抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

2022年2月に見た過去作の記録

王国(あるいはその家について)

WATCHA4.5点

Filmarks4.3点

 反復されるセリフ。150分続いた繰り返される幾許かの場面。それは冒頭で見せられた、取り調べ室で供述調書にサインした殺人容疑の原因を探るミステリとして機能しているかのように思えるが、本質はそこではない。そのシーンはあくまで作品の一部であり、この映画を通して見せられるのは延々と続くその作品の台本読みであり、リハーサルだ。声色、読み方、身振り手振り、間。様々なものが変化すると、何か意味まで変わり、同じ人物がそれを繰り返す様はまるでマルチバース

 然るに、これは我々の脳内で普段無意識下で行われる会話シミュレーションであり、世界というものを人間がどう認識しているのか、ということを壮大に実写化したものなのだ。インサイド・ヘッドの実写化と言っても大きく言えば間違いないかもしれない。

 まず言葉があり、次に文法があり、そして会話になる。伊藤計劃信者にとって、言葉とは世界だ。そしてそれをここまで体現した作品は初めて見た。

セーラー服と機関銃 卒業

セーラー服と機関銃-卒業-

WATCHA2.5点

Filmarks2.6点

 申し訳ないが大変厳しい。

 一度解散したメダカ組と星泉に忍び寄る悪は入り口こそ面白いが、流石に納得できないレベルで悪事が進行し、割と解決がダイレクトアタックで内内のものなので、いや表に出ている部分としてどう解決したのか、これほど問題を大きくしたなら語るべきでは?と思ってしまう。

 では、そうしたヤクザ映画的な方向を無視した、1作目同様のアイドル映画としてどうかと言えば、これが辛い。アイドルが組長というギャップは声の高低に伴うギャップで表現されるもの、あるいはアイドルにバイオレンス(銃火器の発射という極限)で発揮されるものと理解している。本作の橋本環奈は、声がシンプルに低めなのにドスを効かせることは出来ず、叫ぼうとすると掠れ、組長の風格は感じない。結局命の奪い合いになっても、掠れ声を出してるだけなら、命が軽くなるだけだ。

 取り敢えず目の前の問題を片付ける為に殺すのは良くない脚本ではなかろうか

COCOLORS

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WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

 神風動画の中編。

 灰に塗れた世界で、人類は地下に潜った。外すことのないマスクと共に。

 表情が見えないのに、これだけの演技を見せる高田憂希、ちょこちょこいい役を引いてる割にどうも売れきってない感じで残念。もっと引くて数多でいい。

 まだ見ぬ空の色を探すアキとフユは地上を目指すわけだが、その姿は天国を目指すようにも思えるし、現在では未だ見ぬマスクを取れる日常を目指す話にも思えてくる。

 心の色、でコカロスなのか、二つの色でCOCOLORSなのか。

めし

めし<東宝DVD名作セレクション>

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

 この白黒の時代に、こんな倦怠夫婦映画が作られていたは知らなんだ。仕事仕事の夫に匂わされる肉体関係、家庭というものに縛られる前半と、大阪から東京に飛び出して、役割からの解放がちらつく後半。もちろん、これはかつての日本の話であるので、現代のように急進的に訴えてくるものではない。

 たまが、形的にはまく収まったように見せて、まさしくゴーン・ガール的な作品ではなかろうか

空白

空白

WATCHA2.5点

Filmarks2.4点

 はっきり嫌いです。2点あります。

 まずシンプルに作劇に乗れない。メディアとかの悪さの描き方が極めて陳腐、もうそういうのは飽きた。あと、今までの吉田恵輔映画は、人物の裏側の顔、みたいなツイストが多かった中でマイナスからのプラスにしたことで、いやもうそれは乗れないじゃんっていう。元ヤクザが更生しました、ほら凄いでしょ、に対する、いや何にも迷惑かけずに生きてきた人の方が偉いわっていう目線。

 個人的にキツかったのがもう1点の方で、古田新太は素晴らしい演技だが、素晴らしすぎてこのキャラを救う必要を微塵も感じなかった。寺島しのぶのキャラと同じで、自己実現を他者の犠牲の下に成し遂げようっていうのがクソだな、と思う中で、勝手に自己決定できる世界だと思って振る舞って、色んなところをめちゃくちゃにした挙句、自分だけ賢者モードになって整理して、はい、おしまいは順序がおかしい。ふざけんなよ、とすら思う。はっきりこういう旧来型のクソ父親に報いとか、そういうのはいらないとさえ思ってしまった。誰にでも優しくできる世界だといいけど、彼に優しくするのは私の担当じゃなさそうだ。

心が叫びたがってるんだ。

心が叫びたがってるんだ。

WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

 超平和バスターズ第2弾の実写化。

 アニメじゃないと結構きつい設定なんだけど、それを完璧に実写化してる芳根京子が凄い。素晴らしい。

 アニメの方から卵の要素を結構削った印象だけど、成瀬家の厳しい感じとか、あっこでいなくなる順の酷さーとかそういうところはそんなに変わらず、最後のミュージカルがなんかすごい場所に変わってた。

