抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

もう一杯!!「アナザーラウンド」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回はアカデミー賞の国際長編映画部門だけでなく、監督賞にもノミネートされるというちょっと珍しかった作品。タイトルの「アナザーラウンド」は英語でおかわり!とかもう一杯!という意味らしいので、そのまま記事のタイトルにしました。

 普段は試写会で見れた作品は公開日まで寝かしておくんですが、Filmarksの試写で見た場合、アプリに早めに感想を載せなくちゃいけないので公開します。という訳で、こっから先は自己責任です。

Another Round [Blu-ray]

WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

(以下ネタバレ有)

1.飲んで飲んで飲まれて飲んで

 えー、この作品は基本的に飲酒しまくりです。とにかくよく飲む。しかも飲んでるのが、超絶イケメンオジサンのマッツ・ミケルセンを中心とする4人組なので、飲んでいるのが絵になる。ずるい。同じように飲んでも私はそんなに絵にならない。ちくしょう。

 だが、楽しく中年おじさんたちが酒を飲んでいるだけなら、TBS1ラジオ「アフター6ジャンクション」でパリッコさんのチェアリング特集でも聞いて想像すればいい話で、事はそう容易く終わらない。彼らは、血中アルコール濃度が0.05%だとベストなパフォーマンスが出来るのでは?という聞きかじった論文の話を実践してしまう。途中、『有害な飲酒』について書いている精神科医の話を聞いてくる展開もあるが、それは無視されてしまう。しかも、彼らの職業は教育に携わっている。即ち、学校の授業を飲酒して行うのだ。うっわ、ありえねぇ。

 ところが、これが非常に上手いのが、飲酒を始める前にマッツ・ミケルセンが保護者に呼び出されて詰められるシーンがあるのだが、ここがいい。あんたの授業じゃテストでいい評価を貰えない可能性がある!という不安をぶつけられるのだが、その伝え方が保護者を大量に引き連れた上に、生徒は授業中の態度の悪さを棚に上げるどころか、この会談の場ですら、机の上に座って足をプラプラさせてやがる。こんな連中が相手になっちゃうと、そりゃ酒飲みたくなるわ、みたいな気持ちが痛いほどよくわかる。異論がある方は、保護者から「お前の授業が息子に適格か分からないから見学させろ」という連絡を受けてください。

 ってことで、ちょっと1杯ひっかけた状態での授業に、抵抗を無くした状態で授業させちゃったら、これが非常に好評。っていうか、贔屓目に見ても絶対にそっちの方がパフォーマンスが良いまである。あ、サッカーのコーチ、運動は流石に飲酒してる状態ではまずいと思います。そこは話が変わる。調子に乗ってみんなでサッカーしてるけど、素直にハムストリングとかやりますよ。

 そんな具合で調子乗って飲んでいたら、見事にバチがあたる中盤。飲みすぎて家族からも見放されたり、コーチは飲酒が学校にバレて自殺するしで大変。明らかに飲みすぎはあかんのです。ただ、しっかり言っておきたいのは、この映画は飲酒を否定している訳じゃなくて、なんでもやりすぎは良くないね、っていう感じであって、その「酒」という要素が「薬」とか「お金」とか「SNS」とか「孤独」とか、あらゆるものに代替可能だと感じたんですよ。その中で、教育現場との差で「酒」という概念が選ばれただけ、みたいな。勿論、製作過程の話を聞けばそうじゃないのは分かるんですがね。

2.人生にもう一杯!

 この映画の核は「中年の危機」。主人公も含めて、人生も中腹を迎えて家族との関係は曖昧、っていうか下り坂。職場での評価もパッとしないし、なんなら毎日変わらない、っていう『Mr.ノーバディ』でも描かれたテーマは完全に一致。

 一方で、今回の映画では、学校という舞台を準備したことで非常に対照的に見えるのが、前途有望な若者たち。彼らと同じ飲酒シーンのはずなのに、彼らのほうが非常に輝いて見える。冒頭の湖を1周しながら酒飲むレースは、何故かとてもくだらないのに輝いて見えた。医学部志望の学生も、酒に助けられたし。

 それでも、彼らの人生はまだ終わらない。いや、終わってしまった方もいるが、むしろ改善したパターンも提示された。中年の危機を迎えたとしても、まだ中年だ。劇中のセリフを借りれば、「私たちは100歳じゃない。まだ間に合う」。さあ、今からになっていても、人生のもう一杯を!