抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

これを作れるアメリカの強さ「モーリタニアン 黒塗りの記録」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回は9.11の実話映画。まーたカンバーバッチです。この前ソ連にスパイで潜入していたのに、今回は米国海兵隊で、年末にはネトフリで西部劇をやって、年明けにストレンジさんとしてスパイダーマンからのストレンジ2。働きまくりですね。

The Mauritanian (originallly published as Guantánamo Diary) (English Edition)

WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

(以下ネタバレ有)

1.定番+実話

 お話としては非常に分かりやすい。9.11の首謀者のひとりとして母国モーリタニアで逮捕されたモハメドゥ。彼を拘留している状態で、起訴して死刑が厳命なカンバーバッチサイドと人権保護の観点で活動するジョディ・フォスターサイド。(ジョディ・フォスターが意外とおばあちゃん。)そして囚人の過去回想を混ぜていく感じ。死刑にするために一部の隙も許したくないカンバーバッチと、なんとか釈放させたいジョディ・フォスターが違う方向からひとつの真実に向かっていく感じ。

 結構過去回想の入れ方がなかなか鈍重というか、真実に到達した瞬間に拷問追体験ゾーンをやるために回想をぶちこんでくるので、それの準備的な感じで結構頻繁に回想が入ってるんですね。同日に見た「エターナルズ」の方が、時間をいじってやるのはうまかったな、というのが正直な感想ですが、いやまあそれはさておいて強制性交とか爆音ヘヴィメタ、ポリゴンショックというのを超えるレベルの照明点滅とかラムズフェルドが許可した特別拷問追体験は本当にしんどかった。映画の拷問シーンでも結構しんどい部類に入るのに、それが実際にあった話っていうのがね、もうね、うん。

 さて、話を戻すとこの映画、感情誘導が丁寧で丁寧で。初めてグアンタナモに行った時に看守を口だけしか映さなかったり、悪意たっぷりに。鉄条網ごしのアメリカ国旗とかね。それしといて、自白発覚(これは本当になんで先に言わなかった案件ではある)でもしや本当にモハメドゥは黒…?と思わせて、拷問シーンに見せていく感じで綺麗に誘導してると思います。また、特にそれを上手く感じるのは、市井の人々。カンバーバッチもだし、副操縦士の奥さん、ニール、裁判所前の人、弁護士アシスタント。普通の人、の感情導線がわかりやすい。即ちテロとの戦いの愚かさよ。

 

 

2.アメリカの良し悪し

 基本的には、ジョージ・W・ブッシュ元大統領とラムズフェルド国防長官の共和党政権時代、9.11以降の「テロとの戦い」における愚かさ、アメリカってそれでええのか及びそんな中でもアメリカ人にちゃんとした人がいたんだよ話だと思うんです。思うんですけど、地味にダメージが来るのがエンドクレジットのテロップ。よかったよかった、からのオバマ政権もそこから7年拘禁した、の地獄よ。(政府側の控訴とかのせいみたいだが)お母さんにも会えず。んで、779人拘束されて有罪8人、うち3人はひっくり返った。控えめに言ってクソ、最悪。

 クソなんですけど、例えばウィシュマさんの件で日本でも同じことしてる訳ですよ。今回の選挙で争点化してないのが信じられなかったレベルの入管のクソ具合は、外国籍の方の扱い、という点でこの映画と同じだし、文章開示とかで言えば、もう厚労省のデータ改ざん問題とかもうそういうの含めガンガン現在進行形ですよ。そして、黒塗りの文章出ても、強制開示の訴えで読めたり、内部のメモがちゃんと残ってたり、機密保持に関わる機関がちゃんと仕事してたり、確実に日本より一個上にいますよ、ええ確実に。そこにアメリカの矜持があったと思いますし。日本は野党に書き写してね、みたいなバカなことしてましたね。記録がしっかりあることで、初めて検証可能になる訳で、そうしないとこの映画みたいなものは日本では作られないし。あーあ厭世的になって参ったので、この辺にしておきます。