抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

真贋「映画おしりたんてい さらば愛しき相棒よ」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は大人気シリーズの長編作品。そう、何を隠そうおしりたんていです。映画館で見るのは初めてでしたが、おしりたんていは劇場は真っ暗にちゃんとなるんですね。トーマスやおかあさんといっしょは暗くなってなかったと記憶しています。

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WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

(以下ネタバレ有)

1.失礼こかせていただきます。

 話としては非常に分かりやすく、おしりたんていのかつての相棒であるスイセンの依頼によって美術館の絵がぜーんぶ偽物にすり替えられていた事件の捜査をすること。登場人物が極端に少ないこと、それなのにスイセンが10年前に去った理由である贋作にある師匠のサインから彼女が敵組織の一員であることや、そこから派生して師匠が敵組織のボスなんだろうな、っていうこと自体の推察は極めて容易なのでたんてい、的な要素を期待しているとちょっと物足りないかもしれません。ただ、そこへの持って行き方が結構スムーズだし、何より子ども向けで対象を飽きさせないようにしなくてはならない中で、私が見ていた『スフーレ島の秘密』よりも更にストーリー重視になって遊びのギミックを減らしているのにこのバランス、実に見事であると思います。

 子どもをターゲットとして継続的にやっているアニメシリーズとしては、明確にクレヨンしんちゃんドラえもんが老舗として挙げられるでしょう。探偵ものとしては名探偵コナンも入れていいかもしれません。そうした作品群の良いところといえる終盤に置けるスペクタクル気味な大きな展開、というのも今回はビッグフラワー財団のビルの変形という方法で見せており(驚くことに予算規模が目が眩むほど違うだろう『ウィッシュ』っぽさがある)、石像に飛びついてそこに書いてある通りのポーズをする、という子どもがとっつきやすいアクションから、トドメのおしりたんていの口から出てくるオナラ攻撃、そして本作のスイセンの見事な狙撃技術と多様な見せ方で最終的に沢山のパラシュートの落下という映像的にも楽しいことが達成されています。

 また、この口からオナラっていうのがおしりたんていの中でかなりフィクショナルにして、めっちゃおしり的な要素ではあるんですがここを序盤に見せておいて、それを切り札的に大火力で使い、終盤のメロドラマ的な人工呼吸でもギャグとして使えるあたり、ある程度のバカバカしさを許容できる作品群として積み重ねてきたことの強さ、というものを感じます。この辺はクレしんやコナン、あるいはMCUなどのアメコミ映画たちがジャンルとしてちゃんとやってきたことをしっかり学習しており、逆に言えばおしりたんていというコンテンツもそれだけの説得力を持つ一大ジャンルになっていると言えると思います。

 とまあここまでちゃんと子ども向けエンタメとしての手法を積み重ねながらも、お話自体は贋作と観客の審美眼という実に大人向けなもの。ツダケン演じる悪役の目的は、世間が俺の本物の芸術を認めないなら、贋作で埋め尽くしたうえで偽物と暴露して世間に俺を認めさせてやる、全部を偽物にしてやるんだ!という結構なもの。なんでもかんでも情報を食べて、それ自体を見ていないのではないか、という大衆への批判は射程の長い問いかけをしっかりしている(それでいてツダケンを完全な悪にせず、一歩踏み間違えて追い詰められただけの人に出来ているのも上手い)。マジで驚くべきなのは、実に悪名高い人となった高橋ナツコがおしりたんていの脚本を務めていることで、『ブルーサーマル』でもそうだったけども、誰かと一緒に脚本を書くという座組ならこの人はなんとかなるのでは??と思わせてしまうところ。かといって好きな作品のアニメ化とかに絡んで欲しいかと言われると困るのだよなぁ。