抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

あの頃君は若かった。は?「プロミシング・ヤング・ウーマン」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 珍しくTOHOシネマズ日比谷での先行上映に行ってきました。先行上映って、何を基準で決めてるんでしょうかね。

Promising Young Woman (Original Motion Picture Soundtrack) [Explicit]


WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

(以下ネタバレ有)

 

1.「前途ある有望な」のは誰

 本作は、医学部生だったが中退したキャリー・マリガン演じるカサンドラ、愛称キャシーが世の男たちに天誅を食らわせていくリベンジムービー…というと痛快なジャンル映画を期待したくなりますが、それは脚本賞とってますからね。そんなシンプルな話では勿論ございません。彼女は男たちに酒を飲まされてレイプされてドロップアウトした親友のニーナの敵討ちとして、そのヴィジランティズムを発揮して夜な夜なバーで酔ったふりして男をひっかけては、喉元に刃物を突き付けるタイプの世直しをしているわけです。

 んで、主犯格の男がロンドンから戻ってきた&結婚する、という話を聞いて加害者たちへの復讐を開始。告発を無視した旧友、事務長、相手方の弁護士、と丁寧に復讐しに回っていきますが、その方法もダイレクトアタックというよりは、同じ目に合わせちゃる方式。ニーナの名前をちゃんと憶えていた弁護士さんは赦しを与えますし。勿論、劇中最初の天誅を食らわせた帰り道に工事現場の連中に野次られて睨み返すあたりからも、女性に対するナメた態度に誅罰を下すタイプなのは間違いないんですが、ターゲットに女性も含まれるし、シンプルな女性エンパワーメントじゃないのかな、とも思います。

 胸糞悪いのは、事務長の口からでた「疑わしきは罰せず」「前途ある有望な若者の未来を潰すわけには」ですよね。は?中退した成績トップ(勿論成績トップじゃなかろうと)の前途ある有望なニーナはどうなんねん?加害者の未来を守るのも大事なことは十分承知の上ですし、司法制度上疑わしきは罰せずは絶対です。が、まあ特に日本にいると思うことですが、疑わしきは罰せずの発生に明確に権力勾配があるじゃないですか。弱きものほど疑わしき段階で罰され、偉いほど罰されない。そして、この医大においては、男性というだけで強きものに置かれている、という訳ですよ。クソですね。東京医科大学順天堂大学で実際に女性というだけで点数差別を受けていた事例が日本でも近年明らかになった訳で、そこを想起せずにはいられませんでした。

2.生きてる限りは通じないぞ、その言い訳

 劇中、親の小言より聞くのが「悪い奴じゃない」「良い奴」「ガキだった」みたいな類のいい訳です。無論、これも「は?」(cv.宇垣美里)の対象です。世の中往々にして、ある一定の集団内において悪くない奴っていうのは、集団の外に対しては悪い奴だし、まして自分のことを良い奴って言えるってどんな神経なんでしょう(自己肯定感の低い文章)。大学時代のことを「ガキだった」で済まそうとするのも愚かですよね。ガキだろうと相手の人生奪って許されると思ってるのか問題、そうじゃないならお前、同じ年齢の「ガキ」相手にそういうことしたんだぞ、と全方位で反論してやりますよ。この辺の言い訳は、単に女性をレイプしたことだけじゃなくて、世間一般の「若気の至り」とかいって不良自慢している全人類に向けて唱えたい呪詛でございます。まっとうに生きてきた人間より、一旦迷惑かけてから更生した人間の方が偉いのはおかしいんだ!(持論)

 っていう論点を使っていくとですね、キャシーも復讐という名の正義の旗の下に暴力やらなんやら振るってるやんけ!となってしまう訳ですが、これはリベンジ映画・一種のヴィジランテ映画。なんだったら、キャシーはまだまだ大学生時代から時計の針が進んでいないので「ガキ」なんだから、許さなきゃね☆っていう逃げが打てます。

 最終的には、キャシーは誰の命を奪ったりはなく、自分を殺させててニーナに対する主犯格たちを司法の手に委ねるわけですが、この劇中においては一番の復讐に成功しているでしょう。即ち、これ以降の彼らの人生の主語は「キャシー」になってしまう。キャシーを殺した、キャシーの親、キャシーの元恋人。ニーナがかつてニーナとしての主語を奪われたことを恨んでいたキャシーにとってはこれ以上ない成功でしょう。正直言ってしまうと、車の止め方、行き先を知る彼氏、胸に光る片割れのネックレス、で死せる孔明生ける仲達を走らす、をやるんだろうな、とすぐにピンとくるので脚本賞貰えるほど凄い脚本なのかは良く分からんですが。見せすぎかなーと思うんですけど、どうなんでしょう。