抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

北の国から「トゥルーノース」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回は東京国際映画祭にて鑑賞した作品。まずは「トゥルーノース」から。

 2つ前の席にジャーナリストの堀潤さんが来ていて、アニメでもこういう題材なら見に来る、その姿勢、流石信頼できる男カテゴリだ!と思いました(失礼)。

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WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

(以下ネタバレ有)

 1.アニメだから伝わる過酷さ

 本作は一見、ストップモーション人形劇だった「GON THE LITTLE FOX」なんかを思い出すような、結構粗目なCGアニメーション。これって作画的に大丈夫なのか?と予告編鑑賞時は思ってしまいましたが、ところがどっこい、これが大成功。

 実写でやるとどうしても韓国人俳優を起用せざるを得ない話ですが、英語でやりたいので実写は無理。割と人形チックだからこそ痛すぎない程度に見ていられる、いや、見させられるアニメーション作品になっていました。また、上映後に監督もおっしゃっていましたが、ドキュメンタリーとしてしまうことで、証言できなくなったり、家族に実害が出てしまう可能性も考慮しなくてはならない訳です。金正男が暗殺されるんだから、聖域なんてないですよね。

 全編は北朝鮮が舞台に過酷な強制労働を描いてこそいますが、使われている言語は英語です。これも見やすく、いや直視させるための手法で、英語にすることで観客のレンジを広げ、公式には北朝鮮政府が否定している強制労働の実態を出来るだけ多くの人に知ってもらいたい、そういう気持ちの表れではないでしょうか。

2.物語的な面白さまでカバー

 この作品、社会的に重要なメッセージを発し、北朝鮮における人権問題の啓発にあたる作品なのにも関わらず、序盤では政治の話はしない、なんてメッセージも出ますし、シンプルにエンタメとして面白い。そこが凄いな、と思いました。

 冒頭はTEDに出演している脱北者の話から始まります。TED、受験生の頃は見てたな…。んで、そこで家族の話をします、から始まってヨハンという少年がピョンヤンで暮らし、そこから父が消え、強制収容所に送られ、体制側への転換、母の死、友人との出会い、そして脱北を描く訳です。それぞれのパートがドラマとして成立しており、例えば父なき今、家族を守るのは自分しかいないと、密告する側に回り出世していき、労働階級から監視階級になるあたりは、パノプティコン的な面白さがありますし、脱走パートも策略を巡らせていてしっかり面白い。また、強制労働所での話なので、夜間のこっそりの外出なんかは、バレないように的なサスペンスもあります。

 まあ途中で本作の最大の仕掛け、TEDで話しているのはヨハンでは無く、友人のほうで、ヨハンの妹ミヒと脱走した、っていうのは正直勘づけるんですけど、とはいえそこへの持って行き方もスムーズだったという印象で、素直にいい話だったなと思ってしまうから不思議。こういう風にエンタメとして優れているからこそ、より多くの人に実態を知ってもらうという目的が果たされるのかな、と思います。