抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

最近のアイドルは同じ顔だな、と言い出したらオッサンです「MEN 同じ顔の男たち」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 銀魂の各話タイトルみたいな題をつけてしまいました。(銀魂を見たのは数える限り)

 取り敢えず、宿の管理人が話し始めた瞬間に訛り!!方言!!イギリス英語!!って思ったんで、相当な待ってたんだと思います。あと試写会で見たのですが、登壇が大島依提亜さん!出た!映画パンフ界の今や神に近い人!同じ空気吸った!

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WATCHA4.0点

Filmarks3.8点

(以下ネタバレ有)

1.見たことないを見せるのがガーランドや!

 えー、私ですね、取り敢えず飛んでくる雑な質問

  Q.好きな映画監督は誰ですか?

 に対しては、ニール・ブロムカンプとアレックス・ガーランド、と答える程度にはガーランドが好きなんですよ。『エクス・マキナ』『アナイアレイション‐全滅領域-』は、どちらも非常に上質なSFでございまして、その中でもやはりアナイアレションのあの人の声で哭く獣っていうこの概念と造形がもう素晴らしくて。人間が嫌だな、って思うものを映像化する能力が非常に高い。そういう意味では、『エクス・マキナ』も(主人公にとって)見たくないものが具現化される、信じたくないものが本当だったっていうだけの話でもありました。

 そういう意味では、もう本作はそれに溢れています。同じ顔の男がいっぱい出てくるだけで、悪夢的でありますし、もう何より終盤ですよね。いやもう、見たことない。男が男を出産し、背中からパカっと出てきて、口から飛び出してくる悪夢的な連続出産。どうやったら思いつくのかもわからないし、見たくないな、っていうものの具現化ですよ(これに付き合わない、無視するっていう選択をしたハーパーの姿勢がまた好きだった)。あれもまあ、タンポポが象徴的に使われていることもあって、無性生殖っていうのを描きたかったんだと思いますけどねー。

 あと、ドアについてる郵便受け?っていうのかな?あっこから手をつっこんできたところに包丁ぶっさした結果、左手が裂けた状態になるのをゆっくり見せられた挙句、その裂け目で首の位置を固定してくる牧師はマジでキモいし意味わからなかった。

 っていうか、そもそもの飛び降り自殺する人と目が合う瞬間の映像化っていうのも嫌ですねぇ。

 大体、逮捕こそされるあの男が通話中に後ろに映り込んでくる、あれで死ぬほど怖いんですよ。『イット・フォローズ』を思い出しましたけど、害意があるかないか分からない男が立ってるだけで怖いって、まあこのあと語るテーマそのものではありますけど、いやほんとただ立ってる男の暴力性。

2.この世は男子校

 さて、前段で見たくないものの具現化、と申し上げましたが、それを言い出したらもうテーマそのものズバリがそうです。女性が日頃苛まれているありとあらゆるすべてをそのまま具現化。

 つい習慣かしら、なんて言ってしまうけどハーパーはホテルにMs.マーロウで投宿してしまい、マーロウ夫人と呼ばれ続け名前の時点で主体性を奪われている。自分の名前をトンネルで叫んでみたら、こだましてまるで此岸のようなトンネルの向こう側から"男性性"を呼び込んで増幅させてしまう。はーぱーはーぱー、はーぱーはーぱー

 その後もフラッシュバックした夫の自殺へ向けた口論もメンヘラ的な酷い振る舞いから、死んだのにそのことでハーパーの人生を支配しようとしてくる、ような描写。私が悪かったのかと牧師に問えば、お前が悪いと詰られる。いつでもゲームしよ!=遊べと言われ、断ればクソ女と罵られる。脅かされたと思えば、心配しすぎだと言われる。ホラーというジャンルで言えば、ジェームズ・ワンの『透明人間』級にそこを描いていたと思います。

 でもってですよ、そういうのを具現化するにあたっての手段が村の連中が何から何まで同じ顔っていうことな訳ですよ。子どもが出てきた瞬間違和感があり、牧師が出たらこいつの髪の位置おかしくね?と思い、パブのシーンで全員同じ顔で困惑する。

 これね、非常に慧眼なことに、TBSラジオの澤田記者がTBSラジオ『アフター6ジャンクション』でやっていた「男子校特集」がすべての本質だと思うんですよね。社会全てが「有害な男らしさ」を良きものとして基準にオーガナイズされて、それが再生産されて全員に同根されていくからいつまでたっても抜け出せない地獄が顕現する。特に、牧師がそこに絡んでくる辺りは、キリスト教にもそこは根付いているのかなって思いました。前述の左手が引き裂かれるシーンなんかは、告解室的なパーソナルな分離がされているはずの場所でこっちに侵入してくるような、そういう感覚を持ちました。よく考えたら告解室って絶対男が聴いてない??

 アトロクの男子校特集、もう音声が聞けなさそうなのでこちらで!

宇多丸と澤田大樹 男子校文化と日本社会への影響を語る

  偶に、こうした映画を見ると単なる言葉で片付けたくないとか、差別それだけを描いた映画じゃない!みたいなふざけたことを言う連中がいます。あんたの考えはもっともだが俺の考えは違うbyAbemaで解説してた人、ということで私はこの映画に関してはスタンスは真逆で。タイトルがMENの映画でこれだけ有害な男らしさを描いていてそれじゃねえ、なんてことはないでしょ。女性の置かれた苦悩を描いた作品を一般化して批評することは、やっと光の当たった女性の苦悩を共有する機会を取り上げていることと同義だと考えます。

 

  さて、解釈が間違っていたら怖いので最後にちろっと書きますけど、見終わった後の気持ちってエヴァの旧劇場版「Air/まごころを君に」にすごくよく似てるというか。エヴァの方の解釈が難しいのでおいそれと論じたくはないんですが、他者と自己を分離して認められるようになった故の「気持ち悪い」だとは思いますが、これアスカからしてみたらシンジくんの中の男性性の葛藤に付き合わされて世界に2人だけになった挙句首絞められる。そこに対しての気持ち悪い、でもあるから実はMENの文脈でも読めたり…しないかなぁ、なんて。取り敢えず時間があったらまごころを君にをもっかい見るかー。