抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

誇りなど馬に食わせておけ「最後の決闘裁判」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 大渋滞の10/15公開作品から、リドリー・スコット御大の最新作の感想でございます。リドリー・スコットは既に「House of Gucci」が控えてますからね。元気すぎる83歳。

The Last Duel: A True Story of Crime, Scandal, and Trial by Combat (English Edition)

WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

(以下ネタバレあり)

1.観客含めてみんなクソ

 さて、本作は現代版羅生門、なんていう風に言われております。ジャン・ド・カルージュの妻マルグリットをジャック・ル・グリが強姦した、という告発とそれに伴う決闘裁判の模様をジャン、ル・グリ、そして最終幕でマルグリットの視点で描く3幕モノです。

 この作品は非常に構成が巧みだな、と感じていて、まずは決闘の準備と名乗り、そして初戟までを見せてから3幕構成に移るんです。なので、物事の推移を見ている間もずーっと決闘の結果はどっちになるのか?が片隅に過っている。でも、それが故に画面のこっち側の観客すらも劇中に出てくる連中と同じくクソである、という事実が残される。出口を塞いだ、完全に人類を滅ぼす決意をさせるタイプの作品です。

 大体ですね、決闘するのがマット・デイモンアダム・ドライバーなんですけどね。マット・デイモンなんてのは映る時間が短ければ短いほどクソな人物を演じているし、アダム・ドライバーは邪悪じゃない役を演じたことがないです。わたし映画よく見るんで知ってるんですよ。

 ということで、都合よくインターステラーとフランシス・ハとヤング・アダルト・ニューヨークの記憶だけで映画を語ってみましたが、マット・デイモンは兎に角、アダム・ドライバーは割とマジでその印象しかないので、まあ見ている間ずっとクソだな、と思ってみてましたよね。よく考えたらブラック・クランズマンとか、デッド・ドント・ダイは別にクソな人じゃなかったはずなんですけど、なんなんでしょうね、あのにじみ出る嫌な人感。私が単純に嫌いなタイプの顔だからなんでしょうか。

 なんか映画の中身の話をすっかりしていないので、改めて振り返りますが、アダム・ドライバーの役はやっぱりクソで、強姦しておいて告解したからセーフみたいなムーブ決めてて本当にクソだな、と。あとまあ当然のようにクソだったベン・アフレック演じたピエール領主ね。女遊びするバカっぽい感じなうえにクソっていうどうしようもない感じで、マット・デイモンが多少可哀想に見えるぐらいだ(無論それは彼を第1幕で見せているから生じる主観なのだろうが)。

 ただ、あ、マット・デイモンの役だってクソだな、っていうことがどんどん分かっていくのが第3幕で、傲慢、出てくる主語は常に「私」で、独善的。普通強姦されたという告白があれば、まずは相手の身や心を案じるのが真っ当に思われるが、彼はそうではない。そりゃ、時代がっていうのは分かるけど、決してベストカップルと呼べる夫婦ではないことが分かる。決闘決闘うるさいんじゃ。

 強姦された後、という視点ではまた辛いのが2つのシーン。まずは義母。戦争中の田舎の女も犯されるごとに叫んだのか?私だって強姦されたけど、騒がなかったぞ、家名を汚して、息子を決闘による命の危機にさらしやがって、と詰められる。現代の性犯罪(というか性犯罪に限らず社会進出する際なんかもそうですが)において、サバイバーからこういう視線を向けられる、というのは非常につらいものがあります。いわゆる生存性バイアスとかもそうですよね。ああ、そういえば仲良しだったママ友的な人から、ル・グリをハンサムと言ってただろ、みたいなのもありましたね。

 んで、今度はセカンドレイプ。法廷として、あれだけの人々の前で、強姦されて夫にはない快楽を云々、5年も妊娠していないんだから云々、絶頂しないと妊娠しないんだからお前が今妊娠しているのは云々、と現在の基準で照らすとありえねぇ、でもそういうバカはまだまだ世の中に蔓延っているよね、っていうクソ状況。んで、裁判官?みたいなえらそーな席に座っているのがほぼ男。おっさんが性被害者取り囲んで快楽がどうのとか言ってんの。ふざけてるにもほどがあるわ。ほんとクソ。

 とまあ延々クソだな、と思う絵面を見せられて、いざ決闘になると国王ですら「殺せ!」みたいなエンタメ消費をしちゃっているし、ここでようやく決闘の観客にも女性が映りだすんだけど、彼女たちも別に火にくべられる可能性のある彼女の味方って感じは別にない、やっぱりエンタメ消費している。そう、さっき述べたようにスクリーンの前の我々は、下手したら最も安全圏でエンタメ消費している最も愚劣な存在だ。

 見終わった後に、感想をちらっと検索したら、「誰が嘘ついてるのか分からなかった!」みたいなのを見つけた。お前何見てた?Based on true storyではなくeventになってたし、第3幕でわざわざ「真実」のとこだけ強調されたのを見てないのか、と。いや、映画だから!ドキュメンタリーでもないから!!この作品における真実=史実とは言ってないでしょ!?勝敗じゃないだって!

 あとはあれね、ポリコレポリコレ言う人ね。誰かを踏んづけてエンタメ消費しようとしてるこの映画のクソどもを見てもそんなこと言えるんですか??誰かの人権を軽視する権利なんてねぇよ

 余談ですが、たまたま同日に見たのは「DUNE」だったのですが、その主演、ティモシー・シャラメがこの百年戦争時代の王を演じたネットフリックスオリジナル映画「キング」という作品のことを思い出しました。こちらも、現在の基準で過去をジャッジするのではなく、それを通して現代の男女関係を問いかける優れた作品であったことを記しておきます。いつだって醜い男たちは地べたで戦うのを誇りたがる。昔は酷かった、そんな時代もあったねと、笑っていられると思うなよ。