抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

ジャパニーズノワール「辰巳」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 本日は周囲の皆様からの評判が大変よろしい『辰巳』の感想です。ちょっとしたブーム感すらある。まあもう掘りつくされた感想しか言えないのでね、浅瀬でちゃぷちゃぷする感想です。

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WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

(以下ネタバレ有) 

 『ケンとカズ』の監督がそれ以来となる新作を、ということでなるほど確かに名前は聞いたことがありますな、というレベル。そんなこと言っているとアカンな、ということを痛感はしました。こういう名を売った作品はちゃんと見ておくべきです、反省します。

 さて、話的にはジャパニーズノワール。ヤクザでバラシもやっている辰巳さんが組の揉め事に巻き込まれる形で組と対峙していく、そのキーに元恋人の妹が絡んでくるって感じ。基本バディというか、我儘な小娘と喧嘩しながらだったりするので構図が『レオン』です。ま、一番見られているのがレオンってだけで古今東西無限にある組み合わせではあります。すっごい余談ですが、ACミランポルトガル代表の表記はLEAOでレオン、と呼んでいたんですが最近はレアオと呼ぶことが増えてきた印象です。現地の発音を尊重している感じ。海外サッカーや海外映画をチェックしているとインプットした人名が変わっていくということも経験しますな。

 レオン型であり、西部劇的でもあるような本作は正直びっくりするような内容は特になく、私の大切なあの人を殺したあいつを殺す、が基本原則で動いており悩ましいことは殆ど無い。それでも明らかにパワーを持っているのは悪役となる竜二を演じた倉本朋幸さんと葵を演じた森田想さんを中心にした役者のパワーにしっかり信頼しているところでしょうか。暴力が振るわれるとなればカメラもつられて荒々しく動けば、この映画の登場人物たちがしょっちゅう行う相手の首根っこを掴む行為ではしっかり顔にフォーカスしてその力をしっかり見せる。おかげで、ともすれば全員悪そうな人、となって没個性的となってしまいかねない題材でもキャラクターがちゃんと初見で分かるわけで。特に葵は最初の自動車工場での暴力は介在しない場面でその存在感とキャラクター、今後こうなっていくだろうな、に対して全く違和感を抱かない。本来はヤクザの世界、殺しとは無縁の人物のはずなのにそこに説得力はちゃんと生まれるし、なんなら車の下で待って待っての狙撃シーンでは完全に西部劇のソレを彼女は見せることに成功している訳です。それを森田想がやっているんですよ?あの『アイスと雨音』『放課後ソーダ日和』の!もともと演技力に定評はあったタイプの役者さんですが、確実にここで再発見されたと思います。『百円の恋』の安藤サクラみたいな転機になってくれるのではなかろうか。

 気づけばあっという間に1時間経ち、そしてエンドロールが流れてしまったのが大きな欠点でした。インディーズ系の映画で裏社会を描いたもので『JOINT』という大好きな傑作がありますが、それに匹敵すると言える作品です。『JOINT』は現代ヤクザにおける資金源としての情報・詐欺のような観点を描き現代おいてヤクザ映画は作れるのか、という問いにフレッシュな提案をしてきました。一方で本作は、『仁義なき戦い』など以降日本映画に脈々と受け継がれ、『孤狼の血』が辛うじてつないだファンタジーとしてのヤクザ・殺し合いをそのファンタジーのまま実在感たっぷりに描けたと思います。誰が仁義を重んじ、誰がヤクザとしての「道」を外れたか。おまえ、泣いてないだろ?そういうことだよ。