抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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ダニエル・クレイグ華麗に去る「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 全世界が予告編を見倒して、もう見た気になっていた映画第1位に間違いなくなる映画、007最新作の感想でございます。同日に同じイギリスを舞台にしたスパイアニメ『プリンセス・プリンシパル』を見たので、そっちの方がスパイしてるじゃないか!なんて思ったり。

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ (SHM-CD)

WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

(以下ネタバレ有)

1.ダニエル・クレイグ、ラストダンス

 「カジノ・ロワイヤル」→「慰めの報酬」→「スカイフォール」→「スペクター」と続いてきたダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンド。20作、5人続いてきた007が、しかし21世紀に突入してどんどん馬鹿らしく、そして時代齟齬が激しくなったりしてきたところ登板した本シリーズは、カジノ・ロワイヤルで注目を引き、慰めの報酬でステップを踏んで、スカイフォールで完結した、という認識です。カジノ・ロワイヤルでは新人のスパイだったジェームズ・ボンドが一人前になるまでの物語として3部作として綺麗にまとまっている印象。そして、権利の関係でようやく出せるようになったブロフェルド率いる悪の組織(このフレーズがもうバカっぽい)スペクターがスクリーンに帰ってきた作品は、個人的には言わば記念碑的であり、究極のファンサービス、あくまで番外編ぐらいの感覚。バカバカしいのもこの辺でぐいっと増やしてきました。実際、ボンドはもうこれでリタイアした訳で。ってことで、そっからもう1本映画を作る。しかもランタイム160分と聞いて、正直そこまでテンション上がってる訳でもなかったんですよね、実際。

 前置き長いのは申し訳ないんですが、一応シリーズの一旦の区切りなので。要するに、クレイグ・ボンドに語るべきものがもう正直無いと思っていたんですよ。既に禁じ手として名高かった『女王陛下の007』と同じような恋人の死も描いたし、自身の映し鏡としてのブロフェルド、という話もやって、スカイフォールでボンドの過去にも触れてしまった。じゃあ何やんのよ、と。ある種、もう何もすることが無いんで、もう一回なんか仕込んで、それを解決して、ってやるから160分かかるのもしゃーないとは思うんですが。

 みたいなことを、始まる前に思っていて、結局その通りでしたね、っていう。事件のとっかかりとしては、前作で結ばれたはずのマドレーヌと決別するわけですが、全体にかかわる話なので、しっかりマドレーヌの過去回想をぶち込んでおく。決別するまでアバンですからね、長い。マドレーヌ側をしっかり仕込んで、一旦ボンドの方に。最後だからフェリックス・ライターも出てきてお祝いの乾杯、Qの自宅訪問もしちゃうし、もうお祭り騒ぎ。スペクター皆殺しなんて大盤振る舞いも良かったですね。

 最後はボンドにとっての初めて「死」を描くっていう超ウルトラCでおしまい。ダニエル・クレイグのボンドはこれが最後かも?みたいな憶測に完全に終止符を打つし、敬意を表した終わり方だったとは思います。ラスト・ダンスとなるミサイルの防御壁を解除に制御室へ向かう戦闘、特に階段を上りながらのところは、めっちゃ見ごたえありました。あ、勿論オープニングアクトも良かったですね。まさか予告編の殆どあっこだったとは。ベン・ウィショーのQとか、好きなキャラ多いんですが、さあ次回作は全部リキャストでやり直すのか、どうするんでしょうね。死んじゃったから世界観共有するなら過去編しか出来ないし。あー、でもカーチェイスは3回あって怠かったな。

2.これぞ007?これって007?

 007オマージュっていうんですか、これぞ!っていうシーンは非常にたくさんありました。予告編で死ぬほど見たボンドカーの銃撃なんかもそうですし、敵の本拠地に乗り込んで決戦の前に談判するお決まりの展開も。あとまあ何故か怒涛のように繰り出される『007は二度死ぬ』の如く日本描写がたっぷり。畳で土下座、枯山水庭園、そういえばサフィンは能面。サフィンの本拠地は日露の領土問題でもめてるみたいな話が出てる場所なんで、おかしくはないんですが、ちょっと違和感も。うーん、日系監督とはいえ、日本への敬意がどうとかの話あんま聞いたことないし、日本が舞台でもないし…。こういうのを文化盗用というのかも良く分からん。うん、困った。でもそれが007っぽくもある気もする。

 まずやっぱり気になるのは、構造の良く分からん感じ。CIAとMI6がごちゃごちゃする前半のキューバ、そして何より何がしたいのか良く分からないサフィン。私の理解力が低いせいだと思うんですけど、サフィンは何のためにマドレーヌと娘を連れてったのか、全然分からないし、工場の人たちは一体何をあんなに防護服を着て毒水の中でごしごししていたんでしょうか。誰か教えてくれ。っていうか、サフィンが幼少期マドレーヌを助けたのも良く分からなかった。

 あと、とっても残念だったのが新007。せっかく黒人女性という本当にぶっ壊しにきたキャラだったのに、ジェームズ・ボンドをひがんでばかりで無能、彼女の活躍シーンは殆ど無い。しまいにゃ、007の称号すら返還しちゃう。うーん、いや、分かるんだけど、この時代にそういうキャスティングしてきて、置き物扱いっていうのは、一番良くないと思うんです。だって、ダニエル・クレイグが色々言われている中で、女性をモノ扱いして、差別的であるジェームズ・ボンドという存在を続ける意味っていうのが問われている訳じゃないですか。完全に時代にそぐわないヒーローを、「儲かる」以外の理由で存続させる必要がある訳で、そこに対するカウンターとして新しい007を就任させた訳なのに、007はジェームズ・ボンド(即ち白人男性)じゃないと!の道具になっちゃった。そうするんだったら、もういらないじゃん、と思っちゃうなー。

 あとMな。お前が作った大量殺りく兵器のせいでこんなことになったのに、なんか「惜しい人を無くした」みたいな顔してるんじゃねぇぞ。ボンドはてめぇのケツ拭いたんだぞ。