 あとは、内山昂輝の説得力を再現するにはジャニーズ連れてくるしかないんだろうし、中島健人は良くやってたけど、その為に彼の見せ場が増えすぎてるかも。

 エンドロールで森七菜とか森田想とか萩原みのりの名前があって気づいてなかった私って!となりましたとさ

ソン・ランの響き

ソン・ランの響き(字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

 ベトナムの古典芸能役者と借金の取り立て屋。与える男と奪う男。2人が最悪の出会いをするも、一夜を共に過ごしただけで特別なきっかけになる。

 変われるかもしれない。でも、繰り返される古典芸能の演劇でも扱われる。自分の選択や信じたことの過去は襲ってくることを。ベトナムの空気感を出しながら、民族楽器の奏でる音楽が明るさを担保してくれる作品でした

ビハインド・ザ・カーブー地球平面説ー

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

 地球は丸くない。そう信じている人がこの世界にいる。

 いわゆる「教育」を受けていると、これまでの第三者の検証に耐えてきた科学的知見の蓄積を常識や歴史と呼ぶ訳だが、そこに対して疑問を持ち、そうして先鋭化していった集団を描いたドキュメンタリーといえるだろう。地球は丸くないことが証明されていない、という論理は無敵。だが、彼らのことを笑ったり、責めたり、そういった趣旨じゃない。そも、本編で言及されるように批判的視座を持っている人たちではあるのだ。

 陰謀論めいたものを信じるにつれ、社会から隔絶されたり、権力化されていく過程で自分たち自体が陰謀論のターゲットになったり、描かれる集団模様は、(アメリカに限らず)コロナ禍において、あるいはトランプ政権下で可視化された一定の集団を思い起こす。そういえば、地球平面論者の年齢や人種構成が…

 そういった人たちとどう対話し、どう社会で包摂していくのか。

魂のゆくえ

魂のゆくえ (字幕版)

WATCHA4.5点

Filmarks4.6点

 タクシードライバーの脚本家、ポール・シュレイダー。ってことで、その色が凄く濃い。

 神父である主人公が信じる世界が、環境破壊の進む世界で子どもを持つことは罪ではないか、という問いかけから崩れていく。教義としての正解と人間としての、実感としての正解がうまく折り合えない時、人は頼るものが無くなっていくぞ、っていうのがスタンダードサイズ、フィックス多めのカメラで淡々と語られる。

 主人公の腫瘍は悪性か良性か検査しないと分からない。彼の抱えた病もまた、希望なのか絶望なのかは観客の判断に委ねられただろう。

ゴールデン・リバー

ゴールデン・リバー(字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

 パリ13区を控えるジャック・オーディアールの予習。

 西部開拓の時代の殺し屋兄弟とその手下、追われる科学者。途中に立ち寄る街でしか女性が出てこないレベルのちゃんとした西部劇。

 ほんと大酒飲みの粗暴な男は嫌だね、で済ませる話ではあるのだが、似たような欲に塗れた男たちが酷い目にあっていくトリプル・フロンティアの方が面白かったかな

ある少年の告白

ある少年の告白 (字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

 同性愛を矯正する、という施設に入れられた青年。まずはシンプルにその施設における救済、という思想にえげつない嫌さを思うのだが、キリスト教的な思想の中ではそれも正当化されるのか、という辛さ。

 最終的には、自分の思想や信条、職業と儘ならぬものを持っている我が子と相対する父及び母っていう話に思えて、そういう意味での決着はして良かった。

 アメフトをやめたらアメフト選手じゃなくなる。だからお前ら、同性愛もやめられる、みたいな意味不明な論法もあんな洗脳プロセス踏まれたらやられちゃうよ…

ゆれる

ゆれる

WATCHA4.0点

Filmarks3.8点

 兄弟は1番近く育ってきた他人だ。

 橋の上から落ちた女。そばにいた兄。兄がどういう気持ちで、どういう行動をしたのか。裁判を通して検察が、弁護士が、裁判官が、みんながそれを考えるけど、その真実を考える作品ではないだろう。

 兄弟の人間関係の天秤が彼方此方にゆれる中で、名状し難い感情の揺れ動きを楽しむ作品だ。

浮雲

浮雲

WATCHA4.0点

Filmarks3.8点

 かくも男女関係における腐れ縁というのは。

 大戦の最中、仏印で結ばれた2人が戦後に惚れ直しては、別れ、それでもやはり…となってしまう。この男のどこが良いんだ、と思ってしまうような男なのに、それでも彼女はふとしたタイミングで彼の下へ向かってしまう。

女が階段を上る時

女が階段を上る時

WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

 車で帰るのが1流。終電で帰るのは2流で男としけこむのが最低。

 銀座のバーで働く1人の女性が、どう生きるのか、どう生きることを選択していくのか。いわゆるバーのママとしての人生と人間としての人生、大事にするものが変わってくる。たった一度転んだだけで失望され、彼女はまた階段を上るのだ

乱れる

乱れる

WATCHA4.5点

Filmarks4.5点

 高峰秀子×成瀬巳喜男をこの数日続けて見てたけど、これが別格というか、素晴らしい。

 相変わらず女性主人公ではあるが、旦那を亡くした後の家制度っていうものへの視線、資本主義の進行が主人公たちの家業に迫り、それが彼女の生き方とクロスオーバーしていく校正は本当に素晴らしい。加山雄三のこの雰囲気だから許される振る舞いも良き。

 最後に起きた出来事に対する高峰秀子の表情が本当に完璧。