抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

襲った相手がマ・ドンソクだった「悪人伝」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 また韓国映画。シネマート新宿にお世話になりっぱなしでございます。英題良くないですか?コレ。ハリウッドリメイクなんて話も小耳にはさんだので、楽しみな作品でもあります。

The Gangster, The Cop, The Devil [Blu-ray]

 

WATCHA4.0点

Filmarks3.8点

(以下ネタバレ有り)

 1.ヤクザと刑事、禁断のタッグ

 まあ何といっても本作がマブリーことマ・ドンソクのアイドル映画なのは間違いないですが(?)、その魅力は極限に正義と悪が小競り合いをする、メンツが大事な男たちの禁断のタッグにあるでしょう。

 まずは刑事チョン・テソク。現場に向かう途中でさらっとヤクザの違法賭博現場に勝手にがさ入れしてそこでとっ捕まえたヤンキーのバイクで現着という荒々しさ。しれっと誘拐事件と連続殺人で大小つけちゃってますが、基本的には法による正義を求める刑事としての矜持を持った男。

 タッグを組むのは今や韓国が世界に誇るアイドル・マブリー演じるヤクザの組長チャン・ドンス。連続殺人鬼に狙われて唯一生還したことから、メンツを潰された復讐に犯人を追うことになります。開幕サンドバックin人を怒涛の連打は常人なら真っ青。まじでマ・ドンソクだけ人類で突出したHPとATKを持っていると思うので、サンドバックの中の彼はあれで半殺しなのは奇跡だと思います。

 こいつらが共闘、と言えば聞こえはいいですが、互いを利用して犯人を見つけ、最終的にはチョン刑事は法的制裁を、チョン・ドンスは私的制裁を加えるのがゴール。いわばゴールが違うが過程が同じが故の呉越同舟。だから、犯人発覚後の出陣は嫌が上にも盛り上がる。互いに共闘する理由が必要だが、少なくとも刑事側は上の許可が出ずに広域捜査に持ってかれる展開で無理はない。ヤクザ側に利点があるかはちょっと怪しい。車に似顔絵にちょっと情報提供しすぎかも。

 こいつらのタッグをなんで信頼できるかって、それはもうフード理論なんですよね。ヤクザ仲間のホ・サンドと平手打ちされまくるマブリーの会食相手はくっちゃくっちゃ五月蝿く食べるが、マブリーはそんなことない。まあ酒に歯を折って入れる程度には残酷だが。そして1番の凶悪、今回の犯人も乗り込んだトラックにあった飯を吐くように食う。比較的にマブリーは最悪ではないことが分かるので、刑事との共闘でも信頼できるし、終盤法廷に立つのもムリを感じさせない。っていうか、この法廷登場シーンはもはや人類が上がらざるを得ない。それほどの存在感だ。

 あとね、あと、オソン!チャン・ドンスの側近ですね。彼の忠犬ぶりと死に際のあっちです、行ってください…は泣くしかねぇ。

2.時代に取り残された男たちの矜持

 まあ言ってしまえば、この物語は時代に取り残された男たちの物語。時代設定がよく分からなかったのですが、彼らの通話手段はスマホではなくガラケー。勿論、足がつきにくいってことはあるとは思いますが、彼らの時代遅れ感を演出してくれます。(後注:冒頭に2005年という時代設定がされていたのを見逃してました。別に遅れた男たちの物語アイテムではなかったです。)

 そんな風に時代に遅れてまで彼らがこだわるのが自分の仁義、メンツです。刑事は凶悪犯を法で裁くことにこだわり、その為に逃亡中のヤクザであり、社会的には弱い立場のマブリーに法廷に立つように頼みに行く。一方、マブリーはそれを受け入れて、その先の刑務所で最高の笑顔で縄を持って決着を付けに行く。犯人が死刑判決が出ても、この国ではもう執行できない、なんて言っていたので、韓国は死刑執行には慎重な世論なんでしょう。そうすると、まあ互いにメンツを守る灰色の決着だったと思います。大事なのは、マブリーがヒーローじゃない、という決着になっていること。しっかり悪役として最後まで筋を通しているので、かえって中途半端に改心されるよりも好感が持てました。

 いや、正直マブリーに出馬願わなくても、誘拐の時の音声、ハンドルカバーで犯人を割り出した時の証拠等、死刑に出来る要素があった気がするし、犯人もなんで誘拐の電話するような真似したのか良く分かんねぇのも事実。その辺は無理が通ればマブリーが通るってな具合にちょっと都合が良かった気もしますが、アイドル映画なんてそんなもんじゃないですか。それでいいんです。

 個人的には、カーチェイス、殴り合いなどのアクションがもっと見やすかったり、もっとノワールよりのもっと湿った感じだとなお良かったな、と思いますが、エンタメ方向に振っているアイドル映画なんでね、まあよしとしましょう。