抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

育ってきた環境が違うから「あのこは貴族」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 あまりにも評判がいいので見に行きました。そりゃこれだけ話題になるのもわかる、という素晴らしい作品でしたね。映画を見た後は、北海道から来ていた蓮城さんを迎える会に参加して、ああいい日だったな、などと思ったり。

f:id:tea_rwB:20210323021627j:image

WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

 

1.キャスティングで既に勝っている

 もうね、メンバーが最高なんですよね。高階層の方の主人公華子を演じるのが門脇麦で、上京組の主人公美紀を担うのが水原希子。おっと、逆では?という印象を持たせうるキャスティングなんですけど、映画を見たらそうかこれが正解だったのかと膝を打つから素晴らしい。2人が初めて対面する第3章の邂逅では、2人の受け答えや肩の動き方なんかが見事に対照的で、明らかに違う世界で生きているんだぞ、というのがまるわかり。そう思ってみていると不思議なもので、セレブ的なイメージ(人はそれを偏見と呼ぶのかもしれない)の水原希子の目が、都会で這い上がることを目指した芯の強さに感じてくる。

 門脇麦周りで言えば、序盤のやたら男と会うシークエンスで完璧に説得される。お見合いで会う医師はお茶をひきずった音一発で、あ、違うってわかるし、ネイリストの紹介であったやつは完全に美紀側の関西人。これは美紀が慶應の内部進学組としたお茶会でも明らかですけど、食事シーンでの差異の見せ方が本当にうまい。そのうちどんどん食事シーンがなくなっていき、ビシッと一緒に食事するのが美紀の家のベランダ。後述する乗り物描写と合わせて本当によくできていたと思います。

 そしてまあわきを固める皆さんがまた完璧。出たら名作確定しているレベルになりつつある石橋静河が華子の友人として登場し、彼女は公園で喋っている時に直ぐに階段を降りれる(違う階層と会話できる)人物として描かれるし、美紀のかつての同級生で出てくる山下リオが5億点でした。はい、5億点です。私は彼女が「TOKYO GASの安全TODAY♪」と歌っている時から知ってますからね、そりゃもう出てくるだけで1億点です。

 さあそんで最強は華子の夫になる高良健吾。まあやってくれましたね。みんなが好青年俳優として思い描く方ですが、私は『きみはいい子』の時の教師をクソだと思っているので、自分がやっていることが地獄なのに気付いていない正義の人=うさんくさい野郎、として高良さんを認識してしまう癖がありまして。『横道世之介』のほうがレアな印象なんよ。という人間からすると、本作の隠れて女遊びしているし、華子と違って自覚的に階層や環境を分かった上で外しているタイプの人間なので、彼は彼なりに可哀想ではあるものの、まさに!という役をやってくれた印象です。ま、彼は九州の人間なのですが。

2.東京(というコミュニティ)の断絶

 さて、中身の話になっていくと、どうしても言及したくなるのは東京という街が第3の主人公とすら言える気がすること。一見すると東京って嫌ね、みたいな話になっちゃいそうなんですが、美紀も言ってるように、実は東京に限った話じゃないんですよね。田舎は田舎で、結局頑張らないと親に似る(というより親あるいは環境にコントロールされる)という地獄の話な訳ですね。んで、それを象徴的に話すのに東京という街が向いていた、という印象。ある種の集団は、その集団に外部参入してくる連中を搾取しての維持しかできない、という断絶。ああいやだ。

やっぱり一番印象的なのは乗り物描写ですよ。高階層の華子は基本的にタクシー移動。これって東京で暮らして入れば分かるんですけど、東京、特に描かれているような23区を移動するなら、バス・鉄道でほとんど用は足りるんですよ。それなのにドアtoドアの舘ひろし式移動をしている華子は自分の足では歩けない。ただ、これは第2章で富山の地元が描かれる美紀の方も同じで、駅の迎えは弟の車だし、同窓会に顔出してもお父さんは帰りも車にしろ、と言ってくる。高度に発達した都会は田舎なのだ(?)。そんな美紀は自転車移動が多く、ハンドルも自分でしっかり握っているし、歩いている。だから、華子がタクシーから降りて自転車で走っていた美紀を呼び止めるシーンは感動的であり、そのあと石橋静河のマネージャーとして車を運転している姿は、自分で自分の行き先を決めている!!と本当に嬉しくなるのです。

 少し自分語りをするとですね、私ってこの作品から絶妙に浮遊している存在なんですよね。明らかに描写としては里芋を煮ている第2章のほうが落ち着いたんですけど、でも自分自体は生まれこそ福岡だと自負しているけども、既に東京歴の方が圧倒的。中高一貫校私立出身なので、内部・外部みたいなネタは完全にあるあるでしたし(内部側としてね)。この映画の中で自分はどこに存在すればいいのだろう、と思いつつも、23区の話だからいねぇか、としょげてみたり。とりあえず、奇跡的に話の合う同じような環境で育った先輩との縁だけは死守しようと強く思いました。