抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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ニール・ブロムカンプ、未体験ゾーンで帰還「デモニック」感想

 抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回は、昨年『ある用務員』『シンクロニック』の2本を鑑賞した未体験ゾーンの映画たちからのご紹介。本当はもう1本見る予定だったんですが、1週間で終わっちゃうんだから、見逃してしまい、今年の未体験ゾーンはこの1本だけの予定です。

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WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

(以下ネタバレ有)

1.最も信頼できるSF作家帰還

 さて、あなたの最も信頼できるSF映画監督は誰でしょうか。ジョージ・ルーカススティーブン・スピルバーグジェームズ・キャメロンクリストファー・ノーラン?最近ならドゥニ・ヴィルヌーヴ

 私はノンノン、ニール・ブロムカンプとアレックス・ガーランドだよ、と心の底からお応え申し上げるでしょう。脱線してしまうので、アレックス・ガーランドの話は横に置いておきますが、ニール・ブロムカンプですよ!『第9地区』で颯爽と現れ、『エリジム』『チャッピー』と立て続けに、映画自体の評価はともかく、SFとしての強度が段違いの素晴らしい作品を世に送り出し続けたのがブロムカンプ。そんな彼が気づけば自分の会社で短編を作ってばっかだった中での復活の長編。実は映画を見てみようかな、なんて思ってTSUTAYAで初めて借りてきた3本のうちの1本が『チャッピー』だったんですよ。運命ですね、運命(他の2本は『アルゴ』『セッション』)。

 という訳で、最も信頼できる男、ニール・ブロムカンプの新作です。未体験ゾーン送りになってしまった時点で、結構なショックを受けていたんですね、ブロムカンプの新作を買う気概のある会社が存在しないなんて。でも、見終わったら、なかなか手を出しづらいのも納得はするような作品。言ってしまえば、もう一度足元を固めるような、結構な低予算のホラー寄りの作品でございました。怖いじゃないか、このヤロー。

 SFで信頼している男への期待として、やっぱり何か新しいものを見せてほしい。っていうことでいうと、記憶に潜る、仮想現実っていう設定自体は新しくもないし、どうやら他の方の感想を読んでいると、そこにエクソシストをくっつけるのは過去にも例があるよう。設定1本での目新しさっていうのは足りない、ってことかもしれませんが、でもどうでしょう。仮想現実でのノイズが入りながらの、明確に仮想現実だ、って見ている人は分かるけど、作り物の安っぽさが全くない描き方。1人称視点と3人称視点を併用しての、ゲーム画面的なカメラの置き方、それに伴っていい具合に消えたりするオブジェクト。いやいや、実に面白いじゃないですか!!『シンクロニック』のタイムスリップの映像にも通じる何かをそこには見出せる気もしましたし、うん、こういうのは凄く好みですよ。

2.SF以外のところを信頼していいのか

 えー、前述のようなですね、SF映画監督として非常に期待していたところは満点回答をしてくれたと思うんです。ただね、うーん、そこ以外のところはすっごい微妙っていうか、困ったなーって感じ。SF的な見どころのところは、主人公のカーリーがお母さんに会いに行かないと出せないんで、全体のすっごく一部だけ。で、じゃあ大部分は何かっていうと、前半部分は何をされてる方なの?な主人公が人に会ってく感じで、後半は完全にホラー映画及び悪魔が神父さんに取りついてのサスペンスアクションに近い感じで、そこはねーブロムカンプは別に得意じゃなさそうなんですよねぇ。病院の人たちだと思っていた連中がみんなしてバチカンの神父さんたちでした、って分かって特攻に挑むところはワクワクしたんですけど、戦闘描写もなくやられちゃったし…。あ、画像技師の博士号持ってるのに、刺青だらけだったんで、絶対病院ちゃうわ!とは思ってました。

 えーということで、『エリジウム』で悪かったドラマ部分のちんたらした感じとかがそのまま来ちゃってて、短編で出来るワンアイデアを長編に引き延ばした感は否めないのが正直なところ。でもですよ、別に怒って酷評するような作品ですか!?ちゃんとワクワクするところがあったんだし、それでいいじゃあないですか!!

 とブロムカンプ信者の私は擁護して終わりたいと思います。次作は『第10地区』、なるほどお金が集まらないんだろうな…。

 あ、ついでにアレックス・ガーランド監督の新作も早く見たいです。