抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

星に願いを「ウィッシュ」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 ディズニー100周年記念映画です。試写会で見たので短編がついてませんでした!そのために劇場にはいけねえ

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WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

(以下ネタバレ有)

1.周年なので

 今回はディズニー100周年記念の作品、ということで結構原点回帰的と申しましょうか、いわゆる王道のミュージカルアニメをやってきました。主人公アーシャも歌うし、ヴィランとなるマグニフィコ王も歌うし、みんな歌います。そしてみんなで歌ったことが王への抵抗・革命の意志になってマグニフィコ王をぶっ飛ばすパワーになります。わかりやすい。

 100周年作品ということで、非常にこれまでの歴史というのを重要視しているんだろうな、っていうのはところどころに現れていて。最もそれを感じるのはタイトルにもあるテーマ設定で、今回のテーマは願い。ディズニーのアンセムともいえる『星に願いを』から持ってきている訳で、っていうかよく考えたら当然のようにディズニーのものだと思ってたけどこの曲って何なん?と思ったらピノキオでアカデミー賞を獲ってアンセム化したんですね、へー。2作目でアンセム作れちゃうの凄い。っていうか白雪姫からの『ピノキオ』からの『ファンタジア』で『ダンボ』で『バンビ』ってロケットスタートがすぎますな。話を戻すと、そういう願いっていうのを取り上げられた人たちと願いっていうものの力を示す物語にすることで、これまでのディズニーの歩みを踏みしめるというか。

 さて、結局『星に願いを』のことをロクに知らなかったディズニー弱者を自負している私でも分かるレベルのオマージュが盛りだくさんでした。エンドロールで歴代のキャラが星で登場するっていうのもあるんですが、まあ登場キャラクターだけでいっても『チップとデール』なんだろうなっていうリス、ウサギは『不思議の国のアリス』ですか?『バンビ』ですか?見てないから分からん、クマは知らないけどジョンって名前がついてたんでコレもそうでしょう。ピーターパンも出てきたし、『美女と野獣』とかみたいなシーンもありました。何より、アーシャの周りの友人は7人組、森の中での青い鳥のいるシーンなんか『白雪姫』をしっかりとイメージしています。他にもあれっぽいなーとかいろいろ思ったんだけど忘れた。まあこれは公開後のYoutubeの元ネタ動画をインフルエンサーが作りまくるぞ!(反省してディズニー映画をもっとちゃんと見ないとな、と帰ってから『プリンセスと魔法のキス』を録画しました)

 アニメーションとしても、周年作品ということでここ最近のいわゆるディズニーとかピクサー的な3Dの質感を追求した映像からは一旦離れてかつてのディズニーを意識したような作り…って形容されるんだろうけど、ものすごい挑戦をしているように思えました。背景としては絵本のような、とでも言うんでしょうがびっくりするぐらい平面的というか、最早完全に平面。その上でなんだったら少し違和感を覚えるほど流れるように動くアニメーション。最初はロトスコープかと思うぐらい、メインキャラ出なくても動くのでこれは凄いな、とシンプルに思います。

2.クリス・バック&ジェニファー・リーなら

 さて、この周年の重要な作品を任されたのが『アナと雪の女王』のクリス・バックとジェリファー・リー。アナ雪はこれまでのディズニープリンセス像に対して自己言及的でありながら、その偶像化されたプリンセス批判に応えた上で爆発的なヒットを生み出した方であり、更にその続編で相対化も図ってみたりと結構大衆に向けたブランドの中なのに、いや中だからこそ自己言及的であり、自己批判的でもある物語を作り出しているという評価でした。

 その上で今回、ディズニーが100年積み重ねてきた願いというものを題材にするにあたっては正直期待を下回ったという他あるまい。このウィッシュという作品で描かれたことは中島みゆきが『宙船』に託した「お前が消えて喜ぶ者にお前のオールを任せるな」で結構な部分が言えてしまうことであり、願いを人に託して願いの無くなった状態でいるのではなく、自分の願いは自分で叶えよう!っていうゴールは願いを預かって定期的に誰かの願いを叶えてあげる魔法使いの王様、という設定からは想定の範囲内どころの騒ぎではない。一元的な権力が暴走した時に、「真実」なるものを武器に抵抗勢力として立ち上がることを肯定的に描きすぎていてちょっと危なさすら感じる。更には、無垢な少女が星に願ったら星がそのまま降ってきて助けてくれる、というやってきた何者かに対する無謬性とかも結構危険というか、物語としても便利に使いすぎているし、テーマとしてもあやしいっていう。

 クリス・バックジェニファー・リーが願いを描くんであれば、各々が願い=欲望というものを取り返した果てに訪れるコンフリクトの部分をもっとフォーカスしてくれて、その上での何らかの理想形を提示してくれるのではないかということを期待していたんですね。単に奪われたものを取り戻したからオッケーではあまりにもではなかろうか。

 意地悪な見方をしてしまう。現在進行形なこととしてイスラエルに対するアメリカっていう構図が、アーシャに対するスターっていう見方すら思えて、正直居心地の悪さもあった。ディズニー自体が戦争と無関係で過ごしてきたわけじゃない。むしろバッキバキにプロパガンダアニメーションを作ってきたことは事実だ。そこの歴史や現在進行形の世界を踏まえずに自社の良い歴史だけを踏まえて進んでいくことが、この監督なら出来るんだろう、とちょっと信じていただけに残念だ。

 

 なんか書くとこが無かったんで最後に追記。生田絵梨花さんは期待通りでしたが、ヴィラン役の福山雅治は歌ったらただの福山雅治でした。他の人とのクオリティ差を考えるとミスキャストかなぁ。