっぱいに福地桃子の顔だけになって無言でも画面が持つのは凄いと思う。

 思えば、福地桃子も朝ドラ『なつぞら』で広瀬すずの妹?だっけ?で見たのが初見だったので、なんか嬉しい(既に見ているがブログが更新されていない『マイ・ブロークンマリコ』の記事を踏まえての福地桃子'も'っていう文章)。朝ドラ3本見たらそうなるんだから、邦画を楽しみたいなら見た方がいいんだよなぁ。

2.秘密の森の、その向こう

Petite Maman [Region Free] [Blu-ray]

WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

 主人公はネリー。じゃがりこじゃがりこじゃがりこじゃがりこじゃがりこ、の食べ方の使い手となる8歳の女の子。祖母の死を迎え、家族で祖母の家を整理することに。そんな中で、森の中で出会った少女は名をマリオンという8歳の女の子。だが、どうやらこいつ、8歳の時のお母さんらしいぞ…、という感じ。

 現在視点では祖母の家の片づけが終わるとここを出ていかなくてはならない中で、母はおそらく自分の母である祖母の死を受け入れられずに家を出てしまう。一方で、過去のマリオンは、手術の日が一日一日と近づいている。『となりのトトロ』的な少女たちの交流でもあり、『未来のミライ』的な時代を超えた血縁の繋がりをファンタジックに描いたことになる。どうやらネリー本人も相手が母親だと気づいている様子で、観客は少し緊張しながら見守ることになる訳だが、この子たち、本当の双子なので一緒に遊んで、演劇して、料理してっていう一連の遊びがもうそれだけで愛おしくて仕方なくなる。無限に見ていられる…。

 現在と過去を結ぶ森の中間点にある小屋が完成した時、二人の日は最後を迎え二人は最後の時を過ごす。全く同じ間取りの家を登場する大人を変えることで時制をシームレスに動きながら、祖母の死や、戻らないかもしれない母、といった事態への受け止めを粛々と進める。

 多分、多分なんですけどこれはイマジナリーフレンド、だと思うんです。ネリーが一体どうやって喪失を受け止めるのか、っていうことの物語だと思うんですが、しかしそれが変に8歳に分かるように簡素化されているのでもなく、しかし説明すぎることもなく自然に、違和感なく同じ画角、でもカットが変わったら家が変わってる、みたいなことをしながら本当に自然に見せていて、ああ素晴らしいな、っていう。寓話性が高く見せられる秘密の森を含めた自然の美しさも含めて非常に満足度の高い作品でした。