抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

熟成「駒田蒸留所へようこそ」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は11月の目玉作品だったはずなのですが、全然熱量が上がってきていない。まあ見たら分かりましたが。熱烈に推す感じじゃないよなぁっていう。

 あ、最大のサプライズはエンディング。曲がかかるんですがついに早見沙織で映画音楽!と思ったらキャラソン扱いでした。別にアーティスト早見沙織でも良い気がするのですが…

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WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

(以下ネタバレ有) 

 

1.朝ドラ感

 ひっじょうに丁寧な朝ドラ的な王道物語を選択してきました、今回のP.A.WORKS。最近完全に迷走していたというか、アキバ冥途戦争のどこが一体お仕事モノだったのかと自分で自分を問い詰めたくはなるが、まあお死事はしていたレベルになっているシリーズだったが、今回で軌道修正。コメディもバイオレンスもファンタジーも排除して、っていうかキャラデザの段階から結構萌えタイプを抜き切った感じ。題材がウイスキーで、女子高生が、みたいなことが出来ない関係上だったらもっと雰囲気を、ということだと思います。

 実際にスクリーンで描かれたのも、ウイスキーの作り方(蒸留所と醸造所の違いとかから教えてくれる)を一定見せた上で、10年前になくなったウイスキーの「独楽」を復活させる取り組みを中心に描いて、途中ウェブが炎上したり、本当に火事が起きたり、親子で再会したり、なんやかんやで無事に完成しました!というドがいくつついても足りないぐらいの王道。分かっているゴールに向かって進むけど、そこに一定以上の満足感を得られるし、大概の揉め事はお前らもっと話を聞けよ、で済むのもそれもこれも結構な朝ドラっぽさを感じます。そしてその中で蒸留所を継いだ社長が早見沙織、取材するライターが小野賢章というW主人公の安定感。うーん、安心しかない。こうした安心をしっかり裏付けてくれた気がするのもエンドロール。日本中の蒸留所がしっかりクレジットされており、取材をきちんとして国産ウイスキーというちょっと流行になっているものを齧って映画作ります、みたいな姿勢では無いことが分かって安心できます。

 そういえば見ていないけど、朝ドラにウイスキーの話あったな…

2.お仕事モノというジャンル自体の今日的難しさ

 さて、じゃあこの映画が素晴らしかったかというと正直言って難しいと思うところ。なんせいきなり出鼻をくじかれるんですよね。小野賢章ウイスキーの世界に出会うのは、そんなにやる気もないWebライターとして編集長(だっけ?)に仕事を振られたから。ここで次はウイスキーの取材、明日、お前休みだけど長野な?とかいう意味の分からないブラックさを一旦挟むことでもうMAXで不信感を持って始まってしまう。お仕事ジャンルをやるにあたってまずブラック労働から始めるの?と。しかもこれ、月2回各地の蒸留所を取材する長期連載プロジェクトにして、駒田蒸留所にとっても非常に重要な取材でもあった訳で、それをお前明日からな、は酷いというか。と思ったら、そういう状態で取材に向かわされて小野賢章は問題外のミスを連発していくわけで。蒸留所周りの取材はめっちゃしっかりしてたけど、Webライター周りの取材はしなかったのかな??なんて嫌味のひとつも言いたくなる、いやWebライターの世界ってそうなのかもしれないが、そこは別に描く必要ないでしょ、っていう。結果的に物語に乗れ出すのは、このWebライターが改心して有害でなくなってからであり、うーんそのマイナスからのスタートって本当に必要でしたかね?っていう印象が否めない。勿論、何か専門的なお仕事を題材に扱う上で、何も知らない視聴者に対して説明をするために無知の人間を導入に使うのは、定番ですし分かるんですけど、そのためにやる気のないライターが学ぶ時間の猶予を与える必要は感じませんでした。無論、終わってみれば小野賢章が次の新人を連れてくるという終わり方とセットになっていて、タイトルどーんで終わってめっちゃいい感じなんですけどね、とはいえね。

 そうしたところとも重なって考えたのは、お仕事モノって結構現代では難しいなっていうところ。どうしてP.Aが水族館で異次元空間に迷い込んだり、メイド喫茶でカチコミさせていたのかが少しわかった気もするというか。お仕事モノの常として、立ちはだかる課題に対しての解決策っていうのは基本的に「頑張る」しかないんですよね。当たり前です。私みたいな、仕事は最低限で余暇を充実させたい、というか余暇とか呼ぶな、仕事の方が余った時間じゃ、ぐらいの人間をお仕事モノの中心に据えて楽しくなる訳がありません。必然、仕事に対して最終的には向き合い、やる気をだしてそれが自己実現とも重なるラインを打ち出していくことになりますが、それがそもそもやりがい搾取であるとか、ブラック労働と紙一重。ともすれば、今回の作品で金銭的な余裕を与えるための買収を悪と見えそう(で結局違うというラインに落としたのは上手だったが)っていう展開になっちゃうんですよね。理想と現実を戦わせて、現実が悪かったり、理想がいいもののように扱うしかない。っていうか現実の方がいい、って描き方をすると多分それはお仕事モノではなく社会派の告発型の作品にパッケージングされてしまう。割り切って最初から搾取満々でいくか、別の要素を絡めることで誤魔化していくしかないのかもしれません。そりゃみんな異世界いくし、コンシェルジュさんが良くできているなと改めて思うことになりました。

 いずれにしても、もう少し序盤を切って、別のところに時間をかけて熟成した方がラストまでの盛り上がりがあるってもんじゃないですかね、ウイスキーじゃないですが。朝ドラだって1年やるから盛り上がるんですよ、もっと寝かせていきましょう。