抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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こういうのが良い!静のスパイ映画「クーリエ:最高機密の運び屋」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 心の中の井之頭五郎さんが「そうだよ、こういうのがいいんだよ」なんて語ってくれた作品です。

カンバーバッチはこれからモーリタニアン、NWH、パワーオブザドッグが控えていて、年明けにはドクター・ストレンジ2ですからね。大忙し!

The Courier [Blu-ray]

WATCHA4.0点

Filmarks3.8点

(以下ネタバレ有)

1.これぞ本当のスパイ映画

 最近ね、立て続けにスパイ映画がやってるわけです。しかもみーんなイギリスで。みんなが口々に言っててやっぱり好きねえ、なんて思う007、キャラクターの見た目と違って結構シリアスなスパイアニメであるプリンセス・プリンシパル

 どれも映画館で見るに足るいい作品なんですが、ちょっと待って。それらはよーく考えると、スパイアクションであり、スパイっていうのはそもそもバレちゃいけないんですよ。ドンパチやってちゃ存在の主張ですから、ゼッタイダメ。そういう文脈のスパイ映画の方が私は好きであり、ミッション・インポッシブルにそういう文句も言った記憶があります。

 という訳で、そうした静のスパイ映画が本作であります。なんの変哲もないベネディクト・カンバーバッチ演じるグレヴィル・ウィンがキューバ危機を救った、という映画なのです。

 勿論、正確に言えば、冷戦下でソ連のオレグ・ペンコフスキーとの連絡係にMI6からスカウトされたグレヴィルがモスクワとロンドンを行き来する作品なので、グレヴィル自体がスパイなのか、と言われるとちょいと難しいラインかもしれません。一応、歴史上はスパイ扱いみたいですが、副題のように運び屋、が近い表現に感じました。

 もう何を置いても圧倒的に称えたいのが主演、ベネディクト・カンバーバッチ。最早感動的ですらある振る舞いでございました。本作の特徴として、非常にカメラが被写体に近く、顔のアップがとっても多かったことが挙げられると思います。まさか2列目で見たから気持ち大きく感じただけ、ってことは無いでしょう。そういう顔だけの演技が求められる中で喜怒哀楽をしっかり映し、バレるバレないサスペンスというスパイ映画の基本をしっかりやりつつ、ソ連の収容所内では全裸を披露。一度全裸を見せておいて、収容所での虐待を経ての裸体も見せるので、肉体改造っていうか、激やせをしてる訳です。安易に肉体を改造している役者さんを褒め称えるのは、それもそれでどうだ、っていうのは分かるんですが、それにしても説得力が違いました。しかもカンバーバッチはこれを決して肉体派ではない魔術師タイプとはいえ、マーベルのヒーロー映画の狭間で撮ってるわけでしょう。いや本当にすごいと思います。

2.『工作 黒金星と呼ばれた男』

 明確に想起した作品は韓国映画『工作 黒金星と言われた男』。韓国と北朝鮮の38度線を挟んだ工作員の友情を描いた作品でしたが、本作においても、グレヴィンとペンコフスキーは互いの国に出入りし、互いの家族にも会わせている完全な同志って感じ。

 だからこそ、グレヴィンはペンコフスキーの亡命の為に、一度終わらせたスパイとしての役割をもう一度危険を承知でモスクワに潜入していく訳ですし。綺麗に亡命して終わり、かと思いきや全部ソ連側にバレてて捕まる。それでも2人の友情と世界を救いたい気持ちがもたらしたキューバのミサイル基地の情報のおかげでキューバ危機が回避されました、ちゃんちゃん、みたいな方向に持って行くのは、友情の勝利っていう点では素晴らしかったですね。

 とはいえですね、全体を通してみると、グレウィンとペンコフスキーの微笑ましい関係の描写は亡命の為にモスクワに乗り込むまでがピークで、捕まってしまうとそこの友情の観点よりも、グレウィンと家族の関係でそれを耐え抜いた、っていう方向に話がぶれるので、若干ラストに向かって盛り下がったのは事実。っていうか、『工作』みたいに最高の終わり方をしてくれるのでは???と期待してしまって、そっからのガッカリになっちゃった感じはありますね。どちらも史実ベースなので、『工作』程度の飛躍はしてもいいんだけどなぁ。

 しかしあれですな、どのスパイ映画見ても、MI6だのCIAだのKGBだの、スパイ組織なんてロクなもんじゃないですね