抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

侵入「NOCEBO/ノセボ」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はロルカン・フィネガン監督最新作。

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WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

(以下ネタバレあり)

1.ハウジングスリラーの次は。

 さて、前作『ビバリウム』をその公開年の上半期のベスト10に選出させていただいた私。当然次回作となる本作も楽しみにしていましたが、不条理なスリラーからまたひとつ変化を見せてきた印象です。

 作品としては、子ども服デザイナーのエヴァ・グリーンがなんか急にノミだらけの犬を見て卒倒、そっからずーっと調子が悪い。その中で、家事手伝いとしてやってきたフィリピン人女性ダイアナが民間療法してくれて…という感じ。

 争点としては、このダイアナが本当に善意の第三者でクリスティーンを治そうとしてくれているのか、あるいはホームインベージョン的に乗っ取りに来ているんじゃないかっていうところ。終盤までこれを隠しながらダイアナが寄り添ってくるんですが、音楽を始めとして演出は完全に悪いやつとしてやってる。ってことは逆にいい人だったのに疑ってしまったパターンかしら…と思ったら見事に中盤で放逐されたので観念しました。いや、8割諦めていたんですが残る希望をダイアナの回想にクリスティーンが出てきた瞬間ぶちのめされました。思い返せば、尋ねてきたときに言いくるめてるタイミングから碌な奴ではなさそうではあった。今年はディカプリオといい、言いくるめられるの好きなシーン多いな。

 自分たちが支配していると思い込んでいるプライベートな空間に他人が同居し出すこと自体の不穏さは例えば『淵に立つ』でもなんでもいいや、これまでも取り上げられてきましたし、そこに東南アジアの怪しげな宗教セラピーみたいな要素が乗っかると今度は『ヘレディタリー/継承』『ローズマリーの赤ちゃん』なんかを思い出す民俗ホラーの領域に入ってくる。そこを上手く誤魔化しながら最後にそういう話だけど、そういう話じゃないんですよっていう落とし方は結構好みでした。まあ死体燃えてるし、めっちゃ『ヘレディタリー/継承』なんだけど。

 『ビバリウム』が人間と家の話だった訳ですが、今回は衣食住の衣を実はテーマになっていて。子ども服を安価に製造するにあたっての東南アジアの工場での劣悪な労働環境、先進国による搾取に彼らなりの方法である民俗ホラー、土着の怨霊で襲ってきますよ?ヤバいっすよ?というカウンターパンチはこの観点のフィクションは無かった!というか、ドキュメンタリーとかでしか見ない論点!と思うし、そうなると入り口が子ども服のファッションショーなのよく出来ているなぁと感心します。クリスティーンが赤い靴を履くときに呪文を唱えるのも、彼女がそういうおまじないに親しみやすい人格であることを示しつつ、おしゃれというのが自己強化の魔法であるというファッションの現代的意義とその魔法は結局搾取だよね、に落とし込める。

 同時に、『ビバリウム』もそうだったというか、あれは自動配達されてきた存在なので同列に扱っていいのか分かりませんが子どもって存在を結構一個体として扱ってますよね。親がいいようにできる存在ではなく、むしろ親の運命さえもイタズラ的に変えてしまう。

 とまあ、好きな監督!ってことで考えたことを書き記してみましたが、犬はノミだらけでノミは結構出てくるし、口から鳥が出てきて別の口に飛び込むしで、ホラー苦手人間としてはおっとー!っとなる場面も多かったのは事実。まあ結果的にはストレートすぎる演出と音楽なのもあって覚悟はしやすかったですね。

 そして何より強く好きだったというか、そうしたホラー的要素を瑣末な問題として扱えたのはタイトルの出方が最高だったことを挙げなければならないでしょう。アバンタイトルでファッションショー中に電話を受けた途端にノミまみれの白目犬!いなくなったと思ったら首筋にノミでびっくり!の瞬間!真っ赤な画面で黒文字でノセボ!どーん!8ヶ月後おうちバックに赤文字でキャストどーん!はい好き!『続・荒野の用心棒』が好きすぎるだけでは?という問いにはそうですけど何か?と返しましょう。赤い太文字でキャスト名でたらもう勝ちでいいんです!