抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

アイ、私のポンコツ・ロボット「アイの歌声を聴かせて」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回は吉浦康裕監督最新作!ひっさびさにFilmarksさんで試写会が当たりました。Filmarksは見た後数日以内に感想を投稿しないといけないので、それに合わせて公開日前のブログ投稿です。

 えー、改めて申し上げますが、本ブログのモットーは私が見た映画の感想を私が忘れないために書く!読者は私前提!っていうものですので、公開日前でもふつーにネタバレしております。申し訳ありませんが、そこはご容赦を。

 だが言っておこう、今年最高傑作の1本であると!

映画チラシ アイの歌声を聴かせて 土屋太鳳

WATCHA5.0点

Filmarks4.9点

(以下ネタバレ有)

1.ワンダー溢れるAI×ミュージカル

 予告編を見て不安に思った人もいるでしょう。私だってそうでした、第1弾の予告編で土屋太鳳の声を聴いたときは。第2弾で土屋太鳳演じるシオンという役がAIだって分かって納得した訳です。

 ということで、本作はAI×ミュージカル!!もう大好きだったことを言った前提で話を進めますけど、思い出すとゾンビ×ミュージカルも大好きでしたし、スタァライトもミュージカルっちゃミュージカルだし、ミュージカル苦手とか言ってる癖に好きなヤツは大好きすぎません、私?

 別に私はそこが苦手な訳じゃないんですけど、ミュージカル映画の難点といえるなんで音楽かかるの?なんで歌いだすの?っていう疑問符が浮かぶところを、AIだから機械系操作できるし、主人公サトミに幸せになってもらいたい、という命題の為だけに歌っている、っていう方向に設定が出来てるのでそこがノイズにちっともならない。実はこれは、じゃあなんで幸せにするために歌をチョイスしているのか?っていう命題があったわけですが、そこは上手く隠せている。隠せているのは、各セクションでやるミュージカルの達者さ。まずもって重要な土屋太鳳さんの歌声の伸びやかさですよ。いやはや、『哀愁しんでれら』といい、もしかしたらオリンピック開会式に出ていたかもしれないっていう話、その辺も含めて土屋太鳳は2021年の主役、って言っても良かったやもしれません。

 話が横道に逸れましたが、ミュージカルシーンは、歌だけなら別に凡百の映画でもあるんですよね。それを超えて凄いな、と感じたのはその場面設定と演出の凄さ。学校の屋上で雨を降らせてのミュージカルは学校の機器をジャックできることを示しておきつつ、ちっちゃめなピーク。ところが、次のミュージカルシーンはなんと柔道の乱取りから始まる。いやめっちゃ斬新!!これは本当に初めてでは??ハイスクール・ミュージカルに柔道部ある?見てないから知らないんですけど。

 そしてそのピークは、中盤の大仕事、サトミが幼い頃から好きだったディズニーアニメっぽい「ムーンプリンセス」を再現するっていう段ですよ。良く分からんシャフトみのある風力発電みたいなん回ってるな、と思ったらそことメガソーラーを使っての夜のド派手なミュージカル。メンバーみんなの心もひとつになって、ミュージカルとしてのひとつの頂点をここで確実に感じました。うーん、持ってかれた。

 

ユー・ニード・ア・フレンド ~あなたには友達が要る~

ユー・ニード・ア・フレンド ~あなたには友達が要る~

  • 土屋太鳳
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

2.最高の吉浦×大河内。

 えーと、ミュージカル部分に注力しすぎたので、全体の話をしておくとですね。予告の段階で、いわゆる強いAIの話だ、っていうことは判っているし、しっかりそれを想定させるような導入になっているんですよ。それを踏まえた上で、タイトルが出た後はサトミのモーニングルーティンで、生活へのAIとか電子系統の浸透具合を提示する。ここでキーにもなる母子関係も見せておく。田舎の原風景、普通の学校にちょっとだけ入った色んな機器、無人バス、それらは特別行政区だから行われている実地試験的な導入であって、今の生活にちょっとだけで辿り着く未来に見える。そこに絶対に近未来設定では登場しえない強いAIロボット、という大きいかましをすることでミュージカルっていうところにも説得力が出てくる。

 で、そういうミュージカルとしての強さが前述の通りあった上で、強いAIとしての説得力も持っているんですが、更に強いAIって本当にできるのは?っていうところにサプライズを準備している。昔のトウマがたまごっちを改造してあげた時からAIが逃げていたっていう。いや、よく考えたらAIっていうか、シオンはソフトの話なので、外側のハードの話はしてなかったじゃん、っていうかそれも用語に齟齬があるじゃん、っていうのも全部ミュージカルで気づけなかったっていう。いや本当にすごい。

 で、ですよ。これまでの吉浦監督を考えると、ミュージカルはともかく、SF的には出来ておかしくないんですが、イヴの時間なんかもそうでしたけど、小さい話ではいいんですけど、それが大きな物語的な爆発に繋がってはいなかった印象があったんですよ。ところが、これを見事にカバーしたと思われるのが脚本に入った大河内一楼さんの手腕は確実にありますよ、これ。AIものはルパン三世PART5でやってるし。サトミを会社に奪われてから、奪還作戦を繰り広げる様子は、ツダケンが諭すように子どもだから許される。子どもによる大人への反抗っていう文脈だと、「ぼくらの7日間戦争」でしょ!大河内さんがこれまで数々のタイトルを総決算してきた意味がここに一点集中してますよ、マジで。

 で!そういう子どもの反逆っていう文脈が集大成を迎えるのがラストですよ。本来、AIが勝手にサトミを幸せにしたい、っていう命令のために色んな書き換えやらなんやらしていて、それってシンギュラリティな訳で、冷静になるとおっそろしい状態な訳ですよ。でも、子どもだから、共に時間を過ごしたシオンに人格を見出してしまうし、そんな大人の理屈なんてちっとも知ったこっちゃない。森谷帝二が作ってそうなビルの下に逃げれないなら、上に逃げるんだ!とソフトを打ち上げて衛星にのっけちゃう。世界なんか知るかよ!いい!!すごくいい!!これって『天気の子』じゃないですか!!最高!!そこにシオンが8年間も電脳世界で見てきた「思い出」がPC画面いっぱいにどーん!!みたいな集積がのっかってくるんですよ!この!涙腺に!泣くなと!いえるわけがないではないか!!!!

 本当は、サトミのお母さんは責任ある大人として振る舞うべきですし、AI研究者として、絶対にロボット三原則とかは守らないといけないんですけど、ツダケンがわっるいいつものツダケンをやってくれてたり、女性の社会進出的な愚痴を聞かされているので感情的にはギリ許せる。あー、でもこれは『竜とそばかすの姫』の大人の行動に文句言ってたのと何が違うんだ!って言う人はいるよなー。なんか違うんですよ、伝われ~。それよりかは、強いAIに成長しちゃう改造を施せたトウマくんが今も昔も全能ハッカーとして描かれすぎでは問題の方が大変かもしれません。まあ、そんなものは些末な話ですけどね。