抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

地獄の灯台守「ライトハウス」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回は白黒ですね。白黒映画を映画館で見るのって、『ローマの休日』以来ですかね。なかなか見ることは無いですが、モノクロは映画館の方が映えるのは間違いないですよね。

The Lighthouse [Blu-ray]

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

(以下ネタバレ有)

 1.男二人、地獄の灯台

 本作は『ウィッチ』で名前を上げたロガート・エガースの監督作で2019年に全米公開。『The Lighthouse』という状態で一体何年クリップされているんだろう、というぐらい放置されていましたが、このほど目出度く劇場公開決定。『ウィッチ』も鑑賞して準備して臨みました。

 名を上げたにも関わらず、本作はキャストほぼ2人の荒療治。ウィレム・デフォー演じる老年の灯台守トーマス・ウェイクとロバート・パティンソン演じる新人灯台守イーフレイム・ウィンズローだけで成立しているのである。グリーンゴブリンと新バットマンで一体何をしているんだ、DCとマーベルのコラボか、などと言いたくなってしまうが、もうほとんどの俳優はどっちかには出ているような気もする。

 まあこのウェイクが非常に嫌な奴で。灯台守の最も重要な任務たる、灯台の灯を切らさない仕事のみを宣言し、その領域にはウィンズローは立ち入ることを許されない。ウィンズローに貯水槽の掃除やら、油が切れたやら、居住スペースの掃除やら、いわゆる雑用を全部押し付ける。ウィンズローもウィンズローで最初の晩の乾杯を断ったり、あんまりうまくやっていく気が無さそうなので、両者は常にジリジリと対立している。勿論、これは男が2人になっているのに、片方が仕事場を持ち、もう片方が家事のようなことを強いられる夫婦の役割負担の話であり、それはつまりそうまでして守りたい男らしさ、とはなんなのか、の寓話なんだろう。だから、ウェイクの居場所である灯台は常に高い位置で両者は食事の時こそ同じフロアにいるが、ほとんどをウェイクをウィンズローが見上げる形で描かれている。

 4週間という任期だったはずなのだが、ウィンズローがカモメを殺してしまってから風向きが変わり、嵐がやってきて、2人はそれ以降いつ終わるかも分からない仕事をしなくてはならなくなる。この無間地獄感は、画面がモノクロであることで際立ち、永遠を感じさせ絶望を思わせる。そこにクトゥルフを思わせるバケモノの幻覚が見えたりするんだから、もうこっちはわけわかめである。あとずっと定期的にギュイーンって音がしているのも非常に嫌である(誉め言葉)。おそらくは定期的にしていることから、灯台の音だと思うのだが、そういう周期性のある音というのは、逆にそれがずっと続くことを印象付けて、この映画の地獄永続感とマッチする。

 大体、この連中は途中から完全にアルコール依存症になってしまって、灯台の灯に使う灯油を飲みだしているレベルなので、どこまで本当に起きていることなのか、すっかり信用できないのだが、それでも灯台を求め続けて最後に転落死したウィンズローは家事負担を押し付けられて男性性に文字通り目が眩んで失敗した、という話でいいんだと思う。思うのだが、ストーリー上実は、ウェイクがまともなやつだったパターンもあり得るのかもしれない、と思ったりも。本当にウィンズローの前任が彼の言うように狂って亡くなってしまったから、二の舞を避ける為にふるまったのにやっぱりバッドエンドだったよパターン。それにしてはお前の口が悪すぎるだろ、という誹りは受け入れてもらわねばならないが。彼は男性性に固執していたのではなく、悪い男性性を引き受けていた、という解釈で、男性性の悪い部分を相手に渡さないための方法を間違えてしまい、結果として男性性の権化になっちゃったというか。