抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

移民だってアメリカンドリーム「ミナリ」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回はアカデミー賞ノミネートの話。プランB×A24ですからね、いいに決まってます。

 TOHOシネマズでの試写会で鑑賞させていただきましたが、まさか試写会にTCXを使ってくれるとは。エヴァで使ってあげればいいのに。

Minari (Original Motion Picture Soundtrack)

WATCHA3.5点

Filmarks3.3点

(以下ネタバレ有)

1.前半はフロンティア映画

 本作はアーカンソーに移住してきた4人家族の苦悩もの。父ジェイコブ、母モニカ、娘アン、息子デヴィッド。

 まず描かれるのは引っ越してくるところから。後々分かりますが、時代はレーガン政権、子ども2人はアメリカに移住してから生まれた模様。そんな中、引っ越してきたのはトレーラーハウス。家に入るのにも最初は高さがあって大変。この高さが、これからやってくる障壁の高さを感じさせますし、すぐにやってきた雷雨が先行きの辛さを思わせます。

 さあ、開拓。ジェイコブは、水がわかるとか言い出すやつに金は払わない!韓国人は知恵を使うんだ!と自力で地下水を掘る豪腕。うん、凄い。母がヒヨコを数え、父は農園を開拓するが、ここで注目したいのは彼らの言語。ゴールデングローブ賞では、映画で交わされる会話が韓国語が多いということで、外国語映画部門にノミネートされてしまった訳ですが、確かに韓国語は多い。夫婦間、そして親から子への会話は韓国語。しかし、子ども同士は英語で話すし、喧嘩を止めるときにもハングルじゃなくて英語を書いた紙飛行機。

 移住第一世代である親世代は、韓国で生まれ育ち、「韓国人として」みたいなフレーズも使うし、玄関では靴を脱げさせる。移住2世である子どもたちは既にネイティブスピーカー。教会に初めて行った際も、現地アーカンソーの子どもたちと普通に交流できている。なんだったら、向こうの子どもたちも一発かましてくるやつこそいたものの、アンやデヴィドの外見が理由で邪険にする、みたいなことがないんですよね。

2.後半は侵略映画?

 映画が一変するのはモニカの母が来てから。

 移民ですらない韓国人の彼女による傍若無人なブロークンディンドンやら一口ちょうだいなんかのコメディになりつつ、韓国文化が家庭内にどんどんどん増えていく。

 それはどこか侵略映画のように見えた。韓国人移民によるアメリカへの侵略のような。象徴的なのが、タイトルにもなっている「ミナリ」だ。ミナリは韓国語でセリのことだそうで、このばあちゃんは近くの川のほとりに勝手に植えてしまう。韓国では貧しい人も金持ちもこれを食うんだと言い、どんなところでも育つ草なのだと説明している。うん、これって超強力な外来種を、生態系が多様そうな水辺にぶちこむトンデモナイ行為ではないでしょうか…?韓国から来た祖母がアメリカナイズされはじめた家庭を侵食するようにアメリカに韓国系移民が増えている、的な?

 ただですね、そんなものは余計な考えでございます。その祖母との関係がなんだかよくわからんうちに良い方に向かい、ああこの子どもデヴィッドは監督自身なのかな、と言う感じに。すっごいフツーに私小説でした、はい。まあ監督がアジア系のリー・アイザック・チョンだし、エグゼクティブ・プロデューサーに主演のスティーブン・ユァンも入っているので侵略されている!みたいな方向は矢印の向きが違いますね。これをすっごい保守派の人が撮ってるなら可能性はありますが。

 最後はばあちゃんが折角販路を開いたのに倉庫を燃やしておじゃん、(元気な時はプロレスとかテレビばっか見てたのに、なんで脳卒中で倒れてから火を扱うのか)でも水道代も払えないので、映画の初めで水脈を見つけられると豪語していた人を雇って、農場を一からやり直す、という終わり方でございました。ふつーに後から考えるとめっちゃいい映画なんですけど、この侵略SFか?みたいなことを考えながら見ちゃったせいで点数低めです。もっかい見に行くタイプの映画でもないのがなー