どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。
いよいよ明日はアカデミー賞授賞式。本来なら日曜日はブログを更新しない日なのですが、授賞式は日本時間の朝からだったはずなので、いつも通り12時半に更新してるとバカみたいな話になってしまうので、その前日にアカデミー賞の話を。
基本的にはアカデミー賞の候補に入ってて、鑑賞可能な作品、特にドキュメンタリーとアニメーション、短編といったおまけ扱いされかねない中にも良い作品があるんだよ!という思いのもと、取り敢えずノミネート作品でネット上に作品が上がっているものを探してみた感想です。配信映画の感想を上げてないから、mankとか映画館行ったのにブログに感想上がるの初めてや!
なお、本日19時からは物語る亀さんのYoutubeアカウントにてアニメについて語る配信アニならが放送です。基本的には名探偵コナンやバンドリ!、テレビアニメの話になりますが、時間が余ればアカデミー賞の話もするかもしれません。
主要部門
マ・レイニーのブラック・ボトム
WATCHA4.0点
Filmarks4.1点
話を噛み砕けば、若手のトランペット吹きがいきがり、ブルース歌手マ・レイニーがそれ以上にゴネる、というスタジオでの1度の収録だけの話なのにずーっと話を聞いていたくなる不思議な作品だった。特にマ・レイニーは完全善でもないのにどこかついて行きたくなる胆力。
チャドウィック・ボーズマンのトランペット吹きが滔々と語る彼の歴史は、白人に対して抗うことを示してきた黒人の歴史そのものであった。
サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
ごめんなさい、まだ見れていないので見次第、感想を書き加えます。
シカゴ7裁判
WATCHA4.0点
Filmarks4.1点
ベトナム戦争下での反戦運動で捕らえられた7人の裁判を描く法廷もの。
開幕から新たにニクソンが就任した共和党政権が無理筋な言論弾圧を試みていることに間違いはなく、また判事がもう法廷の私物化やら偏見やらで酷い。繰り返される警察との衝突の映像は、ああ未だに、というより今まさに目撃している光景と変わらない、という地獄。劇中の言葉を転用すれば、PCの画面の中は60年代だったが、その外では2020年だった。的な。
そこに対して、決して被告たち7人も清廉潔白・一致団結ではなくそれぞれに違った理由・主義主張で反戦であり、そこには対立もある。現場で何が本当に起こったのか、それは途中まで明かされないが、それによってわかる塩梅はとてもいい着地だったように感じる。もっと政権側の断罪に走ってもいいところを、戦没者への敬意で締めくくるのは、エディ・レッドメインの役の成長という点でも、物語的な締めにも良い。っていうか、多分自分も同時代にいたらヒッピーに対してちょっと見下すタイプのインテリ層の立場に立つ気がするので、彼に割と感情移入していた。シニカルに皮肉言うより、バカ真面目に原理原則を重視するタイプなんだよな…。
アーロン・ソーキン監督作ということでとにかくセリフの応酬だが、テンポよく見ることが出来るのは間違いない。
Mank/マンク
WATCHA3.5点
Filmarks3.3点
劇場で見て、配信でも再度確認しました。
市民ケーンと似た構成で回想をぶち込みながら、市民ケーンを執筆するマンキウィッツを描く。
モノクロだけど、フィルムっぽさよりはデジタルのモノクロって感じだった。
うーんだけど面白いかと言われると…イマイチだったかな…かなり当時の状況を頭に入れてないとついていけない。
結果的に市民ケーンの凄さ・素晴らしさをかえって思い知らされることに。
長編ドキュメンタリー部門
ルーマニアの医療腐敗を描いて国際長編にもノミネートされた「collective」がめちゃくちゃ気になるが、タコが優勢らしい。よりにもよってタコですか。
ハンディキャップ・キャンプ
記事UP現在未鑑賞ですが、鑑賞予定。
タイム
WATCHA3.0点
Filmarks3.1点
16歳で結婚したが、武装強盗を働いたために夫が60年の刑を宣告された黒人女性のドキュメンタリー。自身も12年刑に服している。犯した罪に対する刑罰の釣り合わなさや、仮釈放も認められないもどかしさ、黒人に対する司法サイドのシステム的な差別なんかをホームビデオなんかを通して20年追っている。ただ、実際に夫がどれだけ刑務所で酷い扱いを受けているのかとか、仮釈放とかの取り合わなさが今回に固有の事例なのか、白人に対してもああなのか、みたいなところがあんまり描かれないので、そこはアメリカに住んでいないと危機感の共有が出来なかったな、っていう感じ。
オクトパスの神秘:海の賢者は語る
WATCHA3.0点
Filmarks3.1点
タコに人格を見出して語るドキュメンタリー。それはドキュメンタリーなのか。対話できない相手と対話できた気になるのは、エクス・マキナのようなAIモノにもよくある話だが、タコでそうなるとは。
ボンベもスーツも気分的にやだ、と素潜りをしていたわけだが、後半、そのせいで大切な場面を息継ぎで見逃す。それは撮影者として向き合えていないような気がした。
長編アニメーション部門
奇跡的にウルフウォーカーにとって欲しい。ソウルフルワールドは大嫌いなので。
フェイフェイと月の冒険
WATCHA4.5点
Filmarks4.3点
美女と野獣などを手がけ、既に短編アニメでオスカーも手にしているディズニーの名アニメーターの初監督作。スタジオは中国のパールスタジオだが、元々はドリームワークスなんかが共同で作った会社なので技術力十分。
そのため、今から映画館でこれをディズニーの新作ですよ!といってかけたら恐らくほとんどの人が引っ掛かるだろう。スクリーンで見れないのが勿体ない!
短篇baoを思い起こす月餅作りから始まり、果ては月への冒険へと進む愉快なファンタジーはミュージカルシーンを挟みつつ、喪失から立ち直り、前へ進むどストレートな成長譚。嫌いだと言っているのに義弟のエッセンスを取り込んでいたり、ナツメ入りの義母の月餅を口にして、気付いてないけど受け入れてる。あとはそれに気付くだけなんだ!という演出、そしてフェイフェイと鏡像関係になる月の女神。なるほどよく出来ている。
恋愛要素を排除して上手くいった泣きたい私は猫をかぶる、に近い印象。ワンダーな月の世界と、現実と地続きな地球の書き分けが上手く、月での相棒ゴビが愛おしい。
ソウルフル・ワールド
WATCHA3.5点
Filmarks3.6点
脳内の感情をキャラクター化してドラマに落とし込んだ傑作の「インサイド・ヘッド」のピート・ドクター監督が次に描いたのは生きること。
生まれる前の個性の形成を「インサイド・ヘッド」同様戯画化しておかしく見せたり、魂のsoulと音楽のsoulをかけて入れ替わりコメディを見せる。
みんな大絶賛している中で申し訳ないが、うーん、そこまで。勿論、見るタイミングで評価は変わると思うのだが、「生きる」ことの答えを簡単に提示しすぎというか。考えるきっかけレベルなら分かるんだけど、じゃあ生きる意味を感じていないのに生きている人ってなんなんだろう?と思ってしまう。日常が素敵、生活していることこそ生きる意味、じゃあそこに彩りを感じない人は?ディズニー&ピクサーの夢至上主義は、それ以外にないのか、とそろそろ思わずにはいられない。そう考えると、日本の日常系というジャンルはとても優れているのかもしれない。
大体今日から人生が変わる日だろうと正確に死んだんだからそれを受け入れなきゃ。突然死ぬから生は美しいんだよ。死ぬ覚悟もないやつに生きる覚悟なんてない。
あと、生前に性格が決まってしまう運命論的な考え方も、個人的には人格形成は後天的な環境要因だと思っているので相容れない。とってもわかりやすく、楽しく見れるからこそ結構危険な気がする。なんだろう、まじめな顔してディズニーが教育産業に介入しようとしているような。22番に足りなかったピース、生きる覚悟。じゃあ味も匂いも感触もないところで22番以外はみんな生きる覚悟を手に入れてたの?それって生きる覚悟なの?
短編アニメーション部門
「愛してるって言っておくね」が圧勝の気配らしいですが、Operaがとても好きでした。
Genius Loci
WATCHA3.5点
Filmarks3.6点
監督はAdrien Merigeau(読めねぇ)。カートゥーン・サルーンで『ブレンダンとケルズ』作画『ソングオブザシー』の美術監督を歴任。
ピカソ的なキュビズム、マグリットみたいなシュールレアリズム風、版画風、印象派に折り紙、ステンドグラス。近代美術を一通り網羅してくる。
そうやって多様な表現技法で描かれのはめちゃくちゃ抽象度が高いものなので、マジで何やってるのか混乱する。1度見ただけでは分かるまい、ってかまだ分かんない。
題名であるゲニウス・ロキ、とはその土地の精霊とかそういう意味らしい。
愛してるって言っておくね
WATCHA4.5点
Filmarks4.3点
12分の短編アニメーション。
台詞はなく、デッサンのようなタッチで描かれる物語は思っていたより重く、辛い。
台詞はなくとも心情を丁寧に物語ってくれる影のような存在が愛おしくもあり、涙を誘う。
この短時間でここまで心を動かされるとは思わなんだ…
Opera
WATCHA4.0点
Filmarks4.0点
監督はエリック・オー。マレーシア生まれ、ピクサーで『ファインディング・ドリー』のタコの作画、『インサイド・ヘッド』『モンスターズ・ユニバーシティ』などに参加後、トンコハウス『ダム・キーパー』の作画監督でアカデミー賞短編アニメーション部門受賞。
壁画か、あるいは絵画が動いている。
それはまるで昼と夜でもあり、天と地でもあり、具体と抽象でもあって。たった8分ちょいの映像なのに、ああ自分は全く分からないんだろう、と打ちのめされる。
短編実写部門
ほぼ100%隔たる世界の2人がとるんだと思います。
隔たる世界の2人
WATCHA4.5点
Filmarks4.3点
ある女性の部屋で目覚めた黒人男性が、ただ犬の待つ家に帰りたいだけなのに殺され続けるタイムループもの。言ってしまえば、彼が死ぬことがこの世界線の収束点であるが、それが常に今も命の危機に置かれ続けているアメリカにおける黒人差別の原点であるので実にキツイ。話し合った結果、分かり合えなくても、違うことを理解できるんだ、に見せてのざーんねんはもっときつかった。
白い自転車
WATCHA4.0点
Filmarks4.1点
たぶんほぼワンカットで話が進むイスラエル映画。ある路地で見つけたのは1か月前に盗まれた自分の白い自転車。それを返してもらおうと警察に電話したり、町のおじさんに鍵を切断する機械を借りたりするのだが、現在の持ち主は泥棒から買ったエリトリアから来た不法労働者(あるいは難民)だった。ただ自転車を返して欲しかっただけなのに、彼は妻子ある身で警察に連れていかれおそらく国外追放。同じような身分の労働者がいたであろう工場はおそらく廃業に向かう。でもたった250シェキルをけちるな!と工場の上司は怒っていたが、日本円だと1万弱。盗まれた人間が何故払わなくてならないのか、そしてアンタの会社はそれ以上にケチっていないか?と痛切な皮肉を感じる。
短編ドキュメンタリー部門
多分ラターシャが受賞すると思いますが、他のに取ってほしい。できれば「Do not split」だけど、中国のことを考えると不可能なので「colette」がいい。
Do not split
WATCHA4.0点
Filmarks4.2点
コロナですっかり忘れてしまいがちな、香港民主化運動の最近に密着した作品。この映画ののちに、国家安全法が施行され、選挙制度は骨抜きになり、民主化は確実に遠のいている。劇映画でも見られないようなドローンで空撮した対峙するシーンや、カメラマンがもろに警察に追われるシーンなんかはリアルな恐怖が。日本に生まれて良かった、で済ませたくないが、これを中国からの反発覚悟でノミネート5本に入れたことを大きく評価したい。映像的には受賞して欲しい作品だが。
ラターシャに捧ぐ〜記憶で綴る15年の生涯〜
WATCHA3.5点
Filmarks3.6点
アカデミー2021短編ドキュメンタリーノミネート。
ロス暴動の遠因となったとも言われる15歳の黒人少女殺害事件のドキュメンタリーだが、事件を追うのではなく彼女個人に迫る。事件の被害者としてではなく、ひとりの人間として扱うのだ。
ただお店に入るだけなのに殴られたり、暴言を浴びせられたりを覚悟しないといけない人がいる、そんな世の中は本当に嫌だ。間違っている。BLMの流れを考えてもコレが取るんだろう。
A Concert Is Conversation
WATCHA3.5点
Filmarks3.5点
『グリーンブック』で作曲を担当した黒人作曲家、クリス・バワーズが癌を患ったおじいちゃんの生涯をインタビューしながら聞く。まさしくカンバーセイション、会話で続くので、結構雰囲気で英語を聞いてたので理解が間違ってるかも知らんが、シンプルにいい話でおじいちゃんへのラブレターって感じだ。
Colette
WATCHA4.5点
Filmarks4.4点
ナチスに占領されたフランス。レジスタンスに加入したが、逮捕され強制収容所で死を迎えたジャン・ピエールの妹コレットが、彼を研究する学芸員とともに彼の死の地、ドイツを訪れる。70年も忘れようとしていた現実に向き合う勇気と、風化させないための研究の意義、そして語り継ぎとこれを映像に残す意味しかない。
フランス語の英語字幕なので多分理解が1番浅いがそれでも胸に残る。ストーリー的にはこれに取って欲しい。