抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

そのリングにある青春「BLUE ブルー」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回は緊急事態宣言下にあるにも関わらず、ちゃんと集まっての試写会を開催していただいたFan's Voiceさんのおかげで拝見できた吉田恵輔監督作品。『犬猿』『ヒメアノ~ル』で大変に嫌な思いをさせてくれた(誉め言葉)監督のボクシング映画。さて、どうなることやら。と思いましたけど、『ロッキー』も『百円の恋』も見ていない私ってボクシング映画偏差値低すぎません?

f:id:tea_rwB:20210318013729j:image

 

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

(以下ネタバレ有)

 1.3者3様のボクシング道

 本作のメインは3人(公式には木村文乃を絡めた三角関係っぽい感じですが)のボクサー。本編開始時点ではただのゲームセンターの店員で、バイトの同僚を振り向かせる為に言った口から出まかせの為にボクシングを始めた柄本時生演じる楢崎。楢崎をはじめとして、昼間はトレーナーとして働くちっとも勝てない瓜田by松山ケンイチ。そして、東出昌大が演じる瓜田の後輩でとにかく強い小川。この3人のそれぞれが歩むボクシング道が吉田作品にしては珍しく爽やかめに描かれております。

 いちばん分かりやすいのは、はじめてモノのルートを通ってボクシングがからきしのところから、なんか流れでプロテスト、そして瓜田の敵討ちにまで打って出る楢崎。まあ一番わかりやすく、かつおいしいですよね。

 一方で、瓜田はちっとも勝てない、小川はパンチドランカー気味という設定が付与されているのでちょっと特殊なボクシング道かもしれません。瓜田の幼馴染の千佳が小川と付き合っているということもあり、両者がこれもわかりやすく対照的に描かれていますが、これも筋としては分かりやすい。とにかく勝てばいいという思いで、病が日常を侵食しながらもリングを降りられない小川。ちっとも勝てない上に、試合後も笑っている、勝敗に拘泥しない瓜田。いわば、リングにおける勝敗以上にボクシングを楽しんでいる瓜田の方が勝っているのだ、的な話な訳ですよ、実にわかりやすい。いつの間にか姿を消して不在の中心になっていた瓜田のシャドーボクシング姿が印象的なラストです。勝負の結果じゃなく、リングに上がったその人にしかわからない魅力っていうものがあるんでしょうね。ジム感覚で来てる主婦連中には理解できてなさそうでしたし。

 ただ、分かりやすい話なだけに、演者の力量がやっぱり試される訳で。『聖の青春』でも見た対決となる松山ケンイチ東出昌大(そういえば、聖の青春も松山ケンイチは将棋に夢中なタイプだった)は、流石の実力。何かに夢中になる松山ケンイチの笑顔とちょっと外れているタイプの東出昌大はわかっているけど絶品なキャスティングですね。

2.良くも悪くも吉田恵輔

 単純な話だけに、結構どう見せるかが大事なわけですが、そこで効いてくるのが吉田恵輔作品である、という事実。序盤に小川の爆弾を設定しておくことで、いつそれが爆発するのかという緊張感、そしてどーせ碌なことにならないだろうという予断。これで話は持たせられる。まーた、別に大したことなかったんですけど、ロードワークの時に小川が霧の向こうに走っていく、みたいな不穏なシーンをぶち込んだりしてるわけですよ。ピンク髪の練習生がスパーリングをしただけで再起不能になってしまったり、そういう危なさを提示してくるから油断ならない。

 あとはブラックユーモアですよね。基本的には柄本さんの楢崎が担当していることが多かったですね。最初の中学生相手のイキリといい、ボクシングやってる風目指す宣言、プロライセンスが取れたら見せびらかし、結局元モデルの同僚に取られたが、彼らの激しいキスからの彼が包茎治療のモデルだったことを暴露する、ああいうの本当に嫌らしい。あと地味に好きだったのが、瓜田が千佳の働く美容院に行った際に、顔のシートがズレて何度も戻すとこですね。ああいう地味なのがたまらんです。
 ただ、吉田恵輔監督の癖は悪い方にも出ておりまして。まあ手数の多さとしつこさですよね。小川のタイトルマッチでの反芻とか、瓜田が見つめる中での楢崎の試合でこれでもかと試合と見つめる瓜田を切り返しで映す。後半に行けば行くほどまあ万事がこんな具合なのは、数本しか見ていない段階で言うのは申し訳ないですが、吉田恵輔監督のあまりよろしくない癖に感じました。