抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

犬万能映画「クルエラ」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 はい、今回は『クルエラ』の感想です。ディズニー実写とか、一体いつ見た?ってか、劇場だと初めてじゃね?レベル。調べたら『ナルニア国物語第1章』以来でした。え、あれってディズニーなの?まじ?

Cruella

WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

 

1.なんて魅力的なヴィラン

 『101匹わんちゃん』を見ていたのは一体、幾星霜の昔でしょうか。確かに我が家には『ピノキオ』『王様の剣』と並んでそれが置いてあったはずだ。見事に記憶にさっぱり抜け落ちて、クルエラがいったい何をした悪い人なのか、っていうか101匹わんちゃんってどんな話でしたっけ、リメンバー?状態。なのでかなり真っさらな気持ちで見ることができました。

 んで、さっそく冒頭からテンポがいい。まさかのクルエラ=エステラの誕生の瞬間からスタート。だが、その時点で語りが入っているのだが、この手の演出は監督クレイグ・ギレスビーの前作『アイ、トーニャ』で十分目にした、むしろ魅力的な方法。小気味よくちっさい悪事を繰り広げる幼きの日のエステラ。小学校時代の友人、母の死、といったエピソードを超速で片付けて鏡を使って子ども時代からエマ・ストーンへぴしゃっと変身!という手際の良さはNHK朝の連続テレビ小説もびっくりである。おまけに、この後の展開に露骨に効いてきそうな伏線を張ってあることで、一番大きい仕掛けだった誕生のところへの目線を見事にそらすことに成功している。エステラたちが泥棒でやっていた手腕に近い視線誘導の巧みさである。

 あっさりと子ども時代を片付けてからは、百貨店に入店して掃除係になるシンデレラ実家編、そして酔っぱらってやらかしたことで才能が認められてフックアップされるシンデレラ登城編と展開はめまぐるしく動き飽きさせない。才能の認められ方も上司の部屋の酒かっくらって店頭ディスプレイを勝手にしてそこで寝呆ける、っていう正攻法じゃなくてっぽい。

 この辺から、フックアップしてくれた天才ファッションデザイナー・バロネスが持っているネックレスが母の家宝だと気づき、エステラと別人格クルエラが発動。ファッション業界初めてモノからコン・ゲームに近い感じになっていき、そこからはバロネスとクルエラのファッションショー合戦。クルエラはその場所っていう文脈を外した勝負を結構しているので、ただのアウトローデザイナーというよりもヴィランみがある感じ。この辺はオーシャンズ8(特に冒頭の出所即窃盗シーン)が一番肌感としては近い。

 さて、まあ争っていたバロネスが実は本当の母親だったのだ!とか、そこに対して復讐するぞ!の終盤怒涛の展開自体は面白いけど、割とこれまでもあったタイプのものなので特筆はしないが、本作の白眉はやはり圧倒的な衣装とエマ・ストーンだ。髪が白黒で2分された、ある種二重人格の可視化、みたいなヴィジュアルのクルエラと、真面目で地味目なファッションデザイナー初心者としてのエステラの顔が本当に違って見える上に、クルエラでいるときの佇まいがいちいちアーティスティックで凛々しく、そして美しい。衣装の良しあしとかは本来は門外漢なのだが、それでも思わずこぼしてしまうレベルで素晴らしいのだ。

 ただまあみんなそこは言うでしょ、だったらこっちもみんな言うべき、え?言ってる?っていうのが、ポール・ウォルター・ハウザーだ。ダメなポンコツ白人をやらせてこの人より上の俳優はもはや存在しないだろう。ニック・フロストサイモン・ペッグエドガー・ライトを装備)に匹敵するレベル。監督の前作『アイ、トーニャ』や『ブラック・クランズマン』、『リチャード・ジュエル』でダメさを体現した彼は、またしてもダメなのに憎めないキャラを全う。常になんかしら食ってる可愛さはたまらんし、実は結構ちゃんと仕事をしているのでポール・ウォルター・ハウザー七変化も楽しめるのだ。

2.終盤のパーティと回収して欲しかったところ

 基本的には大満足なのだが、その中でもやはりいいシーンだな、と思うのはクルエラが死んだ、と思われてのバロネスの主催するパーティシーン。しっかり事前準備をして臨んだクルエラチームの奇襲:客がみんなクルエラコスで来襲、というイレギュラーに対して、最善手で対応したバロネスの手ごわさも際立つが、彼女の視点で見下ろす&見上げると女性はみんなクルエラの恰好、というのは力でのリベンジではなく、クルエラへの連帯(本人たちはそこまでの意識はなさそうだが)によるリベンジを達成しているようで素晴らしく思えた。勿論、結果的に3匹のダルメシアンを従えたのもクルエラが格の違いを見せただけで、優しさによるものとかではなかったが、あくまでヒーローではなくヴィランピカレスク的ジャンルなのだし、そこまではいいだろう。むしろ、散々振っていた感謝は敗北者のもの、というセリフをうまいこと使ってほしかったな、というのが強いか。

 まああとは101匹わんちゃんのユニバースに対して言うのは野暮だが、犬万能スギ!!ちょいCGっぽさ出スギ!!