抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

禁欲的な賭け「カード・カウンター」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はポール・シュレイダー監督最新作。結構本国から待ちましたね。本当はファーストデイに行こうとしたんですが、土曜ファーストデイ、舐めてました。満席でした。結果、シネマートの上の階送りでした。下の階は最高なので見たい。上の階はアカン。

The Card Counter [Blu-ray]

WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

(以下ネタバレ有)

 

 

 オスカー・アイザック演じる男の賭けは非常に不思議だ。カードカウンティングを用いて、勝てることが分かるまで待ち、少額を賭けて少額を勝つ。彼は何度も言う。賭けで目立ちたくない。

 っていう中での話だが、ポール・シュレイダーだ。どうやってカードカウンティングを遂行してどうやって勝っていくのかなんて劇的なことは1mmも無かった。そこにあるのはオスカー・アイザックアメリカの虚無それだけだ。

 彼の行動でまず異常なのは部屋に入ったらその部屋の道具を片して、部屋中のものにシーツをかけることだ。何の儀式か最初は分からなかったが、彼が軍隊で拷問を仕込まれ、そしてその拷問周りで刑務所に入ることになったことから返り血を現場に残さない手法だと気付く。その為にシーツを持ち歩き、でかい鞄を持っている。それは自分がかつて拷問をしていた過去を決して切り離さない、罪として抱えていくことの表明でもあるし、過去から逃げられない彼そのものでもある。こういうアメリカによる拷問といえば『モーリタニアン黒塗りの記録』と言う映画で弁護士が暴いていく良い作品がありましたね。

 そんな彼が、同じく拷問で刑に服し、自殺した父を持つCのカークに出会い、彼の復讐を止めつつ、彼を社会復帰させる為に世界大会を目指す、ポーカーで目立つことを決断する。全てが万事進み、拷問の手法に近いがカークに社会復帰と母との再会を約束させたことで、彼は自分の生活に性を取り戻すこともして、ある種の赦しを感じていただろう。だが、カークはそのお金で復讐に走ってしまった。連鎖を止め、上官にも過去から逃れられないようにオスカー・アイザックは車を走らせる。大会などもうどうでもいい。精算なしに突き進むアメリカへの批判的な手法をオスカー・アイザックの演技力1発に託すとは、ポール・シュレイダー恐るべしである。と同時に、そりゃなかなか日本公開されないよな、とも納得。ギャンブル題材の割に、主人公にカークが言うセリフまんまの映画だ。なんだっけ、ずっと回っている感じでゴールが無い感じみたいなことを言ってたよね。そりゃそうだ。罪を抱えた人生にゴールは無いのがポール・シュレイダーだもの。

 だからこそ、もうちょっと音楽とカメラはそっちに合わせておとなしくしてほしかったな、と言うのが正直なところ。十分に静的な映画だったけど、もっと静かな映画でいい。そうすればするほど、会場にこだまするUSA!が虚しく聞こえてくるのだから。