抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

タイムループって抜け出さなくて良くね?「パーム・スプリングス」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 どんどん行きましょう4/9公開作品。ポスターで完全に興味ないラブコメだと思っていたら、タイムリープもの、しかも好評ってことで鑑賞に向かいました、「パーム・スプリングス」の感想です!年間ベスト10入れたい気がする!

Palm Springs: Original Motion Picture Score

WATCHA4.5点

Filmarks4.6点

(以下ネタバレ有)

 1.リーディングシュタイナー持ちが仲間同士なら?

 さて、今回のタイムリープは11月9日に閉じ込められます。主人公となるのはこの日に結婚式を行うタラの姉・サラ。かなり雑に言ってしまえば、彼女がひょんなことからタイムリープに巻き込まれる、という話なんですが、面白いのはこのタイムループに囚われたのが彼女1人ではない、ということ。結婚式で司会を務めたミスティの彼氏、ナイルズもまたループしているのだ。なんなら、何周目かのナイルズとうっかり意気投合したせいでループに巻き込まれたおじいさん、ロイというトリックスターもいる。そう、何周目か、なんて重要なことを書いたが、サラがタイムループに巻き込まれる遥か前から、つまり映画が始まる前からナイルズはタイムループしているのだ!

 前情報でそこまでは仕入れていたので、まず始まりはナイルズ視点の時点でループとなる基本情報(日にちとか、開幕のトリガーとか)が提示されつつ、どうやってサラが巻き込まれたのかも認識できるし、彼がループにすっかり飽きているのも分かる。ここで我々とサラにとっての一周目=ナイルズにとってのx周目を見せているので、サラの2周目以降がサラ視点になっても楽しく見ていられる。

 さて、この展開はありそうで無かった状況だ。タイムループにすっかり慣れた映画およびアニメファン的には、敵のあいつもループしていた!とか、敵のあいつも異世界転生していた!っていうのは、よくあるんですけど、それが味方同士=秘密の共有ができてそのままラブコメにできるじゃん!っていうのは初めて見た。タイムループってすっかり手垢のついたジャンルだと思っていたんですけど、まだ新しい手を見れるのか!っていうワンダーがありますよね。んで、こういう風にシュタゲで言うリーディングシュタイナー(ループ前の記憶を引き継げる能力)持ちが2人いるとどうなるか。時間は円環構造に囚われているのに、2人の関係値としては不可逆的に蓄積していくという面白い状態になるわけです。

2.タイムループは抜け出すべきものなのか

 本作における命題は、まあこれです。

 タイムループに囚われた現状からどうにか脱却したいサラ、色々試した結果ダメだったのですっかり諦めているナイルズ、何が何でもナイルズに復讐したいロイ、という3者3様だったのが、繰り返される時間の中で変容し、ロイは家族といる幸せな一瞬を永遠に過ごす選択をし、ナイルズはサラとならタイムループから脱出できなくても一緒に入れればいい、なんて方向に考える。

 永遠に続く時間の中で、永遠に時間を共にできると思う人が現れた時、その永遠から抜け出す必要ってあるのでしょうか。こーれーはめちゃくちゃ悩む命題。これまでは一人で同じことを受け続けているから辛かったり、逃げたい事象があるのに繰り返されるから抜け出すべきだったりするわけですが、気持ちを分かち合える存在がいて、別になんにも嫌なことが待ってるわけでもないし、死んでもノーカン。うっわ、それって別に抜け出さなくていいじゃん、ってふっと思っちゃっておかしくないですよ。っていうか、自分なら抜け出さないかもしらんな、と思ってしまう。少なくとも、溜まっている本・映画・ドラマ・アニメをぜーんぶ見てしまうまでは時間っていくらあっても足りないし。見たいやつをぜーんぶ見てしまったら、新作欲しいから抜け出したいと思うだろうけど、そんな都合よくいかないだろうし。

 だから、最終的にそこから抜け出す結論になる最後の告白シーンが実に感動的。ループが繰り返されていることを象徴するような文章が終わらない告白に対して、短く終わらして、なんて言うサラ。最後はピリオドだ、なんて終わらせるナイルズ。ピリオドっていうのは終わる意味でもあるし、periodは期間なんて意味でもあるから有限になるんですよね。無限の時を過ごすより、有限の未来を一緒に過ごしたい、一人で生きるより、二人で死にたい。無限に生きれる状態だからこそ、この決断に純愛度を感じますねぇ。何度も引き合いに出して申し訳ないんですが、『ソウルフル・ワールド』よりよっぽど「生きる」ことの意味を賛美している素晴らしい作品だな、と思います。あと、『ハッピー・デス・デイ2U』的な、ループして知識蓄積するなら勉強して乗り越えよ!という精神が非常に好きです。細かい道理はいいから勉強した、という事実で突破できたことにしちゃう。どうせ金かけたSFできないんだったらそれでいいのだ!