抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

未知との遭遇「FLY!/フライ!」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はイルミネーションの最新作。正直ダイジョブですか??と観る前は不安だったんですが、こいつは面白い。見事な作品でした。

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WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

(以下ネタバレ有)

1.vsドリームワークス??

 鑑賞前の予測から言ってですね、まあはっきりと移民の話だろうな、って思っていた訳です。あと家父長制。生まれた池から出たことないカモの一家が初めての渡りに挑むってストーリーがモロじゃないですか。実際、そうだったし。で、そうなるとよぎるのが『クルードさんち』シリーズですね。安全第一、「未知」こそが危険として洞穴から出ようとしなかったお父さんなんだけど、娘がガイという外の人物と出会ったことで移住をすることになるお話。ただ、これの第1作は事実上お父さんが未知を受け入れる話なのに主人公が下の世代に置かれたことによるストレスと、ちょっと進歩主義的な説教じみていたのが微妙かなって味付け。今回の『FLY!』に関してはここの反省を見事に生かしていて、そもそもの渡りのはじまりが強制的でない上に、家族それぞれに主体的な見せ場が出来ていて、そしてそれがファミリー向けの映画として面白い、という構造に(2作目の『クルードさんちのあたらしい冒険』は最高なのでドリームワークスもちゃんとやっていると強く言っておく。)

 そんなこんなで、野沢雅子のサギステージ、ニューヨークステージを経て登場したのがフォアグラステージ。やたらアヒル至上主義のところにやってこれたと思ったが、まあまるまる太らせるために自由にさせていました!っていう話なんだけど、おいおいこれはこれでまたもやドリームワークスの『チキン・ラン』に繋がる話じゃないかと。あっちは強制収容所と養鶏場を重ねた訳ですが、そこからの脱出が描かれるので意識はしているはず。ドリームワークスとイルミネーション、近年では完全に立場が入れ替わってしまったことを思い出させる感じでした。まあニューヨークステージでは『レミーのおいしいレストラン』を思い出す厨房アニマルアクションでしたが。今回は完全なヴィランとして意思疎通も出来ない相手として人間のシェフが描かれましたが、あっこまで完全に野生の鴨が入り込んだレストラン、はっきり再起不能な気がするのでそれはそれで可哀想ではあります。ヘリで追ってくるのはフィクションなので。話がディズニーにうっかり逸れましたが、結構なスペクタクルの1人称だったりする飛行シーンなんかは『ヒックとドラゴン』も絶対意識してるよなぁ…と。

 無理やりに近い状態で旅立ったとはいえ、旅の過程で出会ったサギに見た目でないことを教わり、ニューヨークや農場を通して誰かを助けることも学び、自己肯定感を獲得していくような話をエンターテイメントで包んで提供する、という春休み映画としてほぼ満点に近いものを見せてくれたと思います。そしてイルミネーションに凄いな、と思うのはこの前に短編で『怪盗グルーの月泥棒』のその後の話としてスラップスティックどころか、もう不条理コメディに近いシンプルで音すら要らないような笑いを見せていること。この100分ほどで見事に両面の笑いの幅の広さを見せつけてきた感じです。

 ボイスキャストにも賛辞を送りたく、野沢雅子羽佐間道夫といった大ベテランの実力を感じれば、堺雅人麻生久美子は盤石の吹替で、オークワフィナの吹替はこれから全部ヒコロヒーでも文句言わないかもと思うレベル。『バッドガイズ』の時のファーストサマーウイカも褒めた気がするが気にしないことにしよう。『ラーヤと龍の王国』は字幕だった…はず。んで、あのお兄ちゃんは『怪物』の黒川想矢!きみ凄いな!