抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

縁「パスト・ライブス/再会」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は公開日前の作品ですが、アカデミー賞前に見れたので授賞式前に一応出しておこう案件。昨年だと『aftersun/アフターサン』とか『ザ・ホエール』がそうでしたね。そのため、一応ネタバレにはご注意ください。そういう類の映画では無いですが。

 なお、公開設定をミスっていたためこの後のいつもの時間、お昼にアカデミー賞がらみのブログが公開となります。1日2本!

f:id:tea_rwB:20240201001332j:image

WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

(以下ネタバレ有)

1.縁がある=絶対結ばれるとは違う

 全然見事にPast Livesって過去の記憶に生きている、みたいな意味だと勝手に思ってたんですが前世、みたいな意味でした。まあ前者でも間違っていない、って感じではありますが。

 というわけで、12歳の時の初恋の人との恋物語ではあるんだが、12歳で女の子方がアメリカに移住していてそっから12年接触がない。12年ぶりにインターネットで繋がって通話できるようになったけど、そっからまた没交渉で12年後にようやくNYで再会するという、そういう話。12年ごとに3場面を切り替えしながら(といっても結構時間通りですが)特に劇的なことは起こらない物語。一番ドラマティックなのってもう通話すんのやめよ、って言うとこかもしれないぐらい。でもなんで12年刻みなのか。韓国にも干支の概念あるの?

 グレタ・リー演じるのは、ナヨンあるいは、ノラ。どっちの名前で生きていくのか、またもや名付けの話。名前を与えることが支配になるという話とは違うけど。ヘソンくんは、かつて韓国で共に競ったナヨンを愛していて、それを24年越しに確かめるだけ。でもノラはもう育ちがアメリカ、の人になっていて完全にインストールされてるのがアメリカ人な感じがする。それが再会のタイミングの表現でわかりやすく出てる。コミュニケーションの距離感が完全にアジア圏のそれではないし、実際ヘソンは抱き締められた後の手の置き場に困っていた。そういう意味では彼女はマージナルパーソンであり、黒人であるのに白人文化圏で育ってしまってコンプレックスがある、みたいなジョーダンピールにも近いような人物かもしれない。アメリカ社会において彼女はアジア人なんだけど、ヘソンに会ってしまうとヘソンが韓国人らしい韓国人であると実感してしまう。

 でも、そこでそれが悩みとして出てくるのではなく、だからイマココにある自分とその自分が選んだ相手との関係性において自己を規定して民族的なアイデンティティにはとらわれない。生まれ変わってもあなたに会いたい、でも今は結ばれるべきじゃ無い。ドラマチックにしたかったら、アーサーが危惧したように彼らは駆け落ちして白人男性はそれを邪魔するべきである。そうはしないという決意を感じる作品になっていました。

 そこを象徴する言葉としては、イニョンというものが出てきました。縁です。私はSNSTBSラジオに汚染されているので縁という言葉を見ただけで頭の中の見たことないドンモモタロウが「縁が出来たな!」と言ってきます。困りました。8000層にも重なる繋がり、色んな縁があって我々はここであなたと過ごせているかもしれないけど、そのファンタジーに縋ってあなたとの過ごし方を決めるんじゃないよ、っていうドラマからの分離は重ねてとても印象的でした。ちなみに私は野球に汚染されているので8000層と聞いて、え、パイの実って8000層もあるんですか!?とロッテの新人野球選手のような言葉が思い浮かびました。ちなみにパイの実は64層で1.5cmなので8000層だと187.5cmらしいです。私よりデカいパイの実サイズの重なり…前世どころではすまなそうである。

 何の話をしていたんだか良く分からなくなってきましたが、しかしCJエンタテイメントがA24と共同制作に入ってる。A24は『フェアウェル』でもいいし『ミナリ』でも『エブエブ』でもなんでもいいですが、アジア系で良作を繰り出し続けているわけで、アジア系に対しても門戸を開いている会社であるとはいえ、ねぇ。東宝が海外事業の拠点作ってゴジラが売れてるぞキャッキャとか言ってる間に韓国エンタメ界は直接作り始めてるぞ、という差は多少感じます。一応本作を配給しているハピネット・ファントムスタジオはA24と独占契約みたいなのを結んだうえで将来的な共同製作も視野に入れているようですが、さてどうなるか。寛容さがメインのテーマの世界になっている今がチャンス。

 うーん感想からしてコイツ恋愛に興味ないな!