抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

言わないけどね、はもう終わり「劇場版 からかい上手の高木さん」感想

 どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。

 今回はブログにするつもりが事前には無かった作品。70分台のため、たいして期待もしていなかったんですけど、これが抜群に面白かったため、短いながらもひとつの記事として残すべきでは、と思って単独にしました。

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WATCHA4.5点

Filmarks4.6点

(以下ネタバレ有)

1.崩れるから美しい

 本作の白眉は、何といっても中3最後の夏休みだということ。これまで、日常ラブコメを積み重ねてきたからこその、終わりの始まりを描く中3の夏休み。一瞬を切り取るから卒業アルバム委員のバカ2人にも意味が生まれる。それは子猫の時を覚えておきたいから「ミー」と名付けようとした高木さんと同じ気持ちだ。
 意識的に描かれる海・島の外、3バカが手を振るフェリー。3期最終回でも登場したフェリーだが、今回は陸上をやるために進学、という直接的な3人の未来を奪う、でもそれは未来そのものでもある、という形で登場する。箱庭的な装置である学校からの卒業と、小豆島からの脱出が重ねられる。西片の家に飾ってある「現状維持」が虚しく響く。
 そんな2人は、グリコの対決でチョキを出して負けたらキス、って条件での恋愛頭脳戦を序盤にするが、高木さんはチョキを出して勝っている。既に高木さんは攻めているんだ。現状維持男、西片にかかっている中で、擬似夫婦・疑似家族となる子猫との触れ合いと喪失を通して、失わない未来を選択させる。お前ら早く付き合えよ、というか付き合ってないのかよ?状態の終わりであり、そして恋の始まりの終わりだ。卒業を、描くと終わりの終わりと始まりの始まりになってしまう。だが、日常作品の強みは終わらないこと。それが僅かに崩れる予見が最もエンタメなのだ。『映画 けいおん!』が一番近いだろうか。

 私個人の話をすれば、中高一貫校出身で、中3の夏にこんな選択性は全くなかった。そこにいる中学3年生のクラスメイトの面々は当たり前のように全員が同じ高校に進学する。6月に大会に敗れて部活を引退していた私は、本当に一番の夏を謳歌していた…かどうかはイマイチ覚えていないが、いずれにしても私には無かった夏だ。

 それなのに、3バカの別れの気配に思わず涙し、西片の告白に少しキュンとしてしまった自分に驚きを隠せないのだ。

 アニメーションとしてもちゃんと劇場クオリティなのは、西片が泣くところでいきなりしっかり確認できるし、子猫撫でるところとかも良かったと思う。表情がちゃんと演技する作品なんだよねー。それでいて、音と背景が高レベルなので映画になってる。