抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

搾取「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はスコセッシ新作。九州の地へ行ってきたついでに、3月で建物が取り壊しとなり閉館する中洲大洋映画劇場にて見て参りました。それにしても長い。

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WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

(以下ネタバレ有)

1.デ・ニーロマジ怖いっす

 200分を超えて描かれたのは、ネイティブアメリカン、オセージ族を襲った連続不審死、というか連続殺人事件をめぐる顛末。戦争従事者から叔父を頼ってきたレオナルド・ディカプリオ演じるアーネストがデ・ニーロ演じるウィリアム・ヘイルの言われるがままになっていくのを見ていくしかない。顔がレオナルド・ディカプリオなんだけど、このアーネストの中身が日和見風見鶏のクソで、自分がやっていることが何なのか分かっていないというか、分かっているのに分かっていないフリをする。自分がその場で優位に立つことしか考えていない、というよりその場をやり過ごす為に大してうまくもない口八丁をかざす。それもこれもその後ろにいるヘイルに完璧に操られているから。アーネストは操られている自覚もないだろう。だって言われたんだもん、ぐらいの感じ。ヘイルは最初から最後まで凄いですね。デ・ニーロは素晴らしい演技だったと思います。取り敢えず何でもいいからこの契約書にサインしておけ、みたいなやり取りだったり、奥さんに打つインシュリンにこれを混ぜろ、みたいな直接的なヤバさも勿論ですけど、FBIからジェシー・プレモンスがやってきたときの対応の顔の飄々さだったり、っていうかよく考えたらキングって呼べ、とか言い出してる最初っから人を支配することに長けすぎている。しかもこいつは支配しようとしている悪というよりも、支配してあげた方がいいんだからそうしてあげているんだ、自分のやっていることはオセージ族の街のためなんだ、ぐらいの勢いだから怖い。どんどん彼らが追い詰められていく感じ、『グッドフェローズ』とかなり近いように感じたが、この映画はマフィアやギャングといった連中の終わり行く連中の地獄というよりも、しっかりと奪われていたネイティブアメリカンたちの存在を際立たせ、アメリカの犯してきた、そして下手しなくても現在も続いてる収奪、搾取の構造を浮き彫りにしていると言える。その点で、ただ長いだけだったような記憶しかなくなっている『アイリッシュマン』より3時間分の価値のあるストーリーだったのではなかろうか。長いけど、この時間が必要なことも理解できるし、これだけの時間がかかっても分かってない男・アーネストが主人公であることも分かる。原作や当初の構想だと主人公は捜査官で、その役にディカプリオだったということが信じられないくらい納得のいくものが出来上がっている。

 一方で、見終わった後にちょこっと調べた程度の感想ではあるが、この捜査自体の権力性の部分をもっと見たかったようにも思えた。どうしたってエドガー・フーヴァーの名前を見ると怪訝な気持ちになるし、(っていうかディカプリオがフーヴァー演じてた映画見た記憶あるな)この事件をきっかけに州をまたいだ捜査権を持つFBIが大々的に発足し、その権力性を増していく訳でそこの功罪、というか完全に白人権力者層がやっぱりネイティブアメリカンを搾取している構造自体は変わっていないじゃん、っていうところは見たいな、と思ってました。ただ、ラストのラジオドラマでその後を伝えていたパート、あれが本当らしく、フーヴァーは実際にラジオドラマでFBIすごいんだぞ事件簿みたいなのを作らせて喧伝しており、そこにこの事件も取り上げられていたっていうことなので少なくともスコセッシは私の見たかった部分っていうのに自覚的だったんでしょう。で、あれば読み取れなかった私が悪かった。

 なんか見終わった後にもっと色々考えていた気もするんですが、ほら、旅行中に見たわけですぐにアウトプットできなかったら大体忘れますよ、そんなんね。これぐらいで勘弁!

 案の定忘れてたから付け足し!ちょっとしか出てこないけど、弁護士ブレンダン・フレイザーは超良かった!あの声とあの目で優しく語りかけてるように見える感じがこの映画の雰囲気にバチハマりしてる!