抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

毒性高めの寓話「シチリアを征服したクマ王国の物語」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は伊藤沙莉フィーバー。そう、3役も声を当てているアニメ作品でございます。ついでに柄本佑も2役やってますけど、気にしない。すっかり伊藤沙莉に魅了されている私にとってのお楽しみでございました。

La fameuse invasion des ours en Sicile: le grand album du film

WATCHA4.0点

Filmarks4.1点

(以下ネタバレ有)

1.クマ的!栄枯盛衰もの

 基本的には、語り部の親子が雪の中で洞窟に逃げるとそこにクマ出没!死ぬ!ということで、死んだふり作戦ではなく、自分の得意技過去のクマ物語をするという1部、その続きをクマが語る、という2部構成。クマがしゃべることにびっくりしていたのに、お前らクマに語り掛けていたんか。

 語られるクマ物語、1部は息子のクマが攫われてそれを探しに行くパパクマと悪い王との戦い。そこに仕えた魔法があと2回しか使えない魔術師のやられっぷりを楽しんだりする感じ。

 2部では、国王となったパパクマが、魔法使いの杖窃盗事件を機に息子も投獄するようになり、最終的に彼自身は死んで、クマ達は森に帰っていくお話。

 全体を通して、クマが異文化とか、移民とかのメタファー感の強い、極めて寓話的なお話になっており、同族を妄信してしまったクマ王のようなスタンスだと痛い目をみますよ、っていうお話。ただ、1部が2部のフリにはなってないので、割とぶつ切り感はあるかなー、と。原作が1945年に作られたイタリアの絵本なので、多分にファシスタ党のことが念頭にあるだろうし、なんなら「オペレーション・ミンスミート」と言う作品の説明を読んでいてびっくりしたんですが、シチリアは連合国軍反抗の拠点になっていたと。これは面白い符号というか、絶対に意識されてるよね、と思います。

 いや、でも各部で考えるとすっごく確かに面白いんですよ。1部で話した、人間とクマは分かりあえるかも、というクマ王側のセリフ「人はクマと同じで良い奴も悪い奴もいる」が最後にかかってくるわけだし(そう思うとこのセリフはリフレインさせて良かったかもしれん)、人間との初戦を終えた段階で、親切にも残してくれた(笑)物資を手に取ったクマが急速にシビラライズされていく感じも、2部で裏切りを働くアイツへの前夜って感じ。その2部では、堕落したクマが森の奥の宮殿でパーティしてるんだけど、クマがハチミツ酒でシャンパンタワーしてたり、カジノしてたり意味不明な絵面で面白いし、っていうかクマ王だってめっちゃ書類に囲まれているのに、子どもには鮭を捕まえる動物としての本分を忘れるな的な教育を施している。

 シンプルに例えば藤原道長を描いた『栄華物語』『大鏡』とか、平清盛を描いた『平家物語』に近い歴史物語としての面白さがありましたねー。だとしたら、現在絶賛テレビ放送中の山田尚子平家物語のような、語る人だからの何かも欲しかった、と言えばそうかも。

2.CGクオリティがちょいノイズ

 気に入らんのはですな、クマの造形やら動きやらです。人の脚やら腕がほっそいのはキャラデザとしてちょこちょこあるんで別に問題ないんですが、クマのCGの雑さはちょっと目に付く。良く言えば異質なんですけど、悪く言うと無機質でちょっと怖い。本作においては、クマは怖い象徴ではないので、もっと温かみが欲しい。みんなタンタンの冒険みたいな顔してるし。

 そのうえで、なんかもうタイトルを思い出せないEテレが教育テレビと呼ばれていたころの何かしらの番組のオープニング映像みたいな、続々と同じペースで出荷されていく赤いクマっていう映像は、やっぱり怖い。不気味。えいごりあんかな?と思ってyoutubeで検索したら、えいごりあんはキノコが降ってくるだけでした。いや、これはこれで怖いわ。あと、なんか他意は無いですけど上坂すみれのMVとかにありそう。

 ってことで、面白かったけど、もっとデザインとかが良ければ大好きになっていたかな、って感じ。背景とかの色彩も面白いけど、レミ・シャイエには敵ってない、というのが個人的な感想です。