抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

いっぱいのワンダーとたくさんのわかんねぇを持って帰る「超擬態人間」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回はミニシアターエイドでのリターンとして貰った未来チケットを使って鑑賞してまいりました、「超擬態人間」の感想。ゲスト出演させていただいたおれならに更なるスーパースペシャルゲストとしていらっしゃった藤井秀剛監督の作品になります。ああやって棒立ちとはいえ、監督と同じ空間を共有したのですから、鑑賞はもはや義務。スラッシャーの文脈がよく分からんとか言ってる場合じゃないですよ。ただまあ、ホラー映画をほとんど見ていないし、スラッシャームービーの楽しみ方もまだ良く分かっていない人間の感想だということをご容赦頂ければ幸いです。

 なお、その時の模様はおれならメンバーであるしーまんさんのYoutubeゆるキネチャンネルに上がっていますので是非。左端で紹介もなくホークスのユニホームで右往左往している私が見れる特典付きです。

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WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

(以下ネタバレ有)

 1.いっぱいのワンダー

 本作は児童虐待をテーマにしたスラッシャームービー。もう正直言って、凡人の私には何をどうすればそこが結びつくんや!?という発想ですが、見てみればなるほど確かに。

 まずは単純なところで、スラッシャームービーとして楽しかったところを挙げていきます。当然、スラッシャーとなると、割と単純化されたキャラが消費されるように殺されていく、それ自体がエンタメであり、ある種殺し方大喜利みたいなところがあると思います。

 そういった点では、本作は殺し方大喜利はいろいろやっている。スタンダードに金属バットで殴るだの、突き飛ばして後頭部を打ってしまう、という児童虐待のところから始まり、なまはげの持つ武器で首スパーンやら、殺しはしてないですけど悪魔のいけにえ(オマージュがあると聞いて予習して良かった!)みたいに吊るしたり、オチのほうでは生きたまま解剖したり。一番好きだったのは底なし沼にハマって、助かろうとしてつかんだ縄がはらわただったやつ。こっちは見ていないのでわからないのですが、あれが死霊のはらわたオマージュのところなんですかね。あんだけパンチ強いのは凄い。

 っていうかですよ、今まで殺し方についてワンダーだ、どうだとか言ってましたけど、スラッシャーにおいて一番大事な殺人鬼のビジュアル、これがまた素晴らしいじゃないですか。なまはげですよ、なまはげ。悪い子はいねぇが、というように殺して回るなまはげ。しかも秋田の防寒仕様なまはげじゃなくて上裸だし。こいつが鬱蒼とした森の中で追いかけてくるってだけでホラーとしては満点なんじゃないですかね。

 それと個人的にやっぱり好きなのは、クローン人間がいっぱいいるところ。ブレードランナーレプリカントが生まれてくる時みたいな感じで袋に入ってるのが全部出てきてぐあーってなるのもいい地獄絵図感。あれ、こっちもインパクトあるし、こっちが死霊のはらわたなのかも?

2.たくさんのわかんねぇ

 いやね、この映画わかんねぇだらけですよ。唐突に森の中に置かれたベッドで目覚める主人公の時点で正直意味わかんないし、森の中に結婚式場があるだのいって突っ込んでくる皆様方もよく考えたらおかしいし。てっきり車のメンバーが殺されていく話なのかな?と思いきや、結構序盤はそっちの話が進まないのでびっくりしつつ、これは夢を見ているパターンなのか、時制がズレているパターンなのかを考えながら見ることになります。でもこれって主人公と観客が同じ状況というか、彼の分かんねえの追体験でもあるわけですよね。

 んで、森の中の一軒家に入ってからがまあ本番。この時点でなまはげが1匹(数え方の単位が分からねぇ)捕獲されている中で、じゃあ誰が襲っているんだ?なまはげは何人もいる?それとも示唆され、途中からは明言されるクローン的な何か?みたいな感じでもう頭の中ぐるんぐるん。っていうか、この時点での主人公の正体も正直信用ならない感じですからね(そして多分この信用ならなさは当たっていたハズ。)そこでの前述の通り生きたままフックにかけられたと思ったら、強制性交装置というこれまたビックリの機械が出てくるし、かと思いきやなまはげは誰だ!からの舌べろーんだったり、っていうか父子だと思ったらオカン?ってことは母子だったん!?みたいな色んな策謀が巡らされていて、これはこれはもう大変。んで、全体を覆う福島原発による立ち入り禁止区域での政府の実験みたいな国家的陰謀に全体が閉じるので、もうなにそれ、ですよね。個人的には、全体的な流れとかは理解できたんですけど、ガイドの女性の目的がイマイチぴんとこなくて。ここはHPの解説を読んで理解あーんど納得しました。そういえば代理出産がどうとかあったわ。

3.内面化と連鎖

 さて、本来のテーマである児童虐待

 本作では主人公の風摩が父親から虐待を受けていて、そして息子の蓮にも虐待をしてしまっていた、という虐待の連鎖が取り上げられている訳ですね。虐待を受けた子どもが成長して家庭を持った際に、自身も虐待を行ってしまう、というのは悲しいかな、これはよくあることと言っていいと思います。私自身、どっかで見た「頑張らないと親に似る」という言葉に強く思い当たる節と諦めを持って生きていますし、それは虐待している親を自分に内面化してしまう、ということと同時に、虐待されている自分の正当化(ある種の防衛機制)みたいなものだと思うんです。虐待されていても自分は心配されて、想ってもらっているが故の暴力なので愛されているし、自分も子どもを愛しているから虐待してしまう。そうやって連鎖は続いていくんだと思います。

 そう考えると、本作で人間の脳の使われていない70%にあるとされた擬態の遺伝子に覚醒している蓮の擬態は内面化と言い換えても問題ないのではないでしょうか。スラッシャーを内面化してしまったので、それを彼自身も繰り返してしまったというか。クローンっていうのはある意味で真っ白な存在な訳で、色んなものを吸収して内面化しやすいと思うんですよね、うん。なんかこうもっとうまく言える気がするんですが、この辺にしておきます。

 なんだろう、結構TRICKの笑いが無いような状況で、SPECの天のニノマエ的な感じのクローン感といい、どこか堤幸彦っぽさも感じていました。願わくば、もう少しセリフが聞き取りやすいと有難かったですかね…。