抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

化石は掘らなきゃ出てこない「アンモナイトの目覚め」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 大激戦の9日公開作から、またしても試写で拝見できた作品の感想を。上映後には、シスターフだッド映画として近いところがあるのでは?という『あのこは貴族』の手監督のトークがございました。

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 WATCHA3.0点

Filmarks3.1点

 1.全く違う2人の出会い

 今回出会う2人は、イギリス地質学に名を遺す学者であるメアリー・アニングと化石収集家の妻シャーロット。演じるのはイギリスの誇る名優ケイト・ウィンスレットと若くしてまだオスカーを取っていないことが信じられないシアーシャ・ローナン。あの名手シアーシャ・ローナンであっても主導権を握れない芝居のぶつかり合いは見ごたえがありましたね。

 全く違う階層・ジャンル生き方だった2人が惹かれあっていく映画な訳で、当然2人とも対照的に描かれおりますが、やはり印象に残ったのは2人の指でございます。海辺で19世紀のイギリスの、しかも南部の町の技術での化石発掘。メアリーの指はその苦行を納得させるだけの爪や指をしていて、2人の手が合わさった時のシャーロットの指の細さと色白さっていうので納得が凄いきましたね。メアリーは序盤で全裸をバックショットで見せているんですけど、すっごいスレンダーって感じでもないその体形に意図的に持って行ってると思うんで、そこも凄いな、と。そういう労働者っぽい指でありながら、発掘に伴う繊細さもしっかり持ち合わせている説得力を持たせているのもまた、名優ケイト・ウィンスレットのなせる業でございますね。

 さてさて、ケイト・ウェンスレットの話ばっかりになってる気がするので、シアーシャの話にしましょうか。ここ最近の彼女は『ストーリー・オブ・マイライフ』『レディ・バード』みたいに溌剌な印象が強かったんですけど、それもびっくりなぐらい弱って薄幸!って感じに登場してくるわけですね。それが、メアリーのところで過ごすようになり、高熱を出して1晩看病してもらってから距離がぐっと縮まり、愛し合うように。愛し合うようになってからの激変はプラスの変化のようでいて、夫と2人の時にも見せていた強情さの発露でもあるわけで。そして、それが失敗のもとでもあったわけですが、すべてを準備してメアリーをロンドンに呼び寄せた時のシアーシャは完全に病人のそれではなく、ジョー・マーチとかに近い魅力を見せていましたね。

2.メアリー・アニングの二次創作として

 ご覧になった方の感想を見ると、『燃ゆる女の肖像』が非常に近い映画だったようなのですが、ごめんなさい、見ていないのでね。という訳で想起したのは、今年配信されたネトフリオリジナル映画『時の面影』。こちらはサットン・フー遺跡を発掘したアマチュア発掘家の話でしたが、本作も同様に埋もれた業績を掘り起こすような意味があると思うんですね。

 化石はそこにある。でも、自分に能力がなければそこにあることは気づけない。また、メアリー1人では、あの大きな頭蓋骨は発掘できなかった。そのとき、諦めない気持ちをもったり、共に運んでくれる人がいたから。そういう感じの描き方。

 ただ、メアリーが彼女自身の偉業として達成した歴史的事実の前で、その為には誰かと恋愛していたに違いない、的な切り口なのは少し違和感があるのも事実で。だから、最後にメアリーがロンドンに呼ばれて拒絶するのは、メアリーにとって何が大事だったのか、を示す点ではとってもいい終わり方だったとは思うんですが、どうもこうしっくりこないところがある。その終わり方にするんだったら、わざわざ生涯独身であったことから架空の物語を創出してまでしなくても、彼女の地質学者としての業績や生き様のすばらしさを語ることは出来たような気がするんですよね…