抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

紛れもないケッ作「映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回はGWから公開延期したクレしん映画。でも延期した先も緊急事態宣言になってしまいました。可哀想だな、と思ったら今回は興収の調子がいいらしい。確かに劇場はほぼ満員でしたね。

 しかし、クレヨンしんちゃんで、吸ケツ鬼、解ケツ、ケツメイシと並べられたらケツ作と言わざるをえないじゃないか。

映画クレヨンしんちゃん 謎メキ! 花の天カス学園 (双葉社ジュニア文庫)

WATCHA4.0点

Filmarks4.1点

(以下ネタバレ有)

 

1.ミステリとして

 青春はミステリー!ということで、本作はクレしん初のミステリーとして銘打った作品。となれば、最近は読んでいるのが推理小説よりSFが多い、というか本を読む量が減りに減っている気がするとはいえ、ミステリを愛するものとして生きてきた私がモノ申したいのはお許しいただけるのではないでしょうか、だめですか。

 えーい、という訳でミステリとして考えますけどね、よくできている、といっていいと思います。未知の場所、天カス学園への体験入学、そこで学校紹介と新キャラを怒涛の説明をしなくてはならない(これはシリーズものでミステリをするなら常連を犯人にできないため)。それゆえ、事件発生まで40分ぐらい使っているのは、少し長いかな、とも思うんですがギャグで繋げるように努力はしていたように思えます。

 そこからの事件発生で、今回はフーダニットであることが提示され、アイテムとして「33」というダイイングメッセージも与えられる。さりげなく添えられた鉛筆、そして事件が起きると必ず鳴る壊れた時計塔の鐘。小さくもしっかり視聴者が解けるようなヒントを残してくれてはいます。33が生物部部長の「ろろ」、33代番長(稲田徹さんが怖い声を出しているので絶対いい人)、そしてゼッケンの番号に33が含まれていたちしおなど、色んな所にひっかかりを残したうえで、動機面で先生とギャルにも可能性を見せる。そこまでやっておきながら、被害者の中に犯人がいるある種の黄金パターンを仕込んでおく巧みさ、しかもそれをアクション仮面の漢字間違いというエリートポイントギャグで明かすっていうんだからお上手。まあ、陳列された時に私は気づきましたけどね!あ、じゃあ動機も変顔で走るのが恥ずかしくないようにみんなガキにしてしまえ、だと思ってたんで、ちょっと外れましたが。フーダニットとしてはしっかり本格に近いミステリをしていたと思いますが、確証となるダイイングメッセージ33が眼鏡外した時の目とか、びしょ濡れなのはトイレの水流で時計塔に送ったからとか、分かってたまるか、なところもありますが、それが許されるファンタジーさをしっかり育ててきたシリーズだから出来る、といっていいでしょうね。

 それでいて、最後はちゃんと全校集会で集まった場所で犯人はこの中にいる!をちゃんとやってくれてるし。ミステリのお約束をしっかりやりつつ、ミステリ自体は映画にすると話が進まない、という問題を事実上40分程度で終わらせる采配で見事に解決したと思います。

2.サザエさん時空で来年を描く

 この作品の感想として、当然社会格差とAIによる監視社会をクレヨンしんちゃんに持ち込んだ(というか潜在的にあったものを明確化した)点は大きく語られると思うので、まあそれはエリートポイント教育のやり方に違和感を覚えた報告程度(これは何?答えAppleはエリートかもしれないが、教育ではなくエリート層を掬い取っただけじゃんAIさんよ)で済ませておいて、あえて注目したいのは「青春」「未来」なんていう言葉。本来、クレヨンしんちゃんの世界は、成長リセット型、いわゆるサザエさん時空。彼らは何年たっても幼稚園生だし、あんなにいろんな経験を劇場版の度にしていても、それはなかったこと、として処理される。っていうかそうしないと、しんちゃんが成長しすぎてやばいことになってしまう。しかし、体験入学へ向かうバスの中で成長しなきゃ、という概念を提示し、この天カス学園にみんなで入学したい風間くんと周りの齟齬が物語を動かしていく。ここに、今まで「今日」に連続した「明日」の話はしても、それが続いた先の「来年」の話が出てくる。雑な「ずーっと」とかではなく、具体的に社会にどう幼稚園児達がこの後関係していくか、という視点が生まれている。ごめんなさい、クレしん映画を全部見ているわけではないので、これがもしかしたら既に為されていることなのかもしれませんが、私には初めてだったのですごく新鮮に感じました